犬アトピー性皮膚炎に対するプラセボ対照盲検無作為化臨床試験においてビタミンDは生体内効果を示す

■犬アトピー性皮膚炎に対するプラセボ対照盲検無作為化臨床試験においてビタミンDは生体内効果を示す
Vitamin D shows in vivo efficacy in a placebo-controlled, double-blinded, randomised clinical trial on canine atopic dermatitis.
Language: English
Vet Rec. April 2018;182(14):406.
Christoph J Klinger , Stefan Hobi , Cornelia Johansen , Hans-Joachim Koch , Karin Weber , Ralf S Mueller

犬のアトピー性皮膚炎(AD)は、小動物診療でよく見られる皮膚疾患である。環境および食物アレルゲンに対し過敏性を発生する遺伝的素因と、暴露時の典型的な臨床症状が基本の炎症性疾患である。時に治療は難しく、副作用に関係する可能性がある。ヒトのADに対する治療としてコレカルシフェロールを評価する過去の研究は有望な結果を示している。

そのヒトに良く似た良い動物モデルの1つとなる犬のADで、コレカルシフェロールが犬にも有効な臨床効果が見られるかもしれないと仮説を立てた。

この無作為化プラセボ対照盲検8週交差試験において、23頭の飼育犬に全身性コレカルシフェロール(n=16)、ビタミンDレセプター類似体(n=8)、プラセボ(n=13)のいずれかを投与した。研究中に定期的にイオン化カルシウム測定のため採血し、犬アトピー性皮膚炎の範囲と重症度指数および掻痒スコア、ビタミンD代謝物の血液濃度、皮膚pHと経上皮水分喪失の測定値を前後で判定した。

プラセボに対し、コレカルシフェロール群において掻痒と病変スコアは有意に低下した。水分喪失と皮膚pHに違いは見られなかった。血清25-ヒドロキシコレカルシフェロールの増加は、掻痒減少と強い関連を示した。

全身性コレカルシフェロールは犬ADの見込みのある治療かもしれない。(Sato訳)

■盲検無作為化臨床試験によるアトピー性皮膚炎の飼育犬におけるロキベトマブとシクロスポリンの効果と安全性の比較評価
A blinded, randomized clinical trial evaluating the efficacy and safety of lokivetmab compared to ciclosporin in client-owned dogs with atopic dermatitis.
Language: English
Vet Dermatol. December 2017;28(6):593-e145.
Hilde Moyaert , Leen Van Brussel , Stasia Borowski , Monica Escalada , Sean P Mahabir , Rodney R Walters , Michael R Stegemann

背景:ロキベトマブは犬のアトピー性皮膚炎(AD)の臨床症状を治療する注射用抗犬IL-31モノクローナル抗体である。

仮説/目的:ロキベトマブの効果と安全性の特徴を述べることと、臨床現場でシクロスポリンに対するその非劣等性を証明すること

動物:ベルギー、オランダ、フランス、ドイツの40の病院から登録した慢性ADの犬(n=274)。

方法:動物を無作為(1:1)に3か月間のシクロスポリン経口投与(5mg/kg/1日1回)、と月1回ロキベトマブの注射(1-3.3mg/kg)に振り分けた。比較フェーズの完遂に成功した81頭は、引き続き追加の6か月間、ロキベトマブを投与する継続フェーズに移行した。オーナーは痒みをビジュアルアナログスケールで評価し、皮膚病変はCADESI-03で獣医師の研究者により評価した。

結果:28日目において、ロキベトマブは痒みの減少に対しシクロスポリンに劣っていることはなかった(51.90% vs 43.72%)。28日目のCADESI-03比率減少で、シクロスポリン(56.86%)に対しロキベトマブ(54.17%)の非劣等性は達成されなかった。群間で平均CADESI-03スコアの有意差は、どのタイムポイントでも見られなかった。痒みと病変に対する持続効果は、研究終了時に痒みに対し’正常’と評価された犬の76.3%(n=45)が継続フェーズで証明された。ロキベトマブに関する異常な健康事象は最初の3か月フェーズ(142頭)あるいは、その後6か月フェーズ(81頭)の間で観察されなかった。

結論と臨床意義:最低1か月に1回のロキベトマブ1mg/kgの投与は、良好な安全性で、痒みおよび皮膚病変の減少に対する持続効果を素早く発現させた(1日以内)。(Sato訳)

■シクロスポリンと猫:総説
Ciclosporin and the Cat
Current understanding and review of clinical use
Journal of Feline Medicine and Surgery (2018) 20, 244?255

実用的関連性:シクロスポリンは全身性免疫抑制薬でヒトおよび動物の免疫疾患の治療に使われている。米国とヨーロッパでは2011年に猫への使用が登録され慢性アレルギー疾患に対して7mg/kgPOが推奨されている。

聴衆:この総説はシクロスポリンの適応の幅広い可能性と安全性を述べるため猫の治療を行う獣医師にとって興味深いであろう。現在猫の慢性アレルギー性皮膚疾患のみに許可されていますが少数ではあるが皮膚疾患以外への使用も報告されている。

エビデンスベース:本稿はシクロスポリンのメカニズム、薬物動態、相互作用、有害事象、臨床応用について、猫におけるライセンス上の適応、効能外使用について述べる。シクロスポリンの文献を要約し特に猫で行われたものを重点に提供する。認可された慢性アレルギ皮膚炎については無作為プラセボープレドニゾロン対照試験(EBM grade I)と前向き後ろ向きオープントライアルを含む。(Dr.Maru訳)

■犬の加水分解フードにおけるIgE反応性蛋白の検出
Detection of IgE-reactive proteins in hydrolysed dog foods.
Language: English
Vet Dermatol. December 2017;28(6):589-e143.
Olivier Roitel , Lionel Bonnard , Alexandre Stella , Odile Schiltz , Delphine Maurice , Gael Douchin , Sandrine Jacquenet , Claude Favrot , Bernard E Bihain , Nicolas Couturier

背景:犬において市販の加水分解食は、フードアレルギーの診断に使用される。切断した親たんぱく質は小さいので、アレルゲン特異免疫グロブリンE(immunoglobin E:IgE)に反応することによるアレルギー反応を誘発しないと思われている。

目的:たんぱく質に対し、3つの市販の加水分解した犬の食餌を評価する

動物:フードアレルギーが疑われる犬の血清

方法:各加水分解食の2回分を電気泳動で検査し、Coomassie blue、硝酸銀染色およびIgEイムノブロットで可視化した。

結果:2-5タンパク、範囲21-67kDaが評価した全ての3つの食餌から検出された。それらのタンパクを標的にした循環IgE抗体が、犬の血清のイムノブロットにより検出された。6つの異なる炭水化物タンパクが質量分析で確認された;トウモロコシ/ポテトグラニュール結合スターチ合成酵素-1、大豆グリシニン、大豆β-コングリシニンα鎖、ポテトアスパラギン酸プロテアーゼ阻害物質、ライスグルテリンタイプB1と大豆スクロース結合蛋白。それら蛋白のうち4つはヒトのアレルゲンとして述べられている。

結論:いくつかの市販の加水分解食は炭水化物タンパクを含む。それらのタンパクを標的とする循環IgE抗体を持つ犬もいる。それら所見の臨床的意義は不明である。(Sato訳)

■PCRによる市販の除去食の申告されていない動物種のDNAの検出
Detection of DNA from undeclared animal species in commercial elimination diets for dogs using PCR.
Language: English
Vet Dermatol. August 2017;28(4):373-e86.
Christa Horvath-Ungerboeck , Karoline Widmann , Stefanie Handl

背景:除去食は食物有害反応(adverse food reactions:AFR)の診断でゴールドスタンダードである。多くの市販されている食餌が利用可能で、除去食として適している加水分解タンパクや新しい材料が含まれている。コンタミネーションは市販の除去食試験の失敗の1つの原因である。

仮説/目的:犬の除去食に対し適しているとラベルされている市販食で、ラベルに申告されている以外の動物起源のDNAを調べた

方法:12種の市販のドライおよび缶詰のドックフード製品に対し、PCR検査を用い動物起源(チキン、七面鳥、牛、ヒツジ、豚)のDNAを調査した。

結果:10種の処方不要の食餌のうち9種において、ラベルに申告されていない1つ以上の動物種のDNAを確認した。最も多く検出されたDNAは牛(n=8)と豚(n=6)だった。2つの加水分解食のみ申告された動物源のDNAを含んでいた。

結論と臨床意義:処方不要の“単一タンパク食”、あるいは缶詰の肉製品は、コンタミネーションが除去食失敗の原因になるかもしれないので、AFRの犬の診断に推奨できない。(Sato訳)

■オクラシチニブで治療したアレルギー性皮膚炎の犬の尿路感染と潜在的細菌尿の発生頻度
The frequency of urinary tract infection and subclinical bacteriuria in dogs with allergic dermatitis treated with oclacitinib: a prospective study.
Language: English
Vet Dermatol. October 2017;28(5):485-e113.
Andrew C Simpson , Jennifer R Schissler , Rod A. W. Rosychuk , A Russell Moore

背景:犬のアレルギー性掻痒およびアトピー性皮膚炎の治療に対し、オクラシチニブは選択的ヤヌスキナーゼ抑制剤である。グルココルチコイドとシクロスポリンは、炎症性皮膚疾患の犬の尿路感染(UTI)の頻度を増加させる。

目的:オクラシチニブを投与されているアレルギー性皮膚炎の犬において、UTIと潜在性細菌尿の頻度を前向き研究で評価する。

方法:明らかな尿路疾患の病歴あるいはUTIの傾向が内アレルギー性皮膚炎の2歳以上の犬を組み込んだ。研究前に、全身性抗生物質からは最低14日、シクロスポリンと全身性グルココルチコイドからは最低28日のウォッシュアウト期間後、尿検査と定量的尿培養を実施した。能書の投薬量で延長した期間180日-230日、オクラシチニブを投与し、追跡尿検査と尿培養を尿路症状に関係なく実施した。全身性抗生物質及び免疫調整薬は研究期間中に投与しなかった。

結果:この研究で55頭の犬において、58日-280日(平均195日)の間に実施した追跡尿検査と尿培養を基に、オクラシチニブ投与中にUTIを発症した犬はいなかった。2頭の犬はUTIに一致する尿培養あるいは尿検査所見が無い自己制限の異常な尿路症状を発症した。

結論と臨床意義:それらの所見は、過去のUTIの病歴あるいは素因がある状況がなく、オクラシチニブで治療した犬において細菌尿は予測される副作用ではないことを示す。ゆえに、異常な尿検査結果あるいは尿路疾患の臨床症状がない犬では、ルーチンな尿検査は指示されない。(Sato訳)

■犬のヒスタミンに対する時刻依存の皮内反応の変動に対するグルココルチコイドの影響
Influence of glucocorticoids on a time-of-day-dependent variation in intradermal reactivity to histamine in dogs.
Language: English
Vet J. August 2016;214(0):86-90.
Shun Goto , Sunao Shimizu , Miwa Watanabe , Hironari Osada , Kazuaki Sasaki , Minoru Shimoda , Makoto Nagai , Junsuke Shirai , Hiroshi Itoh , Keitaro Ohmori

この研究の目的は、犬のヒスタミンに対する皮内反応の1日の変動を調査することと、反応に対するグルココルチコイドの潜在的影響を評価することだった。

ヒスタミンの皮内注射後に形成されたホイールのサイズを、6頭の健康な犬において6時間ごとに24時間測定した。1日の変動にグルココルチコイドが係るかどうかを判定するため、経口プレドニゾロン(合成グルココルチコイド)あるいは経口トリロスタン(内因性グルココルチコイド合成阻害剤)を投与した犬で、ヒスタミンに対する皮内反応を同日9:00と21:00に評価した。最後にヒドロコルチゾンの静脈注射後、ヒスタミン反応縮小に必要な時間も評価した。

犬で明らかなヒスタミンに対する皮内反応の日変動が観察され、21:00よりも9:00でホイールのサイズはより大きかった。プレドニゾロンあるいはトリロスタンの投与はこの変動を混乱させた。ヒドロコルチゾンの静脈注射から6時間で、ヒスタミンに対する皮内反応を有意に減少させた。

それらの結果は、副腎からのグルココルチコイド分泌が、犬のヒスタミン介在性反応において日変動の調整に関与する可能性があることを示唆する。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎に対する領域特異免疫療法の有効性
Effectiveness of regionally-specific immunotherapy for the management of canine atopic dermatitis.
Language: English
BMC Vet Res. January 2017;13(1):4.
Jon D Plant , Moni B Neradilek

背景:アトピー性皮膚炎はアレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy:AIT)で治療されることも多い、一般的な掻痒性皮膚疾患である。犬のAITは従来、臨床的に関連する環境アレルゲンを確認しようとすることから始まる。犬の現行のアレルゲン検査方法論と免疫療法は基準が定められていない。皮内試験あるいは血清IgE検査よりも、その領域の空中生物学を基に選択したアレルゲンの混合抽出物による免疫療法が述べられている。

この研究の目的は、アトピー性皮膚炎の犬の領域特異免疫療法の有効性を評価することだった。

獣医皮膚科の委託病院の医療記録から、2010年6月から2013年5月までの間に領域特異皮下免疫療法を開始したアトピー性皮膚炎の犬を検索した。治療の有効性の全体的評価(優良、良、まずまず、悪い)を最低270日の経過観察期間中に、痒みの程度、病変の程度、併用薬物療法の減少の変化を基に割り当てた。治療成功を予測すると思われる基本特性は、Spearman’s correlationとKruskal-Wallis testsで解析した。

結果:3年間の間に領域特異免疫療法(regionally-specific immunotherapy:RESPIT)を開始した286頭の犬のうち、103頭が組み入れ基準に合った。RESPITの全体の反応は、優良19%、良38%、まずまず25%、悪い18%と分類された。反応の分類は、痒みの程度(r=0.72、p<0.001)、病変の程度(r=0.54、P<0.001)の低下と有意に関連したが、犬の基本特性とは関連しなかった。副作用は処置犬の7/286(2.4%)で報告された。

結論:この研究の状況下で、RESPITは犬のアトピー性皮膚炎の治療に対し安全で、有効だった。(Sato訳)

■正常およびアレルギー犬の爪郭におけるマラセチア酵母と細菌の有病率と細胞収集法の評価
Evaluation of cytology collection techniques and prevalence of Malassezia yeast and bacteria in claw folds of normal and allergic dogs.
Language: English
Vet Dermatol. August 2016;27(4):279-e67.
Kimberly L Lo , Wayne S Rosenkrantz

背景:犬の細菌およびマラセチア爪郭炎はアトピー性皮膚炎や食物有害反応の一般的な二次的合併症である。

仮説/目的:この研究の目的は、爪郭細胞診の3つの異なるサンプリング法の比較と細菌、マラセチア酵母、炎症細胞数の評価だった。

動物:60頭の飼育犬を3群に分類した:(A)正常犬;(B)爪疾患の臨床所見(茶色の着色、紅斑、腫脹、痂皮、浸出液)の無いアレルギー犬;(C)臨床的爪郭炎のあるアレルギー犬。

方法:前向き盲検split-plot studyを使用した。各犬の爪郭から爪楊枝、テープ標本、直接圧迫スメアでサンプリングした。2人の研究者がスライドの炎症細胞、nuclear streaming、壊死組織片、角質細胞、酵母、細胞内(IC)球菌、細胞外(EC)球菌、IC桿菌、EC桿菌を評価した。各パラメーター、データをグループ間、方法間で比較した。判定者間一致を計算した。

結果:グループA、Bに比べグループCのEC球菌および角質細胞の値が有意に高かった。正常犬よりもアレルギー犬においてマラセチア病原体の有病率は高かったが、その数に有意差はなかった。他の方法と比べ、爪楊枝で採取したサンプルのマラセチア病原体(P=0.0016)およびEC球菌(P=0.0106)の数は有意に多かった。テープ標本は壊死組織片や角質細胞が有意に多く(両方p<0.0001)、圧迫スメアは有意にnuclear streamingが多かった(P=0.0468)。

結論と臨床意義:臨床的爪郭炎のあるアレルギー犬からのサンプリングで、爪楊枝の使用は細胞学的結果の値を最も効果的にする。(Sato訳)

■健康な成猫におけるヒスタミン、生理食塩水、9つのアレルゲンの皮内および経皮試験の比較
Comparison of intradermal and percutaneous testing to histamine, saline and nine allergens in healthy adult cats.
Language: English
Vet Dermatol. October 2016;27(5):370-e92.
Christina M Gentry , Linda Messinger

背景:猫の皮内試験(intradermal testing:IDT)は潜在的制限がある;これに新しい試験方法への興味がわいている。予備研究で、健康な猫は信頼できる経皮グリセリン化(PG)ヒスタミン膨疹を出す一方で、経皮的に投与したglycerosalineは膨疹を形成しなかったと示されていた。

仮説と目的:この研究の目的は、健康な猫において経皮的に投与した水性およびグリセリン化アレルゲンは刺激反応を誘発するかどうか判定することだった。

方法:12頭の健康な猫で、グリセリン化および水性アレルゲンの経皮試験(PCT)とIDTを比較した。胸部外側の毛を刈り、ヒスタミン、生理食塩水、9つのアレルゲンを列状に並べて検査した。客観および主観的評価を15、20、25分、4時間目に実施した。結果は15、20、25分、4時間目に陽性あるいは陰性で評価した。

結果:皮内(ID)ヒスタミン膨疹に対する皮膚試験反応は、PGおよび経皮水性(PA)と比較した時に、すぐのリーディングポイントで客観および主観で大きかった(P<0.05);しかし、陽性(2-4)あるいは陰性(0-1)で比較した時、PGはIDと有意差がなかった。示した時のPGヒスタミンおよびアレルゲン反応は、対等なPA反応よりも大きかった。PGおよびPAアレルゲンは試験濃度で刺激反応を起こさなかった。1000PNU/mLをIDTで試験したBassia scoparia (kochia)は、刺激が疑われた。

結論と臨床意義:アレルゲンの経皮(PCT)適応は、健康な猫で刺激反応を起こさなかった。IDヒスタミン膨疹よりも小さいが、PGヒスタミン膨疹は容易に認識でき、PCTは実施が簡単だった。(Sato訳)

■自発掻痒性鶏アレルギーの犬に対し2種類の加水分解家禽ベースの市販食を調べた無作為化二重盲検交差試験
A randomized, double-blinded crossover trial testing the benefit of two hydrolysed poultry-based commercial diets for dogs with spontaneous pruritic chicken allergy.
Language: English
Vet Dermatol. August 2016;27(4):289-e70.
Petra Bizikova , Thierry Olivry

背景:加水分解タンパク食は皮膚の有害食物反応(CAFR)の犬の診断と治療に用いられる。未変性タンパクに過敏症のどれくらいの割合の犬が、その加水分解型に反応するのかについてはあまり分かっていない。

目的:鶏でCAFRを引き起こす犬において、加水分解した家禽の羽(RCU)および鶏の肝臓食(HZD)の臨床的アレルゲン性を判定した

方法:この無作為化二重盲検交差試験において、鶏でCAFRを誘発する10頭の犬を鶏肉の経口チャレンジ試験陽性、コーンに陰性後選んだ。テストした食餌は14日間のウォッシュアウト期間で隔てて14日間与えた。オーナーは毎日ビジュアルアナログスケール(PVAS)で痒みを評価した。痒みの発赤が起きた場合チャレンジを終了した(すなわちPVAS≧5/10)。

結果:RCUおよびHZDを与える前のPVASスコア中央値はそれぞれ0.9と1.7だった(Wilcoxon signed rank test、P = 0.46)。HZDを与えた後に痒みスコアは有意に増加したが(Friedman’s test、 P < 0.001)、RCUを与えた後は増加しなかった(P=0.895)。RCUを与えた犬にはいなかったが、HZDを与えた4頭(40%)は痒みの発赤が発生した後中止した(Fisher’s test、 P = 0.04)。HZDを与えた後の最大PVASスコア(中央値:4.7)はRCU(2.5)よりも有意に高かった(Wilcoxon signed rank test、 P = 0.01)。各群の1頭は下痢により中止した。

結論:加水分解した家禽の羽の食餌は、鶏にアレルギーを持つ犬の掻痒性発赤を誘発しなかったのと比べ、加水分解の鶏の肝臓食は40%の犬に掻痒性発赤を誘発した。(Sato訳)

■現在の知見:犬の胃腸管のマイクロバイオーム
Current state of knowledge: the canine gastrointestinal microbiome.
Anim Health Res Rev. 2012 Jun;13(1):78-88. doi: 10.1017/S1466252312000059. Epub 2012 May 30.
Hooda S, Minamoto Y, Suchodolski JS, Swanson KS.

胃腸管 (GI) の微生物は宿主の栄養学的、免疫学的そして生理学的プロセスに重要な役割を果たしている。伝統的な培養技術で健常犬の胃内には10(4)-10(5) コロニー形成単位(CFU)/g、小腸には10(5)-10(7)CFU/g、結腸には10(9) to 10(11) CFU/gの細菌の濃度域が明らかになった。培養では少量の細菌種が成長し研究されてきたが、DNAに基づいた技術の近年の出現まで発展は限定的であった。

近年、DNA シークエンス技術と バイオインフォマティックスが犬の腸の細菌叢のより良い系統発生および機能的/代謝特性特徴を可能にした。優勢な門はファーミキューテス、バクテロイデス、フソバクテリア、プロテオバクテリアそしてアクチノバクテリアであった。16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子のピロシークエンスを用いた研究は、腸の内容物や糞便中のものと比較し、胃腸管に沿ってGI粘膜に付着した微生物間の空間的な違いを示した。

人間と同じように、胃腸管の微生物のdysbiosisは慢性下痢や炎症性腸疾患などの犬の胃腸疾患において一般的である。DNAに基づいた分析によって様々なクロストリジウム、キャンピロバクター、サルモネラそして大腸菌などコンディションに影響する重要な病原菌も識別している。さらに、栄養士は犬の胃腸管の微生物や関連する健康指標に関して、食物繊維、プレバイオティクスそしてプロバイオテイクなど食事介入の効果を研究するためDNAに基づいた技術を適応している。その分野における最近の進歩にもかかわらず、犬の胃腸管の微生物は完全に特徴付けから遠く離れ、健康と疾患における胃腸管の微生物の系統発生および機能/代謝能力のより深い特徴付けが必要とされている。この論文は犬の胃腸管の細菌叢を特徴づけるために実施された最近の研究の概要を提供する。(Dr.Kawano訳)

■犬と猫における腸管のdysbiosisの診断と解釈
Diagnosis and interpretation of intestinal dysbiosis in dogs and cats.
Vet J. 2016 Sep;215:30-7. doi: 10.1016/j.tvjl.2016.04.011. Epub 2016 Apr 25.
Suchodolski JS.

犬と猫の腸管には細菌、真菌、ウイルス、原虫などかなり複雑なマイクロバイオータが生息している。近年まで、伝統的な細菌培養が胃腸管における細菌の存在を認識するのによく使われていたが、腸管内に生息する大部分の嫌気性菌を認識するには標準的な平板培養技術では不十分であると認識されるようになった。

分子法は現在胃腸疾患のある犬および猫における腸管のdysbiosisを評価する為に確立されたが、これらの手法はまだルーティーンな診断には広く利用されていない。急性および慢性胃腸疾患における正常な共生細菌(例えばLachnospiraceae, Ruminococcaceae, そして Faecalibacterium spp)の喪失は代謝の変化に関連する。例えば短鎖脂肪酸や二次性胆汁酸など免疫調節をする細菌の代謝産物を変化させる。これは胃腸疾患の病態生理学におけるdysbiosisの重要性を協調する。特定の細菌群のための分子に基づく評価の進歩、微生物のdysbiosisの指標や微生物の機能的な代謝産物の測定は、dysbiosisの評価を助けるために現在進行中である。これらは胃腸疾患の病態生理のよりよい理解につながり、dysbiosisに対する新しい診断的そして治療的アプローチへも導くかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎に対しLactobacillus paracasei K71の経口投与の補足的効果
Complementary effect of oral administration of Lactobacillus paracasei K71 on canine atopic dermatitis.
Vet Dermatol. October 2015;26(5):350-3, e74-5.
Yuri Ohshima-Terada; Yuki Higuchi; Takehisa Kumagai; Akihito Hagihara; Masahiko Nagata

背景:アトピー性皮膚炎は犬で見られる一般的な皮膚疾患である。グルココルチコイドは一般的に勧められる対症療法で、許容性の良い補助療法は、長期グルココルチコイド使用の必要量やそのリスクを減らすのに役立つかもしれない。

仮説/目的:この研究の目的は、犬のアトピー性皮膚炎(CAD)において、Lactobacillus paracasei K71の経口投与の補足的効果を評価することだった。

動物:軽度から中程度のCADの犬41頭を19カ所の動物病院で採用した。

方法:犬を治験薬(K71群;n=20)、あるいは塩酸セチリジン(コントロール群;n=21)を投与する群に振り分けた。前から処方されている薬剤は、12週の治験中も続けるのを許可した。犬はCADESIとmedication scoring systemを使用した調査員により評価した。オーナーにはビジュアルアナログスケール(VAS)と掻痒スコアを用いて評価してもらった。

結果:両群において12週目のCADESIスコア、VAS、掻痒スコアは開始時と比べて改善した。K71群のCADESIと掻痒スコアはコントロール群のそれよりもわずかに低く、K71群のmedication scoresの減少は、コントロール群と比べて有意に低かった(P<0.05;スチューデントt検定)

結論と臨床意義:K71の経口投与は、ステロイド節約効果をもたらすという補足的療法としてCADの犬に有効かもしれない。(Sato訳)

■アトピーおよびアレルギー性皮膚疾患の犬におけるオクラシチニブの長期人道的使用
Long-term compassionate use of oclacitinib in dogs with atopic and allergic skin disease: safety, efficacy and quality of life.
Vet Dermatol. June 2015;26(3):171-e35.
Sallie B Cosgrove; Dawn M Cleaver; Vickie L King; Amy R Gilmer; Anne E Daniels; Jody A Wren; Michael R Stegemann

背景:オクラシチニブは4か月の無作為化臨床試験を基に、アレルギーやアトピー性皮膚炎に関係する掻痒の犬の治療に対し、安全で有効性である。

仮説/目的:この研究は人道的使用プログラムにおいて登録したオクラシチニブ投与犬の長期安全性、有効性、QOLを評価した。

動物:過去にオクラシチニブ療法で有効だったアレルギー性皮膚疾患の飼育犬247頭

方法:26の動物病院で非盲検研究に犬を登録した。犬に0.4-0.6mg/kgのオクラシチニブを最初の14日は1日2回、その後630日まで1日1回投与した。90日間隔以内で評価を実施した。各病院を訪れ、オーナーにはQOLに関して答えてもらい、ビジュアルアナログスケール(VAS)を使用して痒みを評価してもらった。獣医師は簡単なVASを用いて皮膚炎を評価した。異常な健康に関する事象、併用薬物と臨床的病理結果をまとめた。

結果:VASスコアは全てのタイムポイントで基準よりも改善した。90日目に基準より50%以上減少した犬の比率は痒みについては63.9%、皮膚炎については66.4%だった。全ての犬の91%より多くで、オーナーはQOLに良い影響を感じた。尿路感染/膀胱炎、嘔吐、耳炎、膿皮、下痢は頻繁に報告された(>5%の犬)異常な臨床症状だった。血液および血清化学検査は正常な参照範囲内だった。人道的薬物投与の許容性は良かった。

結論と臨床意義:この研究の結果は、オクラシチニブは犬の長期使用も安全で有効性があり、QOLを改善することを示した。(Sato訳)

■IL-31:犬の痒みと自然発症性の犬アトピー性皮膚炎における役割
Interleukin-31: its role in canine pruritus and naturally occurring canine atopic dermatitis.
Vet Dermatol. 2013 Feb;24(1):48-53.e11-2. doi: 10.1111/j.1365-3164.2012.01098.x.
Gonzales AJ, Humphrey WR, Messamore JE, Fleck TJ, Fici GJ, Shelly JA, Teel JF, Bammert GF, Dunham SA, Fuller TE, McCall RB.

背景: IL-31はTh2リンパ球や皮膚ホーミングT細胞陽性抗原の皮膚のリンパ球などによって産生されるgp130/IL-6ファミリーサイトカインのメンバーである。トランスジェニックマウスによって過剰発現するとIL-31は重度の痒み、脱毛そして皮膚病変を誘発する。人においてIL-31の血清レベルは成人と子供のアトピー性皮膚炎の重症度と関連する。

仮説/目的: 犬の痒みと自然発症性犬アトピー性皮膚炎におけるIL-31の役割を決定する。

動物:基礎研究として純血種ビーグル犬を利用した。実験犬、疾患のない飼い主所有の犬と自然発症性アトピー性皮膚炎と診断した飼い主所有の犬から血清を採取した。

方法: 純血種ビーグル犬にいくつかのルート(静脈、皮下もしくは皮内)からcIL-31を投与し痒み行動をビデオモニターで観察/定量化した。犬のcIL-31の血清濃度を測定するため、定量免疫測定法を使用した。

結果: 実験ビーグルへcIL-31を注射すると投与ルートに関わらず一時的に痒み行動が惹起された。2時間以上評価するとcIL-31を接種した犬は、プラセボを投与した犬と比較して痒み行動が有意に増加した。さらにcIL-31濃度は自然発症性アトピー性皮膚炎(? 13 pg/mL)の犬の57%で認められたが、正常、非疾患実験動物もしくは飼い主所有の動物では定量(<13 pg/mL)できなかった。

結論: 犬のIL-31は犬に痒み行動を惹起した。犬のIL-31は自然発症性アトピー性皮膚炎の犬の大部分で検出されており、このサイトカインがアトピー性皮膚炎など痒みのあるアレルギー性の皮膚の状態において重要な役割を果たすかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■犬のIL-31誘発性掻痒:犬の抗掻痒効果を評価するための新規実験モデル
IL-31-induced pruritus in dogs: a novel experimental model to evaluate anti-pruritic effects of canine therapeutics.
Vet Dermatol. 2016 Feb;27(1):34-e10. doi: 10.1111/vde.12280. Epub 2015 Dec 15.
Gonzales AJ, Fleck TJ, Humphrey WR, Galvan BA, Aleo MM, Mahabir SP, Tena JK, Greenwood KG, McCall RB.

背景: 痒みは犬のアトピー性皮膚炎(AD)などアレルギー性皮膚疾患の特徴的な臨床症状である。IL-31 はアトピー性皮膚炎のいくつかの犬の血清で検出され、実験ビーグル犬において痒み行動を誘発することができる。

仮説/目的: 目的はプレドニゾロン、デキサメサゾンそしてオクラシチニブの効果を評価することによってIL-31誘発性掻痒モデル特徴づけることであり、プレドニゾロンとデキサメサゾンの抗掻痒効果に対してオクラシチニブのそれのスピードを比較することであった。

動物: すべての研究で実験用ビーグルを使った

方法: ランダム化盲検プラセボコントロール試験で評価し、組み換え犬IL-31の静脈注射に続いて、プレドンゾロン、デキサメサゾンそしてオクラシチニブの抗掻痒効果を比較した。ビデオ監視を利用し、研究動物の痒み行動をスコア化した。
結果:プレドニゾロン(0.5 mg/kg, 経口投与)は観察の10時間前に投与した時IL-31誘発性掻痒を減少させた。薬物治療と観察の時間間隔が1時間に短くなると、プレドニゾロン(0.25 or 0.5 mg/kg, 経口投与)ではなくデキサメサゾン(0.2 mg/kg,筋肉投与)はIL-31誘発性掻痒を減少させた。オクラシチニブ(0.4 mg/kg, 経口投与)は観察期間の1, 6, 11 そして 16 時間前に投与した時に痒みを減少させ、オクラシチニブの抗掻痒活性は評価したすべての時間帯においてプレドニゾロンやデキサメサゾンと比べてより強かった。

結論と臨床重要性: IL-31誘発性掻痒モデルにおけるプレドニゾロン、デキサメサゾンそしてオクラシチニブの有効性は、これがアトピー性皮膚炎などアレルギー性皮膚炎に関連した急性掻痒の適切なモデルであり、新規物質または製剤を評価するのに利用できることに確信を与える。(Dr.Kawano訳)

■猫の非ノミ性-非食餌-誘発性過敏性皮膚炎へのオクラシチニブ:飼育猫の小規模前向き予備研究
Oclacitinib in feline nonflea-, nonfood-induced hypersensitivity dermatitis: results of a small prospective pilot study of client-owned cats.
Vet Dermatol. August 2015;26(4):235-e52.
Christian Ortalda; Chiara Noli; Silvia Colombo; Stefano Borio

背景:オクラシチニブはアレルギーの犬において痒みと病変を減少させるヤヌスキナーゼ阻害剤である。猫においてインターロイキン-31誘発性掻痒を抑制できるが、その臨床効果について得られる情報はない。

仮説/目的:猫の非ノミ-、非食餌誘発-過敏性皮膚炎においてオクラシチニブの効果、投与の容易さ、認容性を評価する

方法:非ノミ-、非食餌誘発-過敏性皮膚炎と診断された12ヶ月齢以上、体重3kg以上の猫をオクラシチニブ0.4-0.6mg/kg経口投与(p.o.)1日2回2週間、その後、1日1回14日間で治療した。研究前後にScoring Feline Allergic Dermatitis (SCORFAD) システムで臨床的病変を評価し、10cm長ビジュアルアナログスケール(VAS)で掻痒を評価した。オーナーは4点スケールで全体の効果、投与の容易さ、認容性を評価した。

結果:12頭の猫をオクラシチニブ平均初期用量0.47mg/kg、p.o.1日2回で治療した。12頭中5頭でSCORFADとVASに良好な改善が見られたが、他の猫は変化なし、悪化、あるいは治療失敗によりドロップアウトした。12頭中4頭のオーナーは全体の効果に良好/優良とスコアを付け、12頭中10頭で投与の容易さ、認容性に良好/優良を付けた。

結論と臨床意義:オクラシチニブ0.4-0.6mg/kg、p.o.は、非ノミ-、非食餌誘発-過敏性皮膚炎のいくらかの猫には効果的で安全な薬剤かもしれない。猫に対する最も効果的な用量の範囲を決定する追加研究が必要である。(Sato訳)

■ヒトと犬と猫の腸内細菌:現在の知識とさらなるチャンスと挑戦
Gut microbiota of humans, dogs and cats: current knowledge and future opportunities and challenges.
Br J Nutr. 2015 Jan;113 Suppl:S6-17. doi: 10.1017/S0007114514002943. Epub 2014 Nov 21.
Deng P, Swanson KS.

ハイスループットDNAシーケンシング技術は微生物とその遺伝子(マイクロバイオーム)の確認と特徴付けを可能にする。これらの新しい技術を使って、口腔、鼻腔、皮膚、尿生殖路そして胃腸管などヒトの体のいくつかの適した場所における微生物数は近年記述されてきた。

コンパニオンアニマルにおけるマイクロバイオームに関するデータは非常に少なく、データの大部分は健康な実験動物における糞便の分析に由来している。ハイスループット分析は細菌、古細菌、真菌、原生動物そしてウイルスなど腸管微生物の分布と複雑性を研究するためのチャンスを提供する。我々の研究室と他の研究室では近年健康な犬と猫に優勢な微生物分類群と遺伝子についてと、食事による介入でこれらがどうかわるかについて述べている。一般的に、犬と猫の腸管における糞便微生物の系統発生(e.g. ファーミキューテス、バクテロイデス、プロテオバクテリアそしてアクチノバクテリア)と機能的capacity(e.g.炭水化物、タンパク質、DNAそしてビタミン代謝物に関連した主な機能グループ:毒性要素:そして細胞壁と嚢)はヒトのそれらと似ている。はじめのシークエンシングプロジェクトは、犬と猫の腸管内に存在する微生物の超個の一見を提供したが、探検し発見出来ることをたくさん残してくれた。

DNAは唯一の潜在的な機能や微生物のトランスクリプトームや代謝物質プロファイルにフォーカスした研究についての情報を提供してくれるので、どのように微生物が宿主の生理学や健康に影響するかということは明らかに必要とされている。

今後の研究では、どのような食事組成、抗生物質そして他の薬物療法、品種や疾患がどう影響するか?もしくは腸管微生物によって影響されるか?そしてこの情報が食事の改善にどう役立ち、疾患のバイオマーカーをどう同定するか?そして標的疾患の治療にどう発展させるか?ということを決定しなければならない。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬117頭に対するアレルゲン特異的免疫療法の結果
Results of allergen-specific immunotherapy in 117 dogs with atopic dermatitis.
Vet Rec. 2006 Jan 21;158(3):81-5.
Schnabl B, Bettenay SV, Dow K, Mueller RS.

48か月までのアレルゲン特異的免疫療法を実施したアトピー性皮膚炎の犬117頭の治療の成功を評価した。優れた反応(免疫療法だけで寛解)は18頭であり、よい反応(投薬が50%以上改善され臨床症状が改善した症例)は57頭であり、中等度の反応は24頭であり、乏しい反応は18頭であった。アレルゲン抽出の中のカビ抗原は投与前に分離して保管した。カビアレルゲンを含む免疫療法の成功率はカビと花粉アレルゲンを一つのバイアルに貯蔵したこれまでの研究より高かった。

疾患に発展したときの犬の年齢もしくは治療を開始した時に臨床症状を示した年齢や期間は有意に成功率に影響しなかった。; 花粉、カビもしくはダニが抗原として使用されたかどうか、もしくは問題のあるアレルゲンが皮内反応で認識されたかもしくはアレルゲン特異的IgE値の血清検査によって認識されたかどうかについても影響しなかった。(Dr.Kawano訳)

■人のマイクロバイオームの現在の状況と将来性
Current status and future promise of the human microbiome.
Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr. 2013 Jun;16(2):71-9. doi: 10.5223/pghn.2013.16.2.71. Epub 2013 Jun 30.
Kim BS, Jeon YS, Chun J.

人の関連する微生物相は様々であり、個人や身体の部位によっても異なり人の健康において重要である。人体の微生物相は免疫、健康そして疾患において重要な役割を果たす。人の微生物相は次世代シークエンサーとそのメタゲノミクスのアプリケーションの進歩を利用して研究されている。これは人体の微生物相の成分の観察と、微生物のコミュニティーによって発現される機能的遺伝子の認識を可能にする。

腸の微生物は人の微生物相において最も多種で、高密度な細胞数を構成することが分かっている。従って他の部位よりもより研究されている。腸管微生物の不均衡は、炎症性腸疾患、大腸がん、糖尿病そしてアトピーなど様々な疾患と関連することがこれまでの結果で示されている。糞便移植などの微生物の調節を含む臨床治療が行われ、その効果はいくつかの疾患で観察されている。人の微生物相の研究は人のゲノムプロジェクトの一部であり、研究から収集した理解は個別化医療(personalized medicine)など様々なアプリケーションの可能性を増加させる(Dr.Kawano訳)

■アトピー犬のマラセチアに対する血清アレルゲン特異的IgE測定値と皮内試験反応性の結果との比較
Comparison of the results of intradermal test reactivity and serum allergen-specific IgE measurement for Malassezia pachydermatis in atopic dogs.
Vet Dermatol. December 2014;25(6):507-11, e84-5.
Willam E Oldenhoff; Glenn R Frank; Douglas J Deboer

背景:マラセチアpachydermatisは犬の皮膚の常在菌叢の一部である。マラセチア過敏症がアトピー性皮膚炎(AD)の臨床症状の引き金と認識されている犬もいる。マラセチア過敏症の判定は、ファーストオピニオンの診療施設では使用が限られているかもしれない皮内試験(IDT)でなされることが多い。

仮説/目的:この研究の目的は、マラセチアに対する即時型IDT反応と抗-マラセチアIgEを検出するために作られた酵素結合免疫吸着検査(ELISA)の結果と比較することだった。

動物:ADの臨床診断が下された84頭の犬

方法:マルチアレルゲンIDTを全ての犬で実施した。一般環境アレルゲンのパネルとマラセチアに対するアレルゲン特異的IgEの血清検査を、調整光学濃度(OD)として報告された結果と共に検出試薬としてFcεRIαレセプターフラグメントを使用したELISAで実施した。受信者操作特性(ROC)曲線を2つの検査の結果の分析に使用した。

結果:IDTで反応した犬と、反応しなかった犬に対する抗-マラセチアIgE ELISAの調整ODの中央値はそれぞれ0.137と0.024だった。ROC曲線の分析は、抗-マラセチアELISAに対するカットオフポイントを示唆し、IDTの結果に相対して感受性77.0%、特異性89%だった。

結論と臨床意義:FcεRIαレセプター試薬により検出した抗-マラセチアIgEとIDT反応性の間で相当な一致が示された。マラセチア性皮膚炎の臨床診断との関連はこの研究で試されていないが、ADの犬における即時型マラセチア過敏症の有無を知るためにELISAが使用できるかもしれないと示している。(Sato訳)

■アトピー皮膚炎におけるMalassezia属菌の役割
The Role of Malassezia spp. in Atopic Dermatitis.
J Clin Med. 2015 May 29;4(6):1217-28. doi: 10.3390/jcm4061217.
Glatz M, Bosshard PP, Hoetzenecker W, Schmid-Grendelmeier P.

Malassezia属菌は、親油性の酵母菌であり、健康な人の皮膚においてもっとも一般的な真菌である。健康な人の皮膚における〕片利共生生物としての役割にもかかわらず、Malassezia属菌はアトピー性皮膚炎における病因的な役割を果たしている。Malassezia属菌がアトピー性皮膚炎の病因に貢献するかもしれないメカニズムは完全に理解されていない。

ここでは、我々はアトピー性皮膚炎(AD)におけるMalassezia属菌の病因的な役割に関する最新の情報を概説する。例えばMalassezia属菌は特異的IgE抗体産生を惹起する様々な免疫原性蛋白を産生し、炎症性サイトカイン前駆体の放出を誘発するかもしれない。さらにMalassezia属菌は、真菌蛋白と人のカウンターパーツとの間の交差反応をおこす自己反応性T細胞を誘発する。これらのメカニズムはアトピー性皮膚炎における皮膚の炎症に貢献する。従って、この疾患の経過に影響を与える。

最後に、我々はアトピー性皮膚炎の患者における抗Malassezia属菌の治療の可能性のある利点を議論する。(Dr.Kawano訳)

■ステップアップした糞便移植の戦略:ステロイド依存性潰瘍性大腸炎
Step-up fecal microbiota transplantation strategy: a pilot study for steroid-dependent ulcerative colitis.
J Transl Med. 2015.
Cui B, et al.

背景:難治性潰瘍性大腸炎 (UC) に対する糞便移植(FMT)を使った戦略は、糞便移植単独では寛解に失敗するかどうか不明確のままである。この研究の目的は、ステロイド依存性潰瘍性大腸炎のデザインされたステップアップした糞便移植の戦略の効果と安全性を評価することであった。

方法: ステロイド依存性潰瘍性大腸炎の15人の患者が参加し、ステップアップした糞便移植の戦略で治療した。最低3ヶ月の追跡臨床データを集めた。患者の糞便移植前後における糞便微生物構成と関連するドナーは16S rRNAシーケンスで分析した。

結果: 8/14(57.1 %) の患者は臨床症状が改善し、ステップアップした糞便移植の継続でステロイドは中止した。1人の患者は追跡に失敗した。治療に反応した8人のうち、5人(35.7 %) は、糞便移植は単回であり、1人(7.1 %)は2回であり、2人(14.2 %)は、2回の糞便移植に加え予定されたステロイドを投与した。反応した8人のうち4人 (28.6 %) は、追跡中は長期(3-18 months)寛解で維持できた。3人は一時的、部分的に改善したが、6人 (42.9 %) は、臨床的改善の基準を満たさずステロイドに依存して維持した。微生物分析では、糞便移植では構成が強く変わり、治療が成功した患者の構成はドナーの構成にかなり似ている。治療中及び追跡中に副作用はみられなかった。

結論: ステップアップした糞便移植戦略は、腸管の微生物構成の成功した再構築に関して、ステロイド依存性潰瘍性大腸炎の患者の治療戦略としての保証を示している。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性掻痒:薬理学とモデリング
Atopic itch in dogs: pharmacology and modeling.
Handb Exp Pharmacol. 2015;226:357-69. doi: 10.1007/978-3-662-44605-8_19.
Olivry T, Baumer W.

皮膚病の犬で見られる最も一般的な問題は痒みである。犬の掻痒の病因的分類はいまだ存在しないが、多く原因はIFSI クラスI (皮膚科学的)掻痒に分類される。犬の掻痒の最も一般的な原因の一つは、アトピー性皮膚炎と関連し、いくつかの抗掻痒介入の効果に関するランダム化コントロール試験のグレードエビデンスがある。

現時点で、犬アトピー性掻痒の治療の大黒柱は、主に局所と/もしくは経口グルココルチコイドと経口シクロスポリンの使用に頼っている。ヒスタミンH1受容体阻害薬は、アトピー犬において痒みを軽減させることに関しては矛盾しており悪名高い。新しいヤヌスキナーゼ(JAK)-1阻害剤は最近犬のアレルギー性掻痒の治療に承認され、効果発現は著しく早い。犬のモデリングの掻痒は抗原感作(ノミ、ハウスダストマイト)によって起こり、顕在化する掻痒の兆候は、新奇の抗掻痒様式の検査と同じように反応機構研究として使用することができる。 (Dr.Kawano訳)

■コンパニオンアニマルの食物有害反応についての話題を厳しく評価した(1):除去食の期間
Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (1): duration of elimination diets.
BMC Vet Res. 2015 Aug 28;11:225. doi: 10.1186/s12917-015-0541-3.
Olivry T, Mueller RS, Prelaud P.

背景 制限食(すなわち除去食)と曝露食試験は、犬と猫において皮膚の食物有害反応(CAFRs)を診断するのに標準的な検査である。今のところ、コンパニオンアニマルにおいてCAFRを診断するのに最も感度がよいとされる除去食試験の期間について一致した意見はない。

結果 2014年12月の時点で得られる最も優れたエビデンスを探し、調査し、解析することで、除去食を開始してから、犬においては5週間、猫においては6週間で80%以上の動物がCAFRの臨床症状の寛解が得られたことがわかった。8週間まで食物試験を延長すると、CAFRの犬と猫の90%以上において完全寛解が得られた。

結論 犬と猫の90%以上においてCAFRを診断するのに、除去食試験は最低8週間実施するべきである。(Dr.Taku訳)

■飼育犬のアトピー性皮膚炎のコントロールに対しオクラシチニブとシクロスポリンの効果と安全性を比較する無作為盲検臨床試験
A blinded, randomized clinical trial comparing the efficacy and safety of oclacitinib and ciclosporin for the control of atopic dermatitis in client-owned dogs.
Vet Dermatol. February 2015;26(1):23-30, e7-8. 27 Refs
Peter R Little; Vickie L King; Kylie R Davis; Sallie B Cosgrove; Michael R Stegemann

背景:犬のアトピー性皮膚炎(AD)の治療にシクロスポリンは認可され、安全性と効果を示している。オクラシチニブは安全で効果的な代替療法とプラセボ-対照研究は示唆している。

仮説/目的:28日目の非劣性試験を組み込んだ盲検無作為化臨床試験においてADのコントロールに対しシクロスポリンと比較したオクラシチニブの効果と安全性を評価すること

動物:8か所からADの病歴を持つ飼育犬合計226頭を登録した

方法:登録された犬に12週間、オクラシチニブ(0.4-0.6mg/kg1日2回14日間、その後1日1回)あるいはシクロスポリン(3.2-6.6mg/kg1日1回)を無作為に経口投与した。オーナーは改良ビジュアルアナログスケール(VAS)で痒みを評価し、獣医師はCADESI-02で皮膚炎を評価した。
結果:1、2、7、14、28、56、84日目において、オーナーが評価した痒みのベースラインからの減少比率はオクラシチニブ群で25.6から61.0%、シクロスポリン群で6.5から61.5%に変化した;28日目までの全てのタイムポイントで差は有意だった。56日目、シクロスポリン投与犬はオクラシチニブ投与犬と痒みで同様の減少を示した。14日目、ベースラインのCADESI-02からの減少比率はシクロスポリン群(43.0%)よりもオクラシチニブ群(58.7%)で有意に大きかった。オクラシチニブ群と比べシクロスポリン群において、胃腸症状を引き起こす有害事象が3倍報告された。

臨床意義:犬ADに対する治療のこの研究で、シクロスポリンよりもオクラシチニブは作用がより早く発現し、消化管副作用の頻度はより低かった。(Sato訳)

■内因性vs外因性アトピー性皮膚炎の特徴
Defining intrinsic vs. extrinsic atopic dermatitis.
Dermatol Online J. 2015 Jun 16;21(6). pii: 13030/qt14p8p404.
Karimkhani C, Silverberg JI, Dellavalle RP.

アトピー性皮膚炎(AD)は、境界のある発赤やプラークなど湿疹病変によって特徴付けられる慢性再発性炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎は、一般的に上昇したIgEや喘息、花粉症そして食物アレルギーなどアトピー疾患と関連する。Rackemann と Malloryは、アレルギーの存在(“外因性”)と不在(“内因性”)に基づいて喘息と区別した最初の二人だった。区別はその後に増加したIgEの存在(“外因性”)と不在(“内因性”)とアトピー疾患に基づいてアトピー性皮膚炎に適応した。内因性ADと外因性ADの違いは広く使われているが、議論が残ったままである。(Dr.Kawano訳)

■炎症性グループ2自然リンパ球
Inflammatory group 2 innate lymphoid cells.
Int Immunol. 2015 Aug 1. pii: dxv044.
Huang Y, Paul WE.

グループ2自然リンパ球(ILC2 cells)は、2型のサイトカインを産生することができ、2型免疫防御と組織のホメオスタシスを成立させる。グループ2自然リンパ球はIL-33と/もしくはIL-25に反応する単一の細胞群であると考えられている。

ILC2 cellsは2つの異なるサブセットに区別することが最近のエビデンスで示されている:恒常性の、もしくは自然ILC2s(nILC2 cells)と炎症性ILC2 cells (iILC2 cells)。nILC2 cellsはバリアとなる組織に存在し、主にIL-33に反応する。それらは免疫防御だけではなく組織の修復やベージュ脂肪生合成など重大な役割を担っている。iILC2 cellsは安定した末梢組織ではみられないが、蠕虫感染やIL-25治療によって多くの場所で誘発される。IL-25によって誘発されたiILC2 cellsは多能性のある一時的な自然リンパ球の前駆体として作用する。それらは、対応する免疫応答で機能するnILC2様もしくはILC3様細胞へ発展するための感染の異なるタイプによって動員される。iILC2細胞の存在の証明はILC2生物学の複雑さに関する理解を深め、nILC2 細胞とiILC2 細胞間の関係の解析に必要である。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の非病変皮膚における減少した酸化状態
Decreased oxidative state in non-lesional skin of atopic dermatitis.
Dermatology. 2002;204(1):69-71.
Antille C, Sorg O, Lubbe J, Saurat JH.

背景: 様々な環境要因に最も暴露される皮膚層である角質層 (SC)は特に酸化ストレスに敏感である。角質層は脂質が豊富であるため、α-トコフェロールのような親油性抗酸化剤が酸化ストレスの中で産生される反応性酸化中間体をスカベンジすることに重要な役割を果たすことが期待されている。

目的: アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、バリア機能が障害を受けているため、我々は健常者に比べてアトピー性皮膚炎患者は環境の酸化ストレスにより感受性が高い場合、疑問に感じた。

方法: 角質層は14人の健常者と14人のアトピー性皮膚炎の患者の前腕から掻爬して得た。:それからα-トコフェロールと過酸化脂質濃度を高速液体クロマトグラフィーと第一鉄でそれぞれ測定した。

結果: アトピー性皮膚炎患者の角質層は健常者(7.7 +/- 0.9 nmol/g; p < 0.01)と比較してα-トコフェロール(16.1 +/- 2.2 nmol/g)はより高い濃度を示した。また、わずかだが過酸化脂質は明らかに低い濃度であった(アトピー性皮膚炎1,353 +/- 128 と健常者1,818 +/- 154 nmol/g; p < 0.05)。

結論: これらの結果は、アトピー性皮膚炎患者の角質層は、明らかに低い酸化状態であることを示している。これは、慢性炎症のため皮膚の抗酸化防御の増加の結果であるかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■猫のシクロスポリン経口薬(ATOPICA for cats)を6か月間毎日投与した時の安全性、耐容性、薬物動態
Safety, tolerability, and pharmacokinetics of 6-month daily dosing of an oral formulation of cyclosporine (ATOPICA for catsR) in cats.
J Vet Pharmacol Ther. April 2014;37(2):161-8.
E S Roberts; K A Van Lare; G Strehlau; M Peyrou; L M Roycroft; S King

猫の過敏性皮膚炎のシクロスポリンによる治療効果は証明されている。ATOPICA for Cats(シクロスポリン経口薬、USP)MODIFIEDを6か月間毎日1回猫に投与し、安全性、耐容性、薬物動態を評価するこの研究を行った。

40頭の健康な猫(4頭/性別/グループ)に6か月間(183日)毎日1回シクロスポリンを0、8(1x)、16(2x)、24(3x)、40(5x)mg/kgで投与した。体重、摂食量、検眼鏡検査、神経学的検査を含む身体検査、血圧、心電図、臨床病理(血液、凝固、臨床化学、尿検査)、臓器の重量、肉眼および顕微鏡学的検査を実施し、評価した。また血液中のシクロスポリン濃度を投与前、投与1、2、7、14、31、91、154、182日目、投与後1、31、182日目に測定した。

投与に関係すると思われる副作用は、APTT延長、各1頭に見られた骨髄低形成とリンパ腫;全ての副作用は16mg/kg以上の量を投与した猫で起こった。治療の最初の週以降でシクロスポリンの有意な蓄積はなかった。

結果から指示通り投与した時、ATOPICA for Catsは安全で、良好な耐容性を示し、投与から最初の週以降の予想しない蓄積もないことが確認できた。(Sato訳)

■オーストラリアの飼育犬のアレルギー性皮膚炎に関係する痒みと臨床症状のコントロールでプレドニゾロンと比較したオクラシチニブ(ApoquelR)の有効性
Efficacy of oclacitinib (ApoquelR) compared with prednisolone for the control of pruritus and clinical signs associated with allergic dermatitis in client-owned dogs in Australia.
Vet Dermatol. December 2014;25(6):512-8, e86.
Caroline Gadeyne; Peter Little; Vickie L King; Nigel Edwards; Kylie Davis; Michael R Stegemann

背景:アレルギー性皮膚炎に関係する掻痒と皮膚炎を軽減するのに経口グルココルチコイドが広く使用されている。ヤヌスキナーゼ抑制薬のオクラシチニブは、安全で有効な代替治療とデータは示唆している。

仮説/目的:完全乱塊法と単盲検比較臨床試験でアレルギー性皮膚炎に関係する掻痒のコントロールに対し、プレドニゾロンと比較してオクラシチニブの有効性と安全性を評価すること

動物:オーナーにより評価して中から重度の掻痒があり、アレルギー性皮膚炎の仮診断をうけた飼育犬(n=123)が参加した。

方法:無作為にオクラシチニブ(0.4-0.6mg/kg1日2回14日間、その後1日1回)あるいはプレドニゾロン(0.5-1.0mg/kg1日1回6日間、その後隔日投与)で28日間治療した。高められたビジュアルアナログスケール(VAS)を使用し、全てのタイムポイントでオーナーが掻痒を評価して、獣医師は皮膚炎を評価した。

結果:両方の治療により、4時間以内に急速に効果が発現した。掻痒や皮膚炎スコアの減少がプレドニゾロンよりもオクラシチニブでより顕著だった14日目(オーナーの掻痒スコアP=0.0193;獣医師の皮膚炎スコアP=0.0252)を除き、スコアの平均減少に有意差はなかった。両グループで副作用の報告頻度は同じだった。

結論と臨床意義:この研究で、オクラシチニブとプレドニゾロン共にアレルギー性皮膚炎に関係する痒みの急速、有効、安全なコントロールが可能で、オーナーにより痒み、獣医師により皮膚炎のかなりの改善が報告された。(Sato訳)

■犬のアトピー性掻痒:薬理学とモデリング
Atopic itch in dogs: pharmacology and modeling.
Handb Exp Pharmacol. 2015;226:357-69. doi: 10.1007/978-3-662-44605-8_19.
Olivry T, Baumer W.

痒みは、皮膚疾患の犬で見られる最も一般的な問題である。犬の掻痒の病因学的な分類はまだ存在しないので、多くの原因はIFSI クラス I (皮膚科) の掻痒に分類される可能性が高い。犬の痒みの最も一般的な原因の1つが、アトピー性皮膚炎と関連する痒みであり、いくつかの抗掻痒介入の効果に関するランダム化コントロール試験によるグレードエビデンスがある。

現時点では、犬アトピー性皮膚炎による掻痒の治療の頼みの綱は、主に局所と/あるいは経口グルココルチコイドと経口シクロスポリンを頼りにしている。1型受容体抗ヒスタミン薬はアトピー性皮膚炎の犬における痒みを軽減するにはその矛盾で悪名高い。新しいJAK-1阻害剤は近年になって犬のアレルギー性掻痒の治療で承認され、効果の開始は著しく早い。犬のモデリングした掻痒はアレルゲン感作(ノミ、ハウスタ?ストマイト)によってもたらされ、痒みの兆候を引き起こす課題は、新規抗掻痒モダリティーのテストと同じように機構的研究の為に使用することが出来る。(Dr.Kawano訳)

■ハウスダストマイトの主要抗原であるDer f1は、犬の表皮角化細胞における炎症誘発性サイトカインとケモカイン遺伝子発現を高める。
House dust mite major allergen Der f 1 enhances proinflammatory cytokine and chemokine gene expression in a cell line of canine epidermal keratinocytes.
Vet Immunol Immunopathol. 2009 Oct 15;131(3-4):298-302. doi: 10.1016/j.vetimm.2009.04.012. Epub 2009 Apr 19.
Maeda S, Maeda S, Shibata S, Chimura N, Fukata T.

ハウスタ?ストマイト (HDM) 抗原は、IgE-介在性過敏症の誘導に関与する最も一般的なアレルゲンである。近年、HDM抗原の皮膚感作がアトピー性皮膚炎(AD)の発展に強調されている:しかし、タ?ニ抗原による犬の角化細胞に対する直接的な刺激はあまり観察されていない。

この研究では、犬の角化細胞株であるCPEKにおけるサイトカインとケモカインの遺伝子発現に対するコナヒョウヒダニの主要抗原であるDer f 1の影響を観察した。

CPEKは恒常的にTNF-alpha, IL-12p35, IL-18, GM-CSF, TGF-beta, IL-8/CXCL8, TARC/CCL17, CTACK/CCL27そして MEC/CCL28のmRNAを発現した。CPEKにおいて観察されたすべてのサイトカインとケモカインにおいて、GM-CSF, IL-8/CXCL8 そしてTNF-alpha mRNAの転写レベルはDer f1の刺激によって有意に増加した。

今回の結果は、Der f 1は、角化細胞からの炎症性サイトカインとケモカイン産生を直接的に増やし、独立して1型過敏症のアレルギー性炎症を惹起するかもしれないことを示している。(Dr.Kawano訳)

■月経前症候群と関連した皮膚疾患は女性ホルモンに対する過敏症と関連した。
Premenstrual syndrome and associated skin diseases related to hypersensitivity to female sex hormones.
J Reprod Med. 2004 Mar;49(3):195-9.
Itsekson A, Lazarov A, Cordoba M, Zeitune M, Abraham D, Seidman DS.

目的: 月経前症候群(PMS)の患者における皮膚疾患と女性ホルモンに対する過敏症を研究すること

研究デザイン: 30人の女性がPMSに関連したアンケートに回答し、婦人科検査と皮膚科検査、血液検査を行った。吉草酸エストラジオール、プロジェステロンそしてプラセボで皮内検査を実施した。脱感作療法は15人の患者で始めた。

結果:10名がPMSと診断し、同時に外陰部の痒み、色素沈着、丘疹そして尋常性座瘡など皮膚疾患と診断した (Aグループ)。10人はPMSと診断したが、1つめのコントロールグループとして皮膚疾患がなかった(Bグループ)。2つめのコントロールグループは10人の健康な女性であった(グループC)。性ホルモンに対する即時型そして遅発型過敏症反応がPMSとPMS関連皮膚疾患の患者AグループとBグループのすべてで観察されたが、健康なグループCの女性ではみられなかった。脱感作はPMS兆候を減少させPMSと関連した皮膚疾患を改善した。

結論: 皮膚疾患はPMSの一部を担うかもしれない。女性ホルモンに対する遅発性過敏症の証明は、再発性皮膚疾患とPMSの患者において明らかな病因メカニズムを見いだすかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎に罹患したそして罹患していないラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーの血清における総IgEとアレルゲン特異的IgEとIgG抗体濃度
Total IgE and allergen-specific IgE and IgG antibody levels in sera of atopic dermatitis affected and non-affected Labrador- and Golden retrievers.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Sep 15;149(1-2):112-8. doi: 10.1016/j.vetimm.2012.05.018. Epub 2012 May 29.
Lauber B, Molitor V, Meury S, Doherr MG, Favrot C, Tengvall K, Bergvall K, Leeb T, Roosje P, Marti E.

犬アトピー性皮膚炎(CAD)は環境アレルゲンに対するIgEとIgG抗体(Ab)の関連するアレルギー性皮膚疾患である。

この研究の目的は、これまでに犬でほとんど調査されていないため、他の要因がアトピー性皮膚炎に罹患したそして罹患していない犬における血清抗体濃度に影響するかどうかを決定することであった。

145頭のアトピー性皮膚炎に罹患したラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーと271頭の非罹患犬のラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーの血清において、ELISAで総IgEそしてアレルゲン特異的IgE濃度そしてDermatophagoides farinae (DF)-特異的IgG1とIgG4を測定した。年齢、犬種、性別、不妊、臨床的CADステータスそしてアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)など多変数ロジスティック回帰分析を実施した。

ゴールデンレトリーバーは、より総IgE(OR=1.87, 95% CI=1.26-2.87, p<0.01)そして特異的IgE濃度が閾値より高くなる頻度がラブラドールレトリーバーより多く、遺伝的要因が犬のIgE濃度に影響することを示唆している。不妊は一般的に低い抗体濃度と関連(OR=0.43-0.65, p<0.05)した。驚いたことに、CADの犬は検査したアレルゲンのいずれに対して高いIgEのための増加したオッズを持っていなかった。DFに対するASITは高いDF特異的IgG1と関連(OR=4.32, 95% CI 1.46-12.8, p<0.01)したが、DF特異的IgG4もしくは減少したIgE濃度とは関連しなかった。更なる研究でCADにおけるアレルゲン特異的IgEとASITにおけるIgG1の役割の理解が必要である。(Dr.Kawano訳)

■IgE-facilitated抗原提示:アレルギーの役割とアレルゲン免疫療法の影響
IgE-facilitated antigen presentation: role in allergy and the influence of allergen immunotherapy. Immunol Allergy Clin North Am. 2006 May;26(2):333-47, viii-ix.
Wilcock LK, Francis JN, Durham SR.

IgE-facilitated抗原提示(FAP) はアレルギー疾患において重要な病因メカニズムであり、潜在的な治療ターゲットを示す。アレルゲン免疫療法は、特に通常の薬物療法に反応がない季節性の花粉症患者にかなり効果的な治療である。アレルゲン免疫療法は、血清で検出できる“阻止”IgG抗体を誘導し、in vitroでIgE-FAPを抑制することが証明されている。

この概説では、免疫療法に対する臨床応答のモニタリングに関して、IgE-FAPやIgE-FAPの為の血清抑制抗体の有効な機能検査の潜在的な価値など主な構成要素を要約する。(Dr.Kawano訳)

■アレルゲン特異的免疫療法のメカニズム:アレルゲンに対する免疫寛容に関する多数の抑制因子
Mechanisms of allergen-specific immunotherapy: multiple suppressor factors at work in immune tolerance to allergens.
J Allergy Clin Immunol. 2014 Mar;133(3):621-31. doi: 10.1016/j.jaci.2013.12.1088.
Akdis M, Akdis CA.

アレルゲン特異的免疫療法(AIT)は、IgE介在性アレルギー疾患の為の脱感作療法として100年以上利用されており、治療の治癒の可能性を示してきた。アレルゲン特異的免疫療法(AIT)の作用機序は肥満細胞と好塩基球のかなり早期の脱感作の誘導:制御性T細胞と制御性B細胞(Breg)の反応の産生:IgEとIgG4の制御:粘膜アレルギー組織における好酸球と肥満細胞の数と活性の減少:そして循環中における好塩基球の活性の減少などが含まれる。

アレルゲン特異的エフェクターTおよびエフェクターB細胞の制御性フェノタイプのゆがみは、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)の経過とアレルゲンに対する正常な免疫応答において重要なイベントである。近年、誘導性IL-10分泌Breg細胞が、エフェクターT細胞の抑制とIgG4アイソタイプ抗体の選択的誘導によってアレルゲンの寛容にも影響していること証明された。アレルゲン特異的調整性TそしてBreg細胞は、炎症性樹状細胞からサイトカインの抑制:エフェクターTH1、TH2、およびTH17細胞の抑制:アレルゲン特異的IgEおよびIgG4の誘導の抑制:そして組織への肥満細胞、好塩基球、好酸球、およびエフェクターT細胞の遊走の抑制など一般的な免疫調節活性を調節する。アレルゲン特異的免疫療法(AIT)の詳細なメカニズムの知識は、アレルギー疾患の予防や治療の設計で重要なだけではなく、自己免疫疾患、臓器移植、慢性感染症、及び癌の治療において用途を見つけるかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■舌下免疫療法(SLIT)と皮下免疫療法(SCIT)の患者の選択
Selection of patients for sublingual immunotherapy (SLIT) versus subcutaneous immunotherapy (SCIT).
Allergy Asthma Proc. 2015 Mar;36(2):100-4. doi: 10.2500/aap.2015.36.3830.
Tabatabaian F, Casale TB.

アレルギー免疫療法は100年以上もアレルギー性疾患の症状の緩和に役立つと利用されている。近年承認された舌下免疫療法の設定では、アレルギー専門医は、臨床現場において舌下免疫療法(SLIT)もしくは皮下免疫療法(SCIT)を使う治療レジュメに直面している。舌下免疫療法(SLIT)と皮下免疫療法(SCIT)は、季節性のアレルギー性鼻結膜炎の治療に有用であることが分かっている。

各治療基準には関連する利点がある。舌下免疫療法(SLIT)は全身性の反応が少なく極めて重大な反応に関する報告やデータはなく、より安全である。アメリカでアレルゲン特異的免疫療法の主要な方法である皮下免疫療法(SCIT)は、わずかにより効果があり、容易に多重感作アレルギー患者の治療を可能にする。この概説は日々臨床患者にどう皮下免疫療法(SCIT)を取り入れるか?そして舌下免疫療法(SLIT)と皮下免疫療法(SCIT)をどう選択するか?に焦点を当てている。(Dr.Kawano訳)

■乳幼児における腸管での牛乳アレルギーの診断に置けるリンパ球刺激試験の有用性
Usefulness of lymphocyte stimulation test for the diagnosis of intestinal cow’s milk allergy in infants.
Int Arch Allergy Immunol. 2012;157(1):58-64. doi: 10.1159/000323896. Epub 2011 Sep 6.
Kimura M, Oh S, Narabayashi S, Taguchi T.

背景: 人工ミルクを与えられている乳幼児は時々消化管牛乳アレルギー(ICMA)へと発展する。牛乳特異的IgE抗体(CM-IgE)濃度は正常なので、リンパ球刺激試験(LST)が消化管牛乳アレルギーの代替的診断として提案されている。この研究では、日本における消化管牛乳アレルギーの患者を多く集め、リンパ球刺激試験の診断的価値を評価した。

方法: 牛乳調製粉乳の摂取後に腸管の症状へと発展し、このフードの除去後に症状が改善した96人の乳幼児が消化管牛乳アレルギー疑いの患者として参加した。牛乳に対するIgE濃度が正常であり、牛乳調製粉乳の食物経口負荷試験(OFCT)において陽性結果が得られた72人の患者は消化管牛乳アレルギーと診断した。牛乳に対するIgE濃度が正常であり、食物経口負荷試験(OFCT)の結果が陰性であった他の10人の乳幼児は非特異的腸管症状(NIS)と診断した。牛乳タンパクに対する細胞介在性免疫の状態はκ-caseinのリンパ球刺激試験で評価した。

結果: 消化管牛乳アレルギーの72人(男子38名、女子34名)の患者において、初発の中央年齢は9日であった。消化管牛乳アレルギー患者の72人中62人(86.1%)はκ-caseinのリンパ球刺激試験で陽性であった。対照的に、10人の非特異的腸管症状(NIS)のたった2人がリンパ球刺激試験で陽性であった。リンパ球刺激試験結果が陽性である発生率は非特異的腸管症状(NIS)群より明らかに消化管牛乳アレルギー群で高かった(p < 0.0001)。この検査のROC曲線下の面積は0.856と高かった。

結論: この研究で、消化管牛乳アレルギーの診断検査としてκ-caseinに対するリンパ球刺激試験は有用であることが強く示唆される。(Dr.Kawano訳)

■アメリカにおける4つのコマーシャルラボからのアレルゲン特異的IgE測定とその結果からの免疫療法の推奨の同意
Agreement between allergen-specific IgE assays and ensuing immunotherapy recommendations from four commercial laboratories in the USA.
Vet Dermatol. 2014 Feb;25(1):15-e6. doi: 10.1111/vde.12104.
Plant JD, Neradelik MB, Polissar NL, Fadok VA, Scott BA.

背景:アメリカにおける犬のアレルゲン特異的IgE検査は、独立した研究所の信頼性監視プログラムを受けない。

仮説/目的: この研究の目的は、アメリカにおける商業的に利用可能な4つの血清IgE測定の診断結果と治療推奨の同意を評価することだった。

方法:10頭のアトピー犬からの反復する血清検体は4つのアレルゲン特異的IgE測定(ACTT(R) , VARL Liquid Gold, ALLERCEPT(R) そしてGreer(R) Aller-g-complete(R))のために提出した。標準、地域のパネルやその後の治療勧告の研究室間の合意は、単に偶然により発生する可能性のある合意を考慮するためにカッパ統計(κ)を用いて分析した。研究室や研究室間の全体的な合意のペアの6比較が、報告された交差反応性と分類に応じてグループ化アレルゲンもグループ化されていないアレルゲンについて分析した。

結果:グループ化されていない、そしてグループ化されたアレルゲンの陽性/陰性の検査結果の全体的な機会補正された同意は、わずかだった(それぞれκ=0.14と0.13)。診断協定(κ=0.36)の最高レベルの実験室でのペアのサブセット解析は、グループ化されていない植物や真菌がわずかに(κ = 0.13)見られたが、グループ化されていないダニに対してかなりの同意(κ = 0.71)が見られた。
治療推奨の全体の同意はわずかだった(κ = 0.11)。しかし、グループ化されていないアレルゲンの治療推奨の85.1%は研究室やその他に独特だった。

結論と臨床重要性:我々の研究は、IgEアッセイの選択は陽性/陰性の結果とその後の治療推奨に大きな影響を与えることが示された。(Dr.Kawano訳)

■アトピー犬における経表皮水分喪失(TEWL)と臨床症状(CADESI-03)との関係の評価
Assessment of the relationship between transepidermal water loss (TEWL) and severity of clinical signs (CADESI-03) in atopic dogs.
Vet Dermatol. 2014 Dec;25(6):503-e83. doi: 10.1111/vde.12150. Epub 2014 Aug 6.
Zaj?c M, Szczepanik MP, Wilko?ek PM, Adamek LR, Pomorski ZJ, Sitkowski W, Go?y?ski MG.

背景: アトピー性皮膚炎(AD)は犬の一般なアレルギー性皮膚疾患である。疾患の重症度の客観的記述は治療介入に対する反応の評価に重要である。臨床症状の重症度を評価する一つの一般的な方法は、CADESI-03である。さらに、皮膚の生物物理学的パラメーターの研究で、経表皮水分喪失(TEWL)の評価も疾患の重症度の確立にも価値が有るかもしれない。

仮説/目的: この研究の目的は、体の10カ所で測定した経表皮水分喪失(TEWL)とCADESI-03との関連を検証することだった。

動物: 26頭のアトピー性皮膚炎の犬(年齢の範囲は1-7歳、 中央年齢は 3歳)

方法: 体の10カ所で測定した。: 腰部、鼠径部、腹部, 趾間、腋窩, 胸側部、前腕の側面、耳介凹表面、頬と鼻梁

結果: 耳介 (r = 0.59)、鼻梁(r = 0.62)そして趾間皮膚(r = 0.47)の経表皮水分喪失(TEWL)と総CADESI-03には陽性関連があった。腋窩 (r = 0.73)、鼠径(r = 0.55)そして趾間皮膚(r = 0.77)の経表皮水分喪失(TEWL)と局所のCADESI-03にも陽性関連があった、

結論と臨床重要性: 結果から、皮膚病変の重症度を評価するために経表皮水分喪失(TEWL)の測定を使うことは可能かもしれないが、陽性関連は検査した10カ所のうちたった5カ所だと示される。(Dr.Kawano訳)

■アトピーの犬におけるジメチンデンとヒドロキシジン/クロルフェニラミンの効果:ランダム化コントロール二重盲検
Efficacy of dimetinden and hydroxyzine/chlorpheniramine in atopic dogs: a randomised, controlled, double-blinded trial.
Vet Rec. 2013 Nov 2;173(17):423. doi: 10.1136/vr.101907. Epub 2013 Oct 10.
Eichenseer M, Johansen C, Mueller RS.

抗ヒスタミン薬は犬のアトピー性皮膚炎の対症療法として一般的に使われる。しかし、臨床効果は大部分は根拠がない。

二重盲目プラセボコントロールクロスオーバー試験において、ジメチンデンおよびクロルフェニラミンとヒドロキシジンの合剤の痒みと病変への効果を19頭の犬で評価した。14日間のウォッシュアウト期間に続いて、製品かプラセボを経口的に14日間内服した。それぞれの期間の前後において、臨床家によってCADESIスコアを、飼い主によって、痒みスコアと一般状態を記録した。ジメチンデンは痒みスコアを有意に(P=0.014)改善したが、CADESIスコアは改善させず (P=0.087)、ヒドロキシジン/クロルフェニラミン合剤はCADESI(P=0.049)も痒み(P=0.05)も有意に改善させた。マレイン酸ジメチンデンでは18頭中12頭、プラセボでは19頭中2頭であったが、ヒドロキシジン/クロルフェニラミン合剤で17頭中10頭は25%以上の痒みの改善が認められた。

抗ヒスタミン剤はアトピーの犬の痒みを減らすことに役立つが、多くの症例においては改善が限定されるため、追加治療が必要かもしれない。(Dr.Kawano訳)

■腸管内クロストリジウムによるTreg細胞の誘導
The induction of Treg cells by gut-indigenous Clostridium.
Curr Opin Immunol. 2012 Aug;24(4):392-7. doi: 10.1016/j.coi.2012.05.007. Epub 2012 Jun 4.
Nagano Y, Itoh K, Honda K.

Foxp3+ CD4+ 細胞は、腸管において豊富に存在する優れた免疫調節性T細胞(Treg)である。最近の研究で、腸管のTregは固有の特徴を持つ胸腺そして胸腺外で発達した細胞からなることを示している。腸管Tregの分画は、腸管の微生物叢を輸送する抗原を認識するT細胞受容体を発現している。腸内細菌叢、特にクロストリジウム種の存在はTregの発達と機能に影響を与える。

これらの腸内細菌により誘発性のTreg細胞は、腸内細菌叢に対する寛容において役割を果たしている可能性が高い。これらの最近の進歩は、T細胞が腸内細菌叢との恒常性を維持する為に腸内でどう育成されているかについて新しい洞察を提供している。(Dr.Kawano訳)

■犬のTh2リンパ球によるIL-31のアレルゲン誘導産生と免疫、皮膚と神経標的細胞の識別
Allergen-induced production of IL-31 by canine Th2 cells and identification of immune, skin, and neuronal target cells.
Vet Immunol Immunopathol. 2014 Jan 15;157(1-2):42-8. doi: 10.1016/j.vetimm.2013.10.017. Epub 2013 Nov 19.
McCandless EE, Rugg CA, Fici GJ, Messamore JE, Aleo MM, Gonzales AJ.

犬のサイトカインIL-31は犬における痒みを産生し、アトピー性皮膚炎の犬で検出される。; しかし特異的な犬の細胞との関連についてはあまり理解されていない。

IL-31は、免疫システムと皮膚と神経システムとの相互関係を調節することによってアレルギー性皮膚疾患の発展に影響するというのが我々の仮説である。今後の研究のゴールは、このサイトカインに反応するかもしれない細胞と同じようにIL-31を産生する細胞を識別することだった。

健常犬とハウスタ?ストマイト(HDM)抗原で感作したビーグルから末梢血単核球(PBMCs)を採取し、ELISpotと定量免疫測定を使って測定したサイトカイン産生の特徴を生体外で評価するために使った。ハウスタ?ストマイト抗原への感作はIL-4蛋白の産生の増加によって特徴付けられるヘルパーT細胞タイプ2(Th2)フェノタイプを誘発した。面白いことに、時間をかけて繰り返す抗原暴露も、IFN-γの増加となった。さらなる評価は、抗原および細菌成分Staphylococcus enterotoxin B(SEB)でTh2分極した細胞の共刺激は、刺激薬単独と比較してIL-31の高いレベルを生成することを示した。末梢血単核球(PBMCs)がT細胞マイトジェンで刺激された時のIL-31の産生は、IL-31のソースとしてT細胞を示唆する。犬の細胞株と組織におけるIL-31受容体α鎖の発現を決定するために定量RT-PCRを用いた。犬の単核球細胞、角化細胞そして後根神経節は、IL-31受容体α鎖mRNAを発現することが示された。

犬アトピー性皮膚炎のような多面的な疾患において、Th2分極と微生物の存在野組み合わせは、免疫細胞、角化細胞、そして直接神経刺激による炎症および掻痒に関与するIL-31の介在する効果を導く。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬の原因となるアレルゲンの感作率:犬のアレルゲン特異的IgEの検出
Sensitization rates of causative allergens in dogs with atopic dermatits: detection of canine allergen-specific IgE.
J Vet Sci. 2014 Jun 20.
Kang MH, Kim HJ, Jang HJ, Park HM.

アレルゲン特異的IgEの血清学的検査は1980年代に一般的に利用されるようになり、それからこれらの検査はアレルギー性皮膚疾患の診断と治療に広く使われている。しかし、陽性反応と疾患との関連は議論の余地がある。
この研究の目的は、アトピー性皮膚炎(AD)の犬における血清アレルギー検査を使った原因となるアレルゲンを観察することだった。

臨床的にアトピー性皮膚炎と診断した犬(n=101)はアレルゲン特異的IgE免疫測定を使って検査した。総92環境アレルゲンおよび食物アレルゲンの中で、ハウスタ?ストとハウスタ?ストマイトが最も一般的なアレルゲンであった。空気中の花粉やカビと関連したいくつかのアレルゲンは陽性反応を示し、それらは気候の変化と関連して増加したアレルゲンと考えられた。犬アトピー性皮膚炎におけるスタフィロコッカスとマラセチアに対する抗体の存在は、この研究で保証された。加えて、食物抗原に対する高い反応(鶏肉、七面鳥、玄米、醸造酵母そして大豆)と低い反応(うさぎ、鹿、アヒルそしてマグロ)は回避試験あるいは抗原制限試験に使われるかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■新しいヤヌスキナーゼ阻害剤のオクラシチニブ(APOQUELR )はアレルギーに関与するサイトカインに活性を持つ
Oclacitinib (APOQUELR ) is a novel Janus kinase inhibitor with activity against cytokines involved in allergy.
J Vet Pharmacol Ther. 2014 Feb 5. doi: 10.1111/jvp.12101. [Epub ahead of print]
Gonzales AJ, Bowman JW, Fici GJ, Zhang M, Mann DW, Mitton-Fry M.

ヤヌスキナーゼ(JAK)酵素は、アレルギーにおいて調整不全となる種々のサイトカインにより活性化する細胞情報伝達経路に関与する。

この研究の目的は、犬のアレルギー性皮膚疾患にかかわるサイトカインの活性を新しいJAK阻害剤オクラシチニブが減らすことができるかどうかを調査することだった。

単離酵素システムとインビトロのヒトあるいは犬細胞モデルを用い、オクラシチニブの有効性と選択性を、細胞内のJAK活性を誘発するJAKファミリーメンバーおよびサイトカインに対して判定した。

オクラシチニブは10-99nmの範囲の50%抑制濃度(IC50’s)でJAKファミリーメンバーを抑制し、38non-JAKキナーゼを抑制しなかった(IC50’s>1000nm)。オクラシチニブは最もJAK1の抑制に効果があった(IC50=10nm)。また、IC50’sが36-249nmの範囲で、アレルギーに関与するJAK1依存サイトカイン、炎症(IL-2、IL-4、IL-6、IL-13)、掻痒(IL-31)の機能も抑制した。オクラシチニブは細胞内のJAK1酵素を活性化しないサイトカインに対しての影響は最小だった(エリスロポエチン、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、IL-12、IL-23;IC50’s>1000nm)。

上記結果は、オクラシチニブがアレルギー、炎症、掻痒に関与するJAK1依存サイトカインを選択的に抑制する標的療法であると証明し、犬のアレルギー性皮膚疾患に関係する臨床症状をオクラシチニブが効果的にコントロールするメカニズムがあることを示唆する。(Sato訳)

■犬の抗原特異皮内試験およびIgE血清学的検査の前の抗アレルギー薬中止時期に対する根拠に基づいたガイドライン
Evidence-based guidelines for anti-allergic drug withdrawal times before allergen-specific intradermal and IgE serological tests in dogs.
Vet Dermatol. April 2013;24(2):225-e49.
Thierry Olivry; Manolis Saridomichelakis; International Committee on Atopic Diseases of Animals (ICADA)

背景:抗アレルギー薬(例えば抗ヒスタミン、グルココルチコイド、シクロスポリン)は、皮膚病変や掻痒を軽減するためアトピー性皮膚炎の犬に投与されることが多い。抗原-特異皮内試験(IDT)および抗原-特異IgE血清学的(ASIS)検査は、犬の感受性のある抗原を調べるのに役立つ。抗アレルギー薬はそれらの検査の結果や解釈に影響する可能性がある。

目的:IDTやASIS検査前に、根拠に基づいた抗アレルギー薬の推奨中止時期を示すこと

方法:国際的会議から3つの引用データベースと抄録を関連する研究に対し検索した。検査の同じような介入と種類を基に研究をグループ分けした。その後、薬剤の各種類の中止時間と試験を研究結果から推定した。

結果:IDTに対する即時反応の評価前の抗ヒスタミン、経口グルココルチコイド、局所/点耳グルココルチコイド、シクロスポリンに対する最適な中止時期は、それぞれ7日、14日、14日、0日だった。経口シクロスポリン、プレドニゾン/プレドニゾロンに対するASIS検査前の薬剤中止に関するエビデンスを提供している研究はなかった。研究がないため、ASIS検査前の推奨中止時期は局所グルココルチコイドと抗ヒスタミンで示されなかった。

臨床的重要性:それらの提唱される中止時期は、2011年終わりに存在するエビデンスによる。他の種、より高用量、異なる剤型および/あるいは検査した薬剤の投与期間、同じカテゴリーの他の薬剤に対して示唆された中止時期を推定するときは注意すべきである。(Sato訳)

■皮膚疾患を伴う犬の肛門周囲の掻痒
Perianal pruritus in dogs with skin disease.
Vet Dermatol. 2014 Jun;25(3):204-e52. doi: 10.1111/vde.12127. Epub 2014 May 5.
Maina E, Galzerano M, Noli C.
背景:肛門周囲の掻痒は、犬において肛門嚢疾患を伴うと報告されているが、健常犬ではそうではない。何人かの著者は、それはアレルギーの典型であると記載しているが、これを支持するエビデンスは限られる。

仮説/OBJECTIVES:目的は、肛門周囲の掻痒と犬アトピー性皮膚炎(CAD)、食物不耐症(ARF)そして犬のその他の皮膚疾患の関連を観察することだった。

動物: 皮膚疾患があり、肛門嚢疾患のない飼い主所有の250頭の犬

方法: 肛門周囲の掻痒の存在の有無、肛門周囲の皮膚表面における肉眼的および細胞学的評価と肛門嚢内容物の肉眼的状況を評価した。臨床的に診断した肛門周囲の掻痒と臨床的そして細胞学的パラメーターで肛門周囲の掻痒と診断した頻度を比較するため、カイ2乗検定とフィッシャーの直接確率計算法を実施した。

結果:肛門周囲の掻痒は犬アトピー性皮膚炎の犬の75頭中39頭で見られ、食物不耐症の57頭の犬の29頭で見られ、他の状況では118頭中24頭で見られた。犬アトピー性皮膚炎と/あるいは食物不耐症がある犬における肛門周囲の掻痒の頻度は、他に診断した犬より明らかに高かった (P < 0.0001)。他の疾患は肛門周囲の掻痒とは有意に関連しなかった。肛門周囲の掻痒は肛門周囲の脱毛、紅斑、擦り傷、苔癬化そして色素沈着などの兆候と有意に関連があった; 細菌あるいは酵母あるいは肛門腺栓塞野存在とは関連がなかった。

結論と臨床重要性: 肛門周囲の掻痒は他の皮膚科疾患より食物不耐症/犬アトピー性皮膚炎がある犬でより頻繁に見られた。これは皮膚疾患があり肛門嚢疾患がない犬における肛門周囲の掻痒を評価した初めての研究である。(Dr.Kawano訳)

■犬アレルギー性皮膚炎の犬の掻痒および関連する皮膚病変のコントロールに対するオクラシチニブの効果と安全性
Efficacy and safety of oclacitinib for the control of pruritus and associated skin lesions in dogs with canine allergic dermatitis.
Vet Dermatol. 2013 Oct;24(5):479-e114. doi: 10.1111/vde.12047. Epub 2013 Jul 5.
Cosgrove SB, Wren JA, Cleaver DM, Martin DD, Walsh KF, Harfst JA, Follis SL, King VL, Boucher JF, Stegemann MR.

オクラシチニブ(Apoquel(R) )は、ヤヌスキナーゼ酵素活性に依存する種々の炎症誘発、アレルギー誘発および痒み誘発サイトカインの機能を抑制する。オクラシチニブは選択的にヤヌスキナーゼ1を抑制する。

仮説/目的:無作為化二重盲検プラセボ-コントロール試験でアレルギー性皮膚炎に関連する掻痒のコントロールに対し、オクラシチニブの安全性と有効性を評価する

方法:中程度から重度の飼育者が評価した掻痒があり、アレルギー性皮膚炎の仮診断がなされた犬(n=436)で研究した。犬には無作為にオクラシチニブ0.4-0.6mg/kg1日2回を経口投与、または同じ賦形剤のプラセボを投与した。10cm視覚的アナログスケール(VAS)を用い、飼育者は第0から第7日の掻痒の重症度を評価し、獣医師は第0と第7日の皮膚炎の重症度を評価した。犬は28日間研究に維持できた。

結果:治療前の飼育者及び獣医師によるVASスコアは2つの処置群で同じだった。オクラシチニブは24時間以内に急速に効果が発現した。各評価日において、オクラシチニブを投与した犬の飼育者による平均掻痒VASスコアは、プラセボのスコアよりも有意に良かった(P<0.0001)。オクラシチニブ投与後、掻痒スコアは7.58から2.59cmに低下した。第7日のオクラシチニブを投与した犬の獣医師による皮膚炎VASスコアも、プラセボのスコアより有意に良かった(P<0.0001)。下痢と嘔吐は同じ頻度で両群から報告された。

結論と臨床意義:この研究において、オクラシチニブは飼育者や獣医師が掻痒および皮膚炎VASスコアのかなりの改善に気付くような、アレルギー性皮膚炎にかかわる掻痒の急速で効果的、安全なコントロールをもたらした。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎におけるシクロスポリンAの維持量と体重の関係
Relationship of Body Weight to Maintenance Cyclosporine A Dose in Canine Atopic Dermatitis.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Mar 21.
Cohen L, Zabel S, Rosychuk RA.

シクロスポリンA(CsA)は、犬のアトピー性皮膚炎に一般的に処方され効果的な治療である。

この研究の目的は、体重とシクロスポリンAの投与量の潜在的な関係を調べることだった。

2000年から2011年までに治療した77症例の犬アトピー性皮膚炎の症例を回顧的に評価した。シクロスポリンA療法の期間は少なくとも16週であった。分析した群は、全体の研究数、シクロスポリンAで治療した研究数、シクロスポリンAとメトクロプラミド両方で治療した研究数だった。小型犬と大型犬の区分は15kgと設定した。分析データは記述的分析、二元配置分散分析、Pearson 相関そしてスチューデントのt検定で解析した。

分析方法に関わらず、シクロスポリンA投与量と体重に有意な違いがなかった。コルチコステロイドの併用、他の薬剤併用そして痒みスコアも研究期間中に分析した。すべての患者のポイント間でシクロスポリンA投与量、コルチコステロイド投与量、医療スコア、痒みスコアは有意に減少したが、これらの変化と体重には有意な関連が認められなかった。

これらの研究所見から異なるシクロスポリンA投与量は体重に基づいて保証されないことを示している。(Dr.Kawano訳)

■飼い主が所有するアトピー性皮膚炎の犬にJAK阻害剤であるオクラシチニブ(Apoquel(R))の効果と安全性に関する盲目ランダム化プラセボコントロール試験
A blinded, randomized, placebo-controlled trial of the efficacy and safety of the Janus kinase inhibitor oclacitinib (Apoquel(R) ) in client-owned dogs with atopic dermatitis.
Vet Dermatol. 2013 Dec;24(6):587-e142. doi: 10.1111/vde.12088.
Cosgrove SB1, Wren JA, Cleaver DM, Walsh KF, Follis SI, King VI, Tena JK, Stegemann MR.

背景: 痒みは犬のアトピー性皮膚炎(AD)の特徴的な臨床症状である。予備試験では選択的JAK阻害剤であるオクラシチニブはアトピー性皮膚炎の犬において痒みと関連した炎症を起こした皮膚病変を減らすことが示されている。

仮説/目的: 目的は、二重盲検ランダム化プラセボコントロール試験でアトピー性皮膚炎のコントロールにオクラシチニブ(Apoquel(R))が効果的であり安全であることを証明することだった。

動物: 18の専門病院の臨床医が慢性的なアトピー性皮膚炎の病歴がある飼い主所有の犬(n = 299)を登録した。

方法: 犬はランダムにオクラシチニブ (0.4-0.6 mg/kg 1日2回14日間そしてその後は1日1回にして112日投与)あるいは、賦形剤を一致させたプラセボ薬を与えた。飼い主は0, 1, 2, 7, 14, 28, 56, 84 そして112日に痒みのVASスコアを評価した。臨床医は0, 14, 28, 56, 84 そして 112にCADESI-02で評価した。

結果: 1, 2, 7, 14 そして 28日において、プラセボを投与した犬の6.5, 9.1, 6.5, 3.9 そして10.4%減少に比べて、オクラシチニブを投与した犬は、飼い主の評価する痒みスコアが基線よりそれぞれ29.5, 42.3, 61.5, 66.7 そして 47.4%減った。14日と28日において、皮膚科医は、プラセボを投与した犬のCADESI-02スコアの1.7%減少と3.6%増加に比べ、オクラシチニブで治療した犬のCADESI-02スコアが48.4%減少したことを記録した。28日後、プラセボで治療したすべての犬の86%以上が非盲検研究へ移行し、グループ間の偏った比較を作り出した。違いは評価したすべてのポイントで明らかだった(P < 0.0001)。

結論と臨床重要性:オクラシチニブはVASスコアとCADESI-02スコアにおいてかなりの改善があり、迅速且つ効果的でありアトピー性皮膚炎の安全な管理を提供してくれる。(Dr.Kawano訳)

■犬の受動喫煙とアトピー性皮膚炎の関連
Association between passive smoking and atopic dermatitis in dogs.
Food Chem Toxicol. 2014 Jan 31;66C:329-333. doi: 10.1016/j.fct.2014.01.015.
Ka D, Marignac G, Desquilbet L, Freyburger L, Hubert B, Garelik D, Perrot S.

アトピー性皮膚炎の発病と関連した皮膚病変の出現は、人とコンパニオンアニマルにおいて様々な環境要因によって影響を受ける。いくつかの研究が受動喫煙と小児アトピー性皮膚炎の発生の間に関連があることを証明している。この関連は私たちの知る限り犬での調査はこれまでに一度もない。

我々は、この研究のために6ヶ月以上で皮膚科およびワクチン相談に来院した161頭の犬が参加した。タバコの喫煙に対する犬の暴露を評価するためアンケートを完了させるために犬の飼い主に質問した。犬のアトピー体質あるいは非アトピー体質はFavrotの診断基準(病歴、臨床検査そして皮膚のマラセチアのための皮膚細胞診)に基づいて評価した。参加した161頭のデータ解析でタバコの受動喫煙(タバコの消費は自宅のエリアで分けた)の高いレベルと犬のアトピー性皮膚炎の存在に有意な関連<OR, 4.38; 95% CI, 1.10-17.44; p=0.03; NNH (有害となる必要な数) 3, 95% CI 2-52>が認められた。アトピー性皮膚炎の有病率は僅かにあったが、品種における素因に有意な関連はない。

タバコの煙に高いレベルでの暴露を受けた犬は、暴露されていない犬に比べてアトピー性皮膚炎のより高いリスクを持つかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■犬アトピー性皮膚炎に対する組み換え型ネコインターフェロンωの経口および皮下療法
Oral and subcutaneous therapy of canine atopic dermatitis with recombinant feline interferon omega.
Cytokine. 2014 Mar;66(1):54-9. doi: 10.1016/j.cyto.2013.12.001. Epub 2014 Jan 14.
Litzlbauer P, Weber K, Mueller RS.

犬アトピー性皮膚炎(CAD)は皮下インターフェロン(IFN)療法をすることもある一般的なアレルギー性皮膚疾患である。組み換え型ネコインターフェロンω(rFeIFN-ω)は、犬アトピー性皮膚炎に有効であると報告されている。長期間治療中に、犬が組み換え型ネコインターフェロンωに対する中和抗体を作るかどうか、経口投与したインターフェロンが犬アトピー性皮膚炎に効果的かどうかは不明である。

この研究の目的は、アトピー犬における組み換え型ネコインターフェロンωに対する抗体の潜在的な生成を評価し、皮下投与療法と経口投与療法を比較することだった。

26頭のアトピー犬はランダムに2つのグループに分けた。はじめのグループ (n=15) には組み換え型ネコインターフェロンω(Virbagen omega, Virbac, Carros, France)を4ヶ月以上の期間で8回皮下注射し、2番目のグループ (n=11) は組み換え型ネコインターフェロンωを毎日経口投与した。この研究の少なくとも2週間前に除外すべき全身性のグルココルチコイドとシクロスポリン以外の併用薬の使用は許可した。抗体検出のための血清サンプルを研究の前後で採取した。0、60、120日において皮膚病辺および痒みをCADESIと痒みスコアを使って評価した。併用薬は記録した。CADESI,痒みスコアそして臨床スコアからなる合計スコアを作成した。抗体測定のため、抗原としてVirbagen omegaを使った間接ELISAを実施した。

0日および120の間の痒みスコア、CADESIおよび総スコアの比較は、両群において改善したが、経口グループのCADESIと総スコアのみ有意に改善した(それぞれ61%, P=0.04 と 36%, P=0.02)。組み換え型ネコインターフェロンωに対する血清抗体はどの犬にも検出されなかった。

この研究において、抗体産生は証明されなかった。それはさらに、より大規模な無作為化対照試験で検証する必要がある経口IFN投与のより良好な有効性を示唆している。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の皮膚病変を評価する簡易化した重症度スケールであるCADESI-4の妥当性
Validation of the Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index (CADESI)-4, a simplified severity scale for assessing skin lesions of atopic dermatitis in dogs.
Vet Dermatol. 2014 Jan 25. doi: 10.1111/vde.12107.
Olivry T, Saridomichelakis M, Nuttall T, Bensignor E, Griffin CE, Hill PB.

背景: 重症度スケールはアトピー性皮膚炎(AD)の犬の治療のため臨床試験において皮膚病辺を採点するために使われている。この時点で、CADESI-3 とCADLIの 2つのスケールが確認されている。しかし、CADESI-3は、評価部位が多項目のため実用的ではない。

仮説/目的:この研究の目的は、より測定が簡素化され迅速になったCADESI-4を発展させ、確認することだった。

方法:体の部位、病変と重症度のグレードが、International Committee on Allergic Diseases of Animals(ICADA)のメンバーによって改訂された。新しくデザインされたCADESI-4は、妥当性(内容、組み立て、基準など)、信頼性(内-間-観察者の信頼性と内部整合性など)、感応性(変化に対する感度)と計測する時間などを検査した。疾患重症度ベンチマークは受信者操作特性方法論を使って選択した。

結果:CADESI-4は、一般的にアトピーの犬において影響を受けた20の身体部位で構成されるため、以前のバージョンに比べて簡素化された。3つの病変(紅斑、タイセンカと脱毛/自擦)は、それぞれの部位において0-3点でスコアした。CADESI-4は満足する妥当性、信頼性そして変化に対する感受性を持ち備えている。平均的に、CADESI-4を観測者が測定する時間はCADESI-3の1/3であった。軽度、中等度および重度のアトピー性皮膚炎の病変のための提案されたベンチマークはそれぞれ10、35および60であった。

結論と臨床重要性: CADESI-4は、以前のバージョンにくらべ観察者が使うのにより簡素化され、迅速になった。ICADA は、臨床試験に参加した犬のアトピー性皮膚炎の皮膚病変のスコア化はCADESI-3に変わってCADESI-4を推奨する。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬における多価不飽和脂肪酸とエッセンシャルオイル配合のスポットオン製剤の効果
The effect of a spot-on formulation containing polyunsaturated fatty acids and essential oils on dogs with atopic dermatitis.
Vet J. 2013 Oct 29. pii: S1090-0233(13)00538-8. doi: 10.1016/j.tvjl.2013.10.024.
Blaskovic M, Rosenkrantz W, Neuber A, Sauter-Louis C, Mueller RS.

免疫学的異常と表皮バリア機能欠損が犬のアトピー性皮膚炎の病因に重要であり、経口多価不飽和脂肪酸(PUFAs)が表皮バリアに影響を与えるかもしれないことが近年の研究で証明されている。

この研究の目的は、犬アトピー性皮膚炎によって惹起された痒みと病変に関して、多価不飽和脂肪酸とエッセンシャルオイル配合のスポットオン製剤の効果を評価することだった。

アトピー性皮膚炎と診断した異なる品種、年齢、性別の飼い主が個人で所有する48頭の犬が、ランダム化二重盲検プラセボコントロール多施臨床治験に参加した。8週にわたり、週1回頚部に多価不飽和脂肪酸とエッセンシャルオイル配合のスポットオン製剤あるいはプラセボで治療した。研究の前後で、CADESI-03と痒みスコアを獣医師と飼い主それぞれでスコア化した。プラセボグループより治療グループでCADESI-03と痒みスコアが明らかにより改善していた(それぞれP=0.011 と P=0.036 )。さらに、より多くの犬がプラセボグループより治療グループにおいて CADESI-03と痒みスコアが少なくとも50%改善していた(それぞれP=0.008 と P=0.070)。副作用はなかった。多価不飽和脂肪酸とエッセンシャルオイル配合の局所製剤は安全な治療であり、犬アトピー性皮膚炎の臨床兆候を改善させるのに効果がある。(Dr.Kawano訳)

■アレルギー疾患におけるプロバイオティクスの臨床効果とメカニズム
Clinical efficacy and mechanism of probiotics in allergic diseases.
Korean J Pediatr. 2013 Sep;56(9):369-376. Epub 2013 Sep 30.
Kim HJ, Kim HY, Lee SY, Seo JH, Lee E, Hong SJ.

遺伝的要因と環境要因の複雑な相互関係が、出生前と生後の発展に影響することによって部分的にアレルギー疾患の発展に影響を与えている。アレルギー疾患の有病率に関して劇的な増加を説明するために、感染に対する早期暴露がアレルギー性疾患を予防するという衛生仮説が提唱されている。

衛生仮説は、微生物の暴露が早期の免疫システムとアレルギー疾患の発展に密接に関わりあっているという微生物仮説に変化している。腸管内細菌叢は粘膜免疫に対する実質的な効果によって、アレルギー疾患に貢献しているかもしれない。出生早期での細菌叢の暴露はTh1/Th2バランスを変えるという所見に基づき、Th1細胞応答を好むロバイオティクスは、アレルギー疾患の予防に有益となるかもしれない。

しかし、アレルギーの予防にプロバイオティクスの有効性を証明する臨床および基礎研究からの証拠が不足している。現在までに、研究では、アレルギー性疾患におけるプロバイオティクスの有用性に矛盾する知見が得られている。異なった初めての補給期間、持続時間、異なる菌株、短い追跡期間そして宿主要因など研究の限界のため、喘息、アレルギー性鼻炎そして食物アレルギーに関してプロバイオティクスの正確な効果を証明することは難しい。しかし、多くの研究は、プロバイオティクスを用いたアレルギー疾患の有意な臨床的改善を示している。人間の免疫、腸バリア機能、腸内細菌叢、および全身免疫の発達の正確な理解がアレルギー疾患に対するプロバイオティクスの効果を理解するために必要とされている。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎で経表皮水分蒸散量と臨床兆候は関連するか?研究の収集
Are transepidermal water loss and clinical signs correlated in canine atopic dermatitis? A compilation of studies.
Vet Dermatol. 2012 Jun;23(3):238-e49. doi: 10.1111/j.1365-3164.2012.01055.x.
Marsella R.

背景: 皮膚の機能障害はアトピー性皮膚炎(AD)に対して決定的に役割を果たしている。経表皮水分蒸散量(TEWL)測定は、人医領域において皮膚バリア機能の間接的な測定方法であり、疾患の重症度と関連する。犬のアトピー性皮膚炎においても皮膚機能障害は存在する。しかし、犬において経表皮水分蒸散量(TEWL)測定の可変性と信頼性が懸念されている。

仮説/目的: この回顧的研究の目的は2つあり、1つは皮膚炎の重症度(Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index (CADESI)の測定によって)と経表皮水分蒸散量の相関性を観察することであり、2つ目は、若齢で増加した経表皮水分蒸散量は、その後の生活において疾患の重症度と関連があるかどうかを評価することだった。

方法: アトピーのビーグルと自然発症アトピー性皮膚炎の犬のデータを分析した。経表皮水分蒸散量は、オープンチャンバーでアトピーのビーグル(n=24)とクローズドのチャンバー(2つの研究, n=14 とn=18)で自然発症アトピー性皮膚炎の犬で測定した。解析はピアソンの積率相関係数を使った。経表皮水分蒸散量は、鼠径、腋窩、前腕屈曲部、耳介部で分析した。それぞれの研究に関して最初は別々に行い、その後は一緒に行い、関連性を調査した。夫々の病変部におけるCADESIと TEWL、すべて測定した病変部の総CADESI と総 TEWL、そして鍵となる病変部の総CADESI とTEWLが含まれた。

結果: アトピーのビーグルにおいて、1歳でのアレルゲン暴露の前後で測定したTEWLは1,3,6歳におけるCADESHIと関連があった。全体的に、低い相関係数が見られた:従って、生物学的に明らかな関連性は証明出来なかった。主な有意な陽性関連は耳介のTEWLと総CADESIの間に見られた。

結論と臨床重要性:TEWLは疾患の重症度と関連しないことが結論付けられた。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎における新しい局所シクロスポリンA製剤の効果
Efficacy of a new topical cyclosporine A formulation in the treatment of atopic dermatitis in dogs.
Vet J. 2013 Aug;197(2):280-5. doi: 10.1016/j.tvjl.2013.02.018. Epub 2013 Apr 4.
Puigdemont A, Brazis P, Ordeix L, Dalmau A, Fuertes E, Olivar A, Perez C, Ravera I.

シクロスポリンA(CsA)による局所治療は近年、吸収性が高く、皮膚で作用する表皮から浸透するシクロスポリンの新しいナノテクノロジー製剤の開発によって可能になった。

この多施設盲検並行ランダム化プラセボコントロール試験の目的は、アトピー性皮膚炎(AD)の犬における新しい局所性シクロスポリン製剤の効果を評価することだった。

非季節性アトピー性皮膚炎の重度および中等度の臨床症状があるが局所的な病変がない犬(n=32)に局所シクロスポリン製剤(17頭)あるいはプラセボ(15頭)がランダムに割り付けられ、6週間1日2回治療した。治療前と治療開始後21日そして45日において、前もって選択した皮膚病変の重症度を皮膚スコアリングシステムによって評価した。飼い主もビジュアルアナログスケールを使って毎週痒みを評価し、治療の有効性は45日後にこれらの変数において少なくとも50%の軽減として定義した。

21日と45日後において、シクロスポリンAで治療した動物において病変の重症度スコアは基線に比べて明らか(P<0.01, 両方の日にち)に低かった。対照的に、プラセボの動物は21日と45日で有意な改善は認められなかった。治験の最後に痒みの効果的な減少を認めた犬の割合は、シクロスポリンAグループとプラセボグループにおいてそれぞれ87.5% と28.6% であった。

これらの結果からシクロスポリンAの局所投与は治療後3週間において中等度から重度のアトピー性皮膚炎の犬における皮膚病変の重症度と痒みの軽減において効果的であることを示している。(Dr.Kawano訳)

■猫の非ノミ誘発性過敏症皮膚炎:臨床兆候、診断と治療
Feline Non-Flea Induced Hypersensitivity Dermatitis: Clinical features, diagnosis and treatment.
J Feline Med Surg. 2013 Sep;15(9):778-84. doi: 10.1177/1098612X13500427.
Favrot C.

臨床関連:過敏症皮膚炎(HD)は猫でしばしば疑診され、ほとんどは昆虫刺咬や食事あるいは環境アレルゲンによって惹起される。非ノミ誘発性過敏症皮膚炎の猫は1つあるいはそれ以上の皮膚反応パターンを伴い頻繁に存在すると報告されている。:粟粒性皮膚炎、好酸球性皮膚炎、自己誘発性対称性脱毛あるいは頭頚部剥離/掻痒。

臨床チャレンジ:しかし、上記のパターンのどれも非ノミ誘発性過敏症皮膚炎に特徴的ではなく、この病気の診断は疾患の除外と同様に治療に対する適切な反応に基づく。罹患した猫の治療アプローチは、免疫調節薬(シクロスポリン、グルココルチコイド、抗ヒスタミン剤)、低アレルギー食そしてアレルゲン特異的免疫療法の使用が含まれる。

科学的根拠: この概説は猫の非ノミ誘発性過敏症皮膚炎の臨床兆候、診断そして治療のアップデートを提供する。それは、非ノミ過敏症皮膚炎に罹患した多数の猫の臨床的症状について記述した最近の大規模研究の所見を述べ、診断を容易にするための基準を提案している。(Dr.Kawano訳)

■犬の培養した角化細胞でTNF-α、IL-1β、あるいはIFN-γによるCCL17とCCL28遺伝子発現の増加
Augmentation of CCL17 and CCL28 gene expression by TNF-alpha, IL-1beta, or IFN-gamma in cultured canine keratinocytes.
Res Vet Sci. 2010 Jun;88(3):422-6. doi: 10.1016/j.rvsc.2009.11.011. Epub 2009 Dec 21.
Shibata S, Maeda S, Maeda S, Chimura N, Kondo N, Fukata T.

角化細胞は、アトピー性皮膚炎(AD)などの皮膚疾患の病因に影響する炎症メディエーターを産生する。特に、CCケモカインである胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)/CCL17と粘膜関連上皮性ケモカイン(MEC)/CCL28は、犬アトピー性皮膚炎におけるリンパ球の病変への浸潤において重要な役割をしていると考えられている。しかし、犬の角化細胞におけるCCL17 と CCL28の転写を調節しているメカニズムに関する報告はこれまでにはない。

この研究において、我々は、培養した角化細胞におけるCCL17とCCL28の転写がTNF-α、IL-1β、あるいはIFN-γによって誘発されるかどうかを観察した。

CCL17のmRNA転写はTNF-αによってのみ増加するが、CCL28のmRNAレベルはTNF-α、 IL-1β、あるいは IFN-γによって増加することが分かった。

この研究で、前炎症性サイトカインはアトピー性皮膚炎の犬の皮膚病変においてCCL17 と CCL28の産生のための重要な誘発因子であることが示唆される。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の予防あるいは治療に対する無作為化対照試験の系統的レビュー:2008-2011アップデート
A systematic review of randomized controlled trials for prevention or treatment of atopic dermatitis in dogs: 2008-2011 update.
Vet Dermatol. February 2013;24(1):97-117.e25-6.
Thierry Olivry; Petra Bizikova

背景:犬におけるアトピー性皮膚炎(AD)の管理は、主に掻痒や皮膚病変の軽減に対する処置に頼っている。

目的:犬のADに対する処置の有効性と安全性を報告する最近の臨床試験の厳密解析を提供する

方法:ADの犬を使用し、2008年から2011年の間に発表、提出あるいは完遂された無作為化対照試験(RCTs)の系統的レビュー。検索は電子データベースを使用し、発表され会議抄録、専門家のメールリストへ多くられた質問を再検討した。アトピー犬の治療を目的とした処置の効果を報告する試験、予防あるいはグルココルチコイド使用を減量させる試験を選択した。

結果:21の無作為化対照試験を含んだ。著者らは犬ADの治療に対する経口グルココルチコイドおよびシクロスポリンの効果および安全性の中質以上のエビデンスを発見した。アセポン酸ヒドロコルチゾンを含む局所グルココルチコイドスプレーの効果の付加的中質エビデンスがあった。注射用組み替えインターフェロン、ブデソニドの洗い流さないコンディショナー、シクロスポリン局所ナノエマルジョン、経口フェキソフェナジンの効果と安全性に対する低質エビデンスを認めた。蛋白喪失性腎症に対するモニタリングを必要とする経口マスチニブの効果の低質エビデンスがあった。最後に、著者らはグルココルチコイド倹約処置として市販食、炎症遅延方法としてグルココルチコイドスプレーの効果の低質エビデンスを明らかにした。非常に低質のエビデンスが他の処置の効果に認めた。

結論と臨床意義:犬のADの治療に対する効果と相対的安全性に対し、経口グルココルチコイド、経口シクロスポリンは依然最も高いエビデンスを有する処置である。(Sato訳)

■皮膚食物有害反応の犬における免疫応答
Immune responses in dogs with cutaneous adverse food reactions.
Vet Q. 2012 Jun;32(2):87-98. doi: 10.1080/01652176.2012.713170. Epub 2012 Aug 7.
Veenhof EZ, Knol EF, Willemse T, Rutten VP.

犬の食物有害反応(AFR) は、免疫病原性など疫学は不明だが、明らかに有害な食物抗原によって反応する。腸管を経て食物抗原は流入するにも関わらず、食物有害反応の犬の大部分において、臨床徴候は皮膚にのみ関連する(CAFR)。
今回のレビューでは、要因は、エフェクターT細胞のタイプへのナイーブT細胞の分化への引き金とアレルギーにおけるこれらのT細胞のタイプの役割との関連を示している。より具体的には、腸管および皮膚におけるアレルギー免疫応答は、例えば抗原提示細胞あるいは抗原誘発性T細胞の皮膚へのホーミングなど皮膚症状の誘発に可能性のある経路と同じくこの論文で議論されている。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬のカルシウム代謝に対してシクロスポリン療法は最小限の変化しか与えない
Ciclosporin therapy is associated with minimal changes in calcium metabolism in dogs with atopic dermatitis.
Vet Dermatol. December 2012;23(6):481-e91.
Marcel Kovalik; Richard J Mellanby; Helen Evans; Jacqueline Berry; Adri H M van den Broek; Keith L Thoday

背景:シクロスポリンは犬のアトピー性皮膚炎の管理に広く使用されている。ヒトでは、シクロスポリン療法は、カルシウム代謝障害およびその結果起こる骨障害に関連付けられている。

目的:この研究の目的は、犬に認められた投与量(5mg/kg)で1日1回のシクロスポリン投与を6週間行った前後で、カルシウムホメオスタシスを評価することだった。

動物:自然発症のアトピー性皮膚炎の飼育犬16頭

方法:カルシウム、リン、クレアチニン、25-ヒドロキシビタミンD、1,25-ジヒドロキシビタミンDの血清濃度およびカルシウムイオンと上皮小体ホルモン(PTH)の血漿濃度と共に、カルシウムとリンの尿分画の排泄を測定した。皮膚病変の拡がりは、研究の前と終了時にCADESI-03とエジンバラ掻痒スケールによる掻痒の程度によりスコア化した。

結果:研究終了時に全ての犬でCADESI-03とエジンバラ掻痒スケールスコアは十分に減少した。血漿PTH濃度はシクロスポリン治療後に有意に増加した(P=0.02)が、他の全ての生化学パラメーターは最初の値と有意差がなかった。PTHの増加はほとんどの症例において軽度で、参照値以上のPTH濃度を示した犬の比率は、治療後に有意な違いはなかった。

結論と臨床意義:シクロスポリンは、認可されたおよび臨床的に有効な投与量でアトピー性皮膚の犬に6週間使用した時、カルシウム代謝に対して最小限の影響しか及ぼさなかったことを示す。(Sato訳)

■アトピー性皮膚炎-病態生理学と管理に関する最近の見識
[Atopic dermatitis – current insights into path physiology and management]. Ther Umsch. 2010 Apr;67(4):175-85. doi: 10.1024/0040-5930/a000031.
Schmid-Grendelmeier P, Ballmer-Weber BK.

アトピー湿疹(AE)は遺伝状況、変化した皮膚構造、免疫学的異常、心理学的そして環境要因、その他など多因子的な皮膚疾患である。アトピー湿疹には主に呼吸器疾患への発展(“アトピーマーチ”)が懸念される異なる予後のIgE関連性タイプ((“獲得型アトピー湿疹”)とIgE非関連性タイプ(“自然免疫型アトピー湿疹”)の2つのサブタイプがある。抗原の役割は変化する:早期の幼児期において、食物抗原が役割を果たし、青年期そして成人期においてダニ抗原と細菌抗原がより関連するようになる。

近年、フィラグリンがアトピー湿疹の主要遺伝子であることが証明された。変化した皮膚構造および抗菌ペプチドの欠乏は、黄色ブドウ球菌のコロニー形成に好都合である;超抗原活性を伴う腸毒素はT細胞とマクロファージの活性化を刺激する。マラセチアに対する感作も、ほとんどアトピー湿疹のみの患者において起こる。

これまでのところ、アトピー湿疹の皮膚病変は、皮膚に炎症反応を誘導するTリンパ球、樹状細胞、マクロファージ、角化細胞、肥満細胞そして好酸球の活性化を備えたケモカインと炎症誘発性サイトカインの局所組織での発現によって編成される。

治療の視点から見て、基礎的な治療として皮膚軟化剤を使用する賢明なアプローチが推奨される。中等度の現代の局所コルチコステロイドは、1日1回で適用し、1週間に数回の適用は中等度の副作用がある効果的な抗炎症療法を提供する。話題の免疫調節薬(タクロリムスとピメクロリムス)は、追加で本質的にアトピー湿疹の治療を改善した。無症候期間のプロアクティブ治療アプローチは、増悪と全体の薬物使用を減らすかもしれない。光線療法と湿潤ドレッシング療法はより重篤な型において共に効果的で安全な付加ツールである。一般的な重篤な型にとってシクロスポリンAなどの全身性薬物はとても有用である。様々な生物製剤そして抗掻痒性物質は、臨床試験中であり、将来的に改善した治療を与えてくれるかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■浸潤性リンパ球壁性毛包炎:アレルギー性皮膚疾患の罹患した猫の皮膚生検材料における組織病理学的反応パターン
Infiltrative lymphocytic mural folliculitis: a histopathological reaction pattern in skin-biopsy specimens from cats with allergic skin disease.
J Feline Med Surg. 2010 Feb;12(2):80-5. doi: 10.1016/j.jfms.2009.05.015. Epub 2009 Jun 24.
Rosenberg AS, Scott DW, Erb HN, McDonough SP.

この研究は、様々な炎症性皮膚疾患の猫354頭と正常な皮膚をした猫33頭からの皮膚生検材料において浸潤性リンパ球壁性毛包炎(ILMF)の有病率を決定するために実施された。

評価した皮膚病のうち33/47で浸潤性リンパ球壁性毛包炎は見られたが、アレルギー性皮膚疾患中の浸潤性リンパ球壁性毛包炎の有病率(116/172猫; 67%)は非アレルギー性皮膚疾患の有病率(61/182 猫; 33%)より有意に高かった。アレルギー性皮膚疾患の猫は非アレルギー性皮膚疾患の猫が浸潤性リンパ球壁性毛包炎を持っている見込みより4.1倍高かった。浸潤性リンパ球壁性毛包炎は正常な皮膚組織のどこにも観察されなかった。(Dr.Kawano訳)

■アレルギー性の猫における掻痒の導入および維持治療に対するメチルプレドニゾロンおよびトリアムシノロンの評価:二重盲検無作為前向き研究
Evaluation of methylprednisolone and triamcinolone for the induction and maintenance treatment of pruritus in allergic cats: a double-blinded, randomized, prospective study.
Vet Dermatol. October 2012;23(5):387-e72.
Eva C Ganz; Craig E Griffin; Deborah A Keys; Tami A Flatgard

背景:猫のアレルギー性皮膚炎に関係する掻痒のコントロールで、経口トリアムシノロン(T)およびメチルプレドニゾロン(M)の種々の薬用量が推奨されている。

目的:1つ目は猫アレルギー性皮膚炎に関係する掻痒の寛解を導入するのに必要なメチルプレドニゾロン(Pfizer, New York, NY, USA)とトリアムシノロン(Boehringer Ingelheim Vetmedica, Inc., St Joseph, MO, USA)の有効薬用量を判定することだった。
2つ目はいくつかの異なる隔日維持薬用量の有効性を比較することだった。
3つ目は検査異常が有効薬用量で発生するかどうかを見極めることだった。

動物:32頭のオーナー所有のアレルギー性の猫をMあるいはT群に無作為に振り分けた。

方法:オーナーに毎週掻痒スコアと行動学的変化を報告してもらった。寛解は掻痒スコアが2/10未満(掻痒は0が最小、10が最大)と定義した。血清生化学、CBC、フルクトサミン、尿検査を0日目と7-14日の導入期間終了時、研究完了時に評価した。

結果:導入に必要な1日1回の平均薬用量はMで1.41mg/kg、Tで0.18mg/kgだった。隔日維持平均薬用量はMで0.54mg/kg、Tで0.08mg/kgだった。基線から研究完了時の両群において、統計学的に有意な好酸球の減少とフルクトサミンの増加を認めた。どの症例においても、フルクトサミン濃度が参照値を超えることはなかった。

結論:それらの結果はトリアムシノロンがメチルプレドニゾロンの約7倍強く、アレルギー性の猫の掻痒のコントロールでそれらの薬用量は効果的で、よく許容することを示唆する。(Sato訳)

■ハウスダストマイト過敏症の犬のパッチテストのための新規皮膚送達システムの検証
Validation of a novel epicutaneous delivery system for patch testing of house dust mite-hypersensitive dogs.
Vet Dermatol. 2012 Dec;23(6):525-e106. doi: 10.1111/j.1365-3164.2012.01111.x. Epub 2012 Oct 11.
Olivry T, Linder KE, Paps JS, Bizikova P, Dunston S, Donne N, Mondoulet L.

背景-アトピー性皮膚炎に罹患した犬と人において、食物抗原と環境アレルゲンに対する細胞性過敏症の評価ためにアレルゲンのパッチテストが使われている。バイアスキンは、免疫細胞による表皮でのアレルゲンの捕獲を増強した新規アレルゲン皮膚送達システムである。

目的-ダニアレルゲンに対する過敏症の犬における、バイアスキンとフィンチャンバーパッチテストの比較

方法-ダニに対して過敏反応を示す6頭のアトピー性皮膚炎の犬(マルチーズとビーグルの雑種)の胸部皮膚に空のコントロールまたはコナヒョウヒダニを配合したバイアスキンあるいはフィンチャンバーパッチを貼った。病変をパッチテストから49、72時間後に類別し、72時間後には皮膚生検材料を採材した。好酸球やTリンパ球の浸潤、炎症所見を顕微鏡下でスコア化した。

結果-6ヵ所のバイアスキン適用部位のうち5ヶ所と、6ヵ所のフィンチャンバーパッチテスト適用部位のうち4ヶ所で、肉眼的なパッチテストの陽性反応が見られた。好酸球とCD3Tリンパ球の真皮スコアと同じように顕微鏡的表皮炎症と真皮炎症の中央値は、フィンチャンバーよりバイアスキンで採取した切片において常により高かった。空のコントロールパッチに比べてダニアレルゲンを配合したバイアスキンを貼った後のほうが、顕微鏡的炎症スコアは有意により高かった。しかし、これはブランクのコントロールチャンバーと比較してダニアレルゲンを配合したフィンチャンバーを貼った後は見られなかった。バイアスキンを使って得られたスコアは、フィンチャンバーを使って得られたスコアとは有意な違いは見られなかった。肉眼的スコアと顕微鏡的スコアに有意な関連性があった。

結論と臨床重要性-ダニアレルギーの犬において、バイアスキン皮膚送達システムは、現行のフィンチャンバーパッチテストを使った場合に比べてアレルゲン特異的炎症をより強く誘発すると思われる。結果的に、バイアスキンパッチは食物アレルゲンと環境アレルゲンに対する細胞性過敏症のスクリーニングのための良い代替手段となるかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎に対する治療介入のオーナーの評価:長期後ろ向き分析
Owner assessment of therapeutic interventions for canine atopic dermatitis: a long-term retrospective analysis.
Vet Dermatol. June 2012;23(3):228-e47.
Darin L Dell; Craig E Griffin; Lori A Thompson; Joel D Griffies

背景:犬のアトピー性皮膚炎は獣医療で診断されることが多い;しかし犬のアトピー性皮膚炎の長期予後は系統的様式で評価されていない。

仮説/目的:5年、10年の間隔で2群の犬のアトピー性皮膚炎に対し、一般的に使用される治療の相対的効果を比較すること

動物:アメリカの個人獣医皮膚科診療で所有する医療記録データベースで確認された犬。

方法:オーナーにはインターネットで4部構成の28の質問に答えてもらった。1つセクション全体を答えていれば調査に含めた。各質問は他の質問の答えとは切り離して答えてもらった。

結果:いくらかの回答者は全ての質問に答えていなかった。同様の質問に矛盾した回答を行った回答者もいた。合計136人のオーナーが調査を完了し、10年から39頭、5年から97頭の犬がいた。135人の回答者のうち85人は、調査時にいくつかのアトピー性皮膚炎に対する治療を受けていると答えた。90人の回答者のうち30人(33.3%)は、彼らの犬は食餌試験中に改善したと答えた。5頭の犬は研究の臨床的治癒の定義に合致した。それら5頭の犬はアレルゲン特異免疫療法で治療していた。

結論と臨床意義:この研究では、オーナーは犬のアトピー性皮膚炎に対し、抗ヒスタミン剤が多様式の治療の有効な部分になりえると信じていることが明らかとなった。また結果は、食餌変更がある程度の犬に有益であることも示した。さらにアレルゲン特異免疫療法はアトピー性皮膚炎の本当の臨床寛解に誘導する唯一の治療だった。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎におけるケラチン、インボルクリンそしてフィラグリン遺伝子発現の変化
Alterations of keratins, involucrin and filaggrin gene expression in canine atopic dermatitis.
Res Vet Sci. 2012 Dec;93(3):1287-92. doi: 10.1016/j.rvsc.2012.06.005. Epub 2012 Jul 9.
Theerawatanasirikul S, Sailasuta A, Thanawongnuwech R, Suriyaphol G.

犬アトピー性皮膚炎(CAD)は、一般的な犬のアレルギー性皮膚炎であり、欠損した表皮バリアと関連する。

この研究では、我々は定量的RT-PCR法で犬アトピー性皮膚炎における皮膚角化細胞の増殖と分化の変化を観察した。 角質肥厚膜タンパク質であるインボルクリン (IVL) とフィラグリン(FLG)の遺伝子発現と共に、増殖し、分化した角化細胞のマーカーであるケラチン(KRT)の遺伝子発現を評価した。

犬アトピー性皮膚炎の病変部と非病変部の両方におけるKRT5とKRT17のアップレギュレーションが観察された(p<0.05)が、KRT2e、インボルクリン (IVL) とフィラグリン(FLG)の遺伝子発現は病変のある犬アトピー性皮膚炎の皮膚だけで明らかに(p<0.05)増加していた。さらに、犬アトピー性皮膚炎においてKRT5, KRT14, KRT17そしてインボルクリン (IVL)の発現レベルは強く相関した。

結論として、インボルクリン (IVL)とフィラグリン(FLG)同様に調査したケラチンの大部分の発現は、増殖したケラチンの間で密接な関係を持って犬アトピー性皮膚炎において増加する。これはKRTやインボルクリン (IVL)遺伝子と犬アトピー性皮膚炎の関係に関する最初の報告である。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎に罹患した、そして罹患していないラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーの血清における総IgE値とアレルゲン特異的IgEとIgG抗体濃度
Total IgE and allergen-specific IgE and IgG antibody levels in sera of atopic dermatitis affected and non-affected Labrador- and Golden retrievers.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Sep 15;149(1-2):112-8. doi: 10.1016/j.vetimm.2012.05.018. Epub 2012 May 29.
Lauber B, Molitor V, Meury S, Doherr MG, Favrot C, Tengvall K, Bergvall K, Leeb T, Roosje P, Marti E.

犬アトピー性皮膚炎(CAD)は、環境アレルゲンに対してIgE抗体とIgG抗体(Ab)が関連したアレルギー性皮膚疾患である。

この研究の目的は、これまでに犬であまり調査されていないため、犬アトピー性皮膚炎罹患犬そして非罹患犬において、他にどんな要因が血清抗体濃度に影響を与えるのかを決定することだった。

145頭の犬アトピー性皮膚炎罹患ラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバー、271頭の非罹患ラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーの血清についてELISAで、総IgE濃度とアレルゲン特異的IgE濃度とDermatophagoides farinae (DF)特異的IgG1濃度とIgG4濃度を測定した。年齢、品種、性別、去勢、臨床的犬アトピー性皮膚炎ステータスそしてアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)などの要因を含んだ多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

ゴールデンレトリーバーは、ラブラドールレトリーバーより閾値を上回る総IgE濃度と特異的IgE濃度がより頻繁(OR=1.87, 95% CI=1.26-2.87, p<0.01)に見られ、遺伝的要因が犬のIgE濃度に影響を与えることを示唆している。去勢は一般的に低い抗体濃度と関連(OR=0.43-0.65, p<0.05)した。驚くべきことに、犬アトピー性皮膚炎に罹患した犬は、検査したアレルゲンのいくつかに対して高いIgEを示す見込みが増えていることはなかった。DFに対するアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)は、高いDF特異的IgG1濃度と関連(OR=4.32, 95% CI 1.46-12.8, p<0.01)したが、DF特異的IgG4濃度あるいは減少したIgE濃度とは関連しなかった。

犬アトピー性皮膚炎におけるアレルゲン特異的IgE濃度とアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)におけるIgG1濃度の役割を理解するためには、さらなる研究が必要である。(Dr.Kawano訳)

■181頭の痒みのある犬の食物不耐症の診断における自家製そして鶏肉加水分解食を使った症例の回顧的分析
A retrospective analysis of case series using home-prepared and chicken hydrolysate diets in the diagnosis of adverse food reactions in 181 pruritic dogs.
Vet Dermatol. 2006 Aug;17(4):273-9.
Loeffler A, Soares-Magalhaes R, Bond R, Lloyd DH.

この研究の目的は、犬の食物不耐症(AFR)の診断において、自家製食そして鶏肉加水分解食を比較することだった。72頭の犬に自家製食を与え、109頭の犬に加水分解食を与えた。飼い主は、プレゼンテーションで食事のタイプを選んだ。また、自家製食の食材は、それぞれの犬の食事歴に依存して選択した。治験期間中に外部寄生虫感染そして微生物感染症は治療した。食事開始前、治験6週目そしてもともと食べていた食事の暴露後において、皮膚症状と胃腸症状そして痒みスコアを記録した。治験期間中に痒みが解消し、食事の暴露で再発した場合に食物不耐症と診断した。

ドロップアウト率は自家製食ではより低かったが、統計的には有意差(18.1%自家製食; 24.7%加水分解食, P=0.377)はなかった。自家製食を使った犬の10頭(17%)そして加水分解食を与えた犬の15頭(18.3%)が食物不耐症単独であると診断した。胃腸症状は食物不耐症がない犬より食物不耐症がある犬でより頻繁であった (P=0.001)。別の自家製食グループの11頭(18.6%)と加水分解食グループの20頭(24.4%)は、主にアトピーなど他の痒みを示す疾患に併発して食物不耐症があった。2つのグループにおける食物不耐症の診断の似たような頻度(P=0.837 AFR; P=0.416 併発AFR)から、鶏肉加水分解食は犬の食物不耐症の診断において自家製食と価値ある代替になるかもしれないことを示している。前向き交差研究はこれらの所見を確認するために保障される。(Dr.Kawano訳)

■人の食物アレルギーにおける経口耐性誘導療法
Oral tolerance induction for human food allergy.
Inflamm Allergy Drug Targets. 2012 Apr;11(2):131-42.
Noh G, Lee JH.

食物アレルギーはIgE介在性と非IgE介在性のタイプがある。食物アレルギー耐性誘導療法(TIFA)という名前の免疫療法が成功した論文の数は増加しており、食物アレルギーにおいて意味のある肯定的そして根治的な治療のために希望をもたらしている。

NFAのための食物アレルギー耐性誘導療法(TIFA)における臨床経過の治療的特徴は、IFAのための食物アレルギー耐性誘導療法(TIFA)とは異なる。IL-10, TGF-β そして IFN-γ そして Treg や Bregのような調節性細胞などのサイトカインは免疫寛容に影響する。IFN-γは免疫調整性生物製剤として食物アレルギーの耐性誘導に使われている。IgE介在性と非IgE介在性食物アレルギーの確定的な区別は、診断的そして治療的な目的において絶対的に不可欠である。IFN-γを使った独自の特異的経口耐性誘導は、IFN-γなしで行う伝統的な特異的経口耐性誘導に比べより効果的である。特に、IFN-γはNFAの寛容誘導に絶対的に不可欠である。この概説は、食物アレルギーの経口耐性誘導における概念的な免疫学的背景と臨床的特徴に関して強調しアップデートする。(Dr.Kawano訳)

■犬アトピー性皮膚炎における血漿と皮膚のビタミンE濃度
Plasma and skin vitamin E concentrations in canine atopic dermatitis.
Vet Q. 2013 Jan 17.
Plevnik Kapun A, Salobir J, Levart A, Tav?ar Kalcher G, Nemec Svete A, Kotnik T.

背景 人のアトピー性皮膚炎においてビタミンEの恒常性の変化が証明されている。犬アトピー性皮膚炎の場合の血漿と皮膚のビタミンE濃度についての情報はない。

目的 アトピーの犬の血漿と皮膚のビタミンE濃度を決定すること

動物と方法 15頭のアトピーの犬の血漿のビタミンE濃度と皮膚の生検を、アトピー性皮膚炎の範囲と重症度指数(CADESI-03)スコアと関連づけ、17頭の健常犬と比較した。測定したパラメータの中で2群間の統計学的に有意な差をノンパラメトリックマンホイットニーのU検定によって決定し、スピエアマンの順位検定によってCADESI-03スコアとビタミンE濃度の相関を評価した。P<0.05を有意であるとした。

結果 ビタミンEの血漿濃度は、アトピーの犬において健常犬より有意に低く、中央値はそれぞれ29.8および52.9μmol/lであった。皮膚のビタミンE値は、患者と健常において有意差はなかった。アトピーの犬の皮膚ビタミンEの中央値の濃度は、健常犬よりも高かった。CADESI-3スコアと血漿ビタミンEや皮膚のビタミンE濃度の間に有意な相関はなかった。

結論 健常犬よりもアトピーの犬において血漿ビタミンE濃度が有意に低下していたことは、CADにおいてビタミンEの恒常性が変化していることを示唆している。

臨床的意義 CADに対するビタミンEの投与についてはさらなる検討が必要である。(Dr.Taku訳)

■食物アレルギーの臨床スペクトル:包括的な概説
Clinical Spectrum of Food Allergies: a Comprehensive Review.
Clin Rev Allergy Immunol. 2012 Nov 16.
Ho MH, Wong WH, Chang C.

食物アレルギーは、食物蛋白に対する悪影響のある免疫反応あるいは過敏な免疫反応と関連した食物不耐症の形と定義されている。二重盲検プラセボコントロール食事暴露によっても再現できる。食物に対する反応はアレルギーではなく不耐症であるという多くの報告がある。食物アレルギーはしばしば症状群として臨床家に現れる。

この概説は、食物アレルギーの様々な形の臨床スペクトルと徴候にフォーカスをしている。臨床症状とアレルギー検査によると、3つのタイプの食物アレルギーがある:IgE介在性、混合型(IgE/非-IgE)、そして非-IgE介在性(細胞性、遅延型過敏症)。幼児期の食物アレルギーの最近の進展で、食物アレルギーの遅延型-非IgE介在性徴候のスペクトルの増加した認識が強調されている。乳児期の食物アレルギーの一般的な徴候はアトピー性湿疹、乳児疝痛そして胃食道逆流症がある。これらの臨床所見は食物過敏症と頻繁に関連し、除去食に反応する。非IgE介在性食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎から食物蛋白誘発性腸炎まで、そして好酸球性食道炎からセリアック病まで広い範囲に及んでいる。子供の最も一般的な食物アレルギーは、牛乳、卵、大豆、小麦、ピーナッツ、ナッツ、魚そして、甲殻類である。
牛乳と卵アレルギーは通常成長とともに脱するが、ピーナッツとナッツアレルギーは残る傾向がある。乳児期の食物アレルギーの有病率は増加しており、乳児の15-20%以上に及ぶ。子供の食物アレルギーの予防と治療において公衆衛生のアプローチに対する問い合わせが驚くほど増加している。(Dr.Kawano訳)

■子供の卵アレルギーの経口免疫療法による治療
Oral immunotherapy for treatment of egg allergy in children.
N Engl J Med. July 2012;367(3):233-43.
A Wesley Burks; Stacie M Jones; Robert A Wood; David M Fleischer; Scott H Sicherer; Robert W Lindblad; Donald Stablein; Alice K Henning; Brian P Vickery; Andrew H Liu; Amy M Scurlock; Wayne G Shreffler; Marshall Plaut; Hugh A Sampson; Consortium of Food Allergy Research (CoFAR)

背景:卵アレルギーに対し、食事で避けることのみが現在認められている唯一の治療である。著者らは卵アレルギーの子供の治療に対し、エッグホワイトパウダーを使用する経口免疫療法を評価した。

方法:この二重盲検無作為プラセボ-対照試験において、5-11歳の55人の卵アレルギーの子供に対し、経口免疫療法(40人)あるいはプラセボ(15人)の治療を行った。初回投与量-増加、増強、維持段階の後、10か月目、22か月目にエッグホワイトパウダーで経口食物暴露試験を行った。22か月目に暴露試験をパスした子供は経口免疫療法を中止し、4-6週間全ての卵の摂食を避けた。24か月目、それらの子供に無応答性維持の検査のため、エッグホワイトパウダーと調理した卵による経口食物暴露試験を行った。24か月目にこの試験をパスした子供は、自由に卵を食事に混ぜて食べられるようにし、30か月、36か月目に無応答性維持の継続を評価した。

結果:10か月の治療後、プラセボ治療の子供は0人、経口免疫療法の子供の55%が経口食物暴露試験をパスし、脱感作と考えられた;22か月後、経口免疫療法の子供の75%が脱感作した。経口免疫療法において28%(40人中11人)が24か月目の経口食物暴露試験をパスし、無応答性を継続していると考えられた。30か月、36か月目に、24か月目に経口食物暴露試験をパスした全ての子供は卵を食べた。測定した免疫マーカーのうち、皮膚プリックテストにおける丘疹の小さな径および卵特異IgG4抗体濃度上昇は、24か月目の経口食物暴露試験のパスに関係した。

結論:これらの結果は、経口免疫療法は卵アレルギーの子供を高い比率で脱感作でき、臨床的に有意な部分集団で無応答性の継続を誘発することを示す。(Sato訳)

■猫の掻痒症の臨床的特徴と痒みの原因
Clinical characteristics and causes of pruritus in cats: a multicentre study on feline hypersensitivity-associated dermatoses.
Vet Dermatol. 2011 Oct;22(5):406-13.
Hobi S, Linek M, Marignac G, Olivry T, Beco L, Nett C, Fontaine J, Roosje P, Bergvall K, Belova S, Koebrich S, Pin D, Kovalik M, Meury S, Wilhelm S, Favrot C.

過敏症皮膚炎 (HD)は猫でよく疑われる。過敏症皮膚炎の猫は1つあるいはそれ以上の以下のパターンが見られると報告されている:粟粒皮膚炎、好酸球性皮膚炎、自己誘発性左右対称性脱毛あるいは頭部と/あるいは頚部擦過傷。猫の過敏症皮膚炎に関するこれまでの報告は、動物の数が少なく、場所的に限られた地域でなされたもの、あるいは他の痒みの原因とこれらの状況を比較していないものだった。

この研究のゴールは、異なる地域から集めた痒みのある猫の大規模グループからシグナルメント、臨床的、ラボラトリー的、治療的特徴を網羅した72のパラメータを分析する事だった。502頭の猫において、以下のように診断した:ノミ過敏症皮膚炎(症例の29%), 食物過敏症皮膚炎(12%) 非ノミ/非食事性過敏症皮膚炎(20%)そして痒みが特徴である他の疾患 (24%).過敏症皮膚炎と一致する兆候だが、除去食試験を完全に終えなかった猫(症例の15%)はさらに分析できなかった。非ノミ過敏症皮膚炎のほとんどの猫は、4つの典型的な病変パターンの1つあるいはそれ以上と適合する徴候があった。しかし、これらのパターンのどれも特異的な診断の特徴は見出せなかった。食物過敏症皮膚炎と非ノミ/非食事過敏症皮膚炎は臨床的に区別がつけられなかった。ヤングアダルト、純血種そして雌猫は非ノミ/非食事過敏症皮膚炎により起こりやすいように見られた。多くの診断は同じような病変パターンで下されたので、徹底的な精査が特異的な診断の確立には必要である。(Dr.Kawano訳)

■猫の食物アレルギー:除去による診断
Food allergy in the cat: a diagnosis by elimination.
J Feline Med Surg. 2010 Nov;12(11):861-6.
Bryan J, Frank LA.

臨床関連: 食物アレルギーは猫において非季節性皮膚疾患で掻痒の原因として認識されているが、正確な発生率はよくわかっていない。猫の食物アレルギーは、胃腸系、神経系、呼吸器系そして行動学的要素とも関連する。

患者のグループ: 食物アレルギーを発症する品種、性別あるいは年齢の素因はないが、シャムとその雑種はリスクが増加するかもしれないというエビデンスがいくつかある。

臨床検証: 食物アレルギーは掻痒部の分布に基づいて単純に診断できず、粟粒性皮膚炎、好酸球性肉芽腫症候群そして脱毛など罹患した猫において観察される多くの皮膚反応パターンは、ノミアレルギーやアトピーの猫でも見られる;いくらかの症例においてアレルギーコンディションが併発しているかもしれない。食物アレルギーを確定診断する唯一の方法は、除去食試験を通じて原因となる食物成分を特定することである。しかし、嗜好性や飼い主のコンプライアンスが問題となる;特に、多くの飼い主は、疑わしい食物アレルギーを確定するのに必要な誘発試験を実施したがらない。食物アレルギーの存在が確認されている猫については、その後、患者の生活の残りのために適切なメンテナンス食事を供給する必要があります。

科学的根拠: 最近の文献では、食物アレルギーの猫において、臨床像、治療に対する反応と結果などにおいて著しい変動性があることが明らかになっている。この文献では、パブリッシュされた文献を概説し、猫の食物アレルギーに臨床的に関連する知見を強調する。(Dr.Kawano訳)

■猫のアレルギー性皮膚炎の治療に対するシクロスポリンの効果的な投与量を評価するためのランダム化二重盲検プラセボコントロール試験
A randomized double-blinded placebo-controlled study to evaluate an effective ciclosporin dose for the treatment of feline hypersensitivity dermatitis.
Vet Dermatol. 2012 Oct;23(5):440-e84.
King S, Favrot C, Messinger L, Nuttall T, Steffan J, Forster S, Seewald W.

背景:アレルギー性皮膚炎(HD)は猫で頻繁に疑われるが、パブリッシュされた論文において安全で効果的な治療に関する臨床研究は少ない。

目的:猫のアレルギー性皮膚炎の治療におけるシクロスポリンの安全且つ効果的な投与量を確立すること。

動物:猫のアレルギー性皮膚炎に罹患した飼い主が所有する100頭の猫

方法:6週間にわたり、シクロスポリン7mg/kg(33頭)あるいは2.5mg/kg(32頭)1日1回あるいはプラセボ(35頭)のいずれかでランダムに猫を割り当てた二重盲検研究

結果:7mg/kg 1日1回でシクロスポリンを与えた猫の総病変スコアは、研究終了時において、2.5mg/kg(P=0.0047)あるいはプラセボ(P=0.0003)より明からに低かった。個々の総病変スコアは、2.5mg/kgグループでは47%、プラセボグループでは23%と比べて(P=0.0006)、7mg/kgグループでは70%の猫に50%以上の改善が見られた。研究者の改善に関するグローバルな評価では、シクロスポリンを2.5mg/kgで与えた猫の47%、プラセボを与えた23%に比べて、シクロスポリンを7mg/kgで与えた猫の61%が”エクセレント“あるいは”グッド“であった。研究者の痒みスコアに関する改善は、2.5mg/kgのシクロスポリン(32%; P=0.0232)およびプラセボ(21%; P=0.0063)の両方に比べて、7mg/kgのシクロスポリンで治療した猫(54%)の方が有意に大きかった。軽度の胃腸疾患は、最も一般的な副作用であったが、治療の中止は必要なかった。

結論と臨床重要性:7mg/kgのシクロスポリンを1日1回6週間にわたり食事と共にあるいは経口投与することは、猫のアレルギー性皮膚炎において効果的であり、よく耐えられたと結果は示唆している。(Dr.Kawano訳)

■胸腺間質性リンパ球新生因子とアレルギー疾患
Thymic stromal lymphopoietin and allergic disease.
J Allergy Clin Immunol. 2012 Oct;130(4):845-52. doi: 10.1016/j.jaci.2012.07.010. Epub 2012 Aug 30.
Ziegler SF.

免疫反応の開始と調節における上皮の重要性はさらに解明されつつある。例えば、アレルゲンの接触は、まず始めに皮膚や気道そして胃腸管のような外部環境に暴露されている局所の粘膜で起こる。この暴露は、激しいアレルギー炎症性反応を引き起こす様々なサイトカインやケモカインの産生を導く。そのような生産物の一つが、胸腺間質性リンパ球新生因子 (TSLP)である。人の患者とマウスモデルの両方の最近の研究でアレルギー性疾患の発展と進行においてTSLPが関連することが分かった。この概要は、これらの炎症性疾患におけるTSLPの役割の理解において最新のアドバンスを強調するでしょう。最も重要なことは、TSLPの多面的な役割に関するこれらの洞察が、これらの疾患の新規治療法を潜在的に考慮することが出来た。(Dr.Kawano訳)

■皮下免疫療法と舌下免疫療法の比較:我々は何を知っているか?
Comparing subcutaneous and sublingual Immunotherapy: what do we know?
Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2012 Sep 27. [Epub ahead of print]
Bahceciler NN, Galip N.

概説の目的:アレルゲン特異的舌下免疫療法(SLIT)と皮下免疫療法(SCIT)は同じような免疫応答で臨床的に効果があることが証明されているが、同時の免疫学的応答に加えた臨床兆候の改善と予防効果の発症機序の点からアレルゲン投与のこれら2つのモデルを直接比較した研究は乏しい。この概説ではこの問題に関する現在のデータをアップデートする。

最近の所見:SLITと比較して、SCITはヘルパーT細胞(Th1)と制御性T細胞(Treg)のサイトカインと阻止抗体の産生に関する刺激的なサージを誘発することによって臨床改善の急速な始まりを提供する。舌下免疫療法の間、免疫グロブリンG(IgG)4濃度に影響しないで似たような免疫学的応答と臨床的応答がかなり後に誘発される。舌下免疫療法の間に関連のないアレルゲンによるTGFβ分泌の増加が新しい感作の予防効果を説明するかもしれない。

要約:皮下免疫療法と舌下免疫療法は、臨床効果と同時に起こる免疫応答の発現に関する早期で、僅かな違いのある呼吸器アレルギー性疾患の治療において両方とも臨床的に効果がある。皮下免疫療法と舌下免疫療法の両方は、その時に同じようなT細胞応答が誘発されるが、特異的IgG4阻止抗体応答は皮下免疫療法の後により見られる。多重感作患者における単独療法の予防効果と、関連のない多重アレルゲンによる免疫療法の効果と免疫学的応答に関するさらなる直接的比較する研究が保証される。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎における0.0584%アセポン酸ヒドロコルチゾンスプレーと経口シクロスポリンの効果の比較
Comparable efficacy of a topical 0.0584% hydrocortisone aceponate spray and oral ciclosporin in treating canine atopic dermatitis.
Vet Dermatol. February 2012;23(1):4-10, e1-2.
Tim J Nuttall; Neil A McEwan; Emmanuel Bensignor; Luisa Cornegliani; Christine Lowenstein; Christophe A Reme

この一重盲検無作為コントロール試験で、犬のアトピー性皮膚炎に対する0.0584%ヒドロコルチゾンアセポネート(HCA)スプレー(Cortavance(R); Virbac SA)とシクロスポリン(Atopica(R); Novartis Animal Health)の効果を比較した。犬にHCA(2回スプレー/100cm(2);n=24)、あるいはシクロスポリン(5mg/kg;n=21)を投与した。犬アトピー性皮膚炎の範囲と重症度指数(CADESI)-03、掻痒(グレードディスクリプタを伴うビジュアルアナログスケール)オーナーのスコア(5段階)を84日間28日ごとに記録した。Intention-to-treatデータを分析した。

どの時もCADESI-03と掻痒は有意に低下した(P<0.0001)が、治療群での差はなかった(それぞれP=0.91とP=0.52)。CADESI-03と掻痒スコアが50%以上減少したHCA-およびシクロスポリン-治療犬の比率は同様で、28日目(CADESI-03 58.3と57.1%、P=0.76;掻痒 33.3と38.1%、 P=1.0)、56日目(CADESI-03 70.8と81.0%、P=1.0;掻痒62.5と57.1%、P=1.0)、84日目(CADESI-03 75と85.7%、P=0.72;掻痒 65.2と57.1%、P=0.76)だった。CADESI-03と掻痒スコアはほぼ同等だった(0.47と0.51)。24頭中13頭のHCA投与犬と21頭中12頭のシクロスポリン投与犬で、84日目に隔日投与あるいは週2回投与が達成された(P=0.85)。効果のスコア(P=0.82)、許容性(P=0.62)、投与の容易さ(P=0.25)に有意差はなかった。許容性(0.49)および投与(0.46)に対するスコアはほぼ同等だった。効果に対するスコアはHCA(0.68)が良さそうだった。

軽度の副作用が21頭中6頭のシクロスポリン投与犬でみられ、24頭のHCA投与犬には見られなかった(P=0.008)。5頭のHCA投与犬と3頭のシクロスポリン投与犬は早期に中止した(P=0.7)。

結論として、84日間にわたる犬アトピー性皮膚炎の治療で、HCAとシクロスポリンは同等の効果を示した。(Sato訳)

■アレルギー性掻痒の猫の管理における塩酸セチリジンの効果のオープン臨床試験
An open clinical trial on the efficacy of cetirizine hydrochloride in the management of allergic pruritus in cats.
Can Vet J. 2012 Jan;53(1):47-50.
Griffin JS, Scott DW, Miller WH Jr, Tranchina MM.

アレルギー性の皮膚疾患をもった32頭の猫に、塩酸セチリジンを1頭あたり5mgで24時間おきに経口投与した。掻痒は、猫の41% (32頭中13頭)で低下した。掻痒を抑える効果は再現性があり、持続性であった。猫の年齢、病気の重症度,皮膚の反応パターンと、セチリジン投与中の改善の間に有意な関連は認められなかった。副作用は認められなかった。(Dr.Taku訳)

■アトピー性湿疹に対するアレルゲン特異的免疫療法:アップデート
Allergen-specific immunotherapy for atopic eczema: updated.
Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2012 Aug 23.
Darsow U.

この概説の目的:空中アレルゲンは、患者のサブグループにおいて呼吸器アレルギーだけではなくアトピー性湿疹を誘発する要因として明らかである。コントロールされた数少ない研究により、呼吸器性アトピー性疾患において、根治療法と同じくらい可能性があるアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)の使用はアトピー性湿疹の治療において議論の余地がある。この論文では、アトピー性湿疹におけるアレルゲン特異的免疫療法と関連した理論的側面と、臨床試験の最近の結果を要約する。

最近の所見:文献では、研究デザインと結果に関して可変性が証明されているが、アレルゲン特異的免疫療法は、Ⅰ型感作が存在していればアトピー性湿疹の経過は改善する可能性がある。論文は、ハウスダストマイトアレルギーだけではなく、カバノキあるいは牧草花粉感作の患者においても湿疹に対するアレルゲン特異的免疫療法の効能を示している。いくつかの研究において、アトピー性湿疹に罹患した患者の定義されたサブグループのみ、アレルゲン特異的免疫療法に肯定的な結果を示した。アレルゲン特異的免疫療法の一般的によい耐用性が見られた。

結論:関連のあるアレルギーがあるアトピー性湿疹の患者がさらなる治療オプションとしてアレルゲン特異的免疫療法がベネフィットとなるかもしれない。副作用はこれまで過大評価されてきた。仮説的に、アトピーのパッチテストは、成功したアレルゲン特異的免疫療法のためのアトピー性湿疹患者サブグループを識別するのを支援する。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎における制御性T細胞とToll様受容体2とToll様受容体4の役割
The Role of T-Regulatory Cells and toll-Like Receptors 2 and 4 in Atopic Dermatitis.
Scand J Immunol. 2012 Jun 11. doi: 10.1111/j.1365-3083.2012.02739.x.
Lesiak A, Smolewski P, Sysa-Jedrzejowska A, Narbutt J.

制御性T細胞(Tregs), Toll様受容体(TLRs)そしてインターロイキン17(IL-17)は、炎症性疾患において重要な役割を果たしているが、アトピー性皮膚炎の病因における関連性は明らかになっていない。
この研究の目的は、アトピー性皮膚炎に罹患した患者においてTLR2 と TLR4の発現した循環血液中の制御性T細胞と末梢血単核球(PBMC)数を評価した。

32人のアトピー性皮膚炎患者と36人の健常ボランティアの血液からPBMCとCD4+/CD25(high)+制御性T細胞を採取した。CD4+CD25+, TLR2 そして TLR4 受容体とIL17+の発現はフローサイトメトリーで評価した。

アトピー性皮膚炎患者の末梢血において、制御性T細胞は健常と比べて明らかに高かった(p=0.0003)。アトピー性皮膚炎患者のTLR2+PBMC とTLR4+ PBMCの数は健常と比べて明らかに低かった(それぞれp=0.035; p=0.001)。アトピー性皮膚炎患者のTLR2+ と TLR4+の両方が発現した制御性T細胞の割合も健常に比べて明らかに低かった(3.85 vs. 21.6, p<0.0001; 2.2 vs. 17.6, p <0.0001)。IL-17が発現したCD4+/CD25high+/FOXP3+制御性Tリンパ球の割合は、健常患者に比べてアトピー性皮膚炎患者の方が明らかに高かった(0.3% vs.0.06%; p=0.011)。

アトピー性皮膚炎患者のPBMCにおける制御性T細胞の特徴的な数とTLR2 とTLR 4の発現の様々な分布はアトピー性皮膚炎の病因に貢献していることを示唆している。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬の皮膚バリアーは異常なのか?
Is the skin barrier abnormal in dogs with atopic dermatitis?
Vet Immunol Immunopathol. November 2011;144(1-2):11-6.
Thierry Olivry

哺乳類の皮膚において、角質層はバリアー機能として働き、経上皮水分喪失およびアレルゲンのような環境からの外因性分子の侵入を防ぐ。近年、ヒトのアトピー性皮膚炎の病因において皮膚のバリアー欠損が最も重要だと示されている。

このレビューで、アトピー性皮膚炎の犬の角質層とバリアー機能の関係する最新の研究データを概説する。

この文献を書いている時点で、皮膚バリアー欠損がアトピー性皮膚炎の犬で存在しやすいというエビデンスが増えている。このバリアー機能不全は、異常な角質細胞間脂質、異常な角質形態、セラミド含有の減少および異常、全ての犬ではないが異常なフィラグリン発現を特徴とする。それらの変化と関連して、正常な犬の皮膚よりも経上皮水分喪失が多い。さらに、アトピー性炎症は経上皮水分喪失とフィラグリン発現を悪化させると思われる。しかし、その変化が観察されれば、臨床的に正常な皮膚でさえも原発(すなわち遺伝)あるいは二次的アトピー性炎症が存在するのかは不明のままである。

最後に、機能不全の皮膚バリアーを修復させる目的の治療介入が、アトピー犬にどのような臨床的有益性をもたらすかはまだ明確に証明されていない。(Sato訳)

■Tリンパ球と食物アレルギー
T lymphocytes and food allergy.
Mol Nutr Food Res. 2004 Nov;48(6):424-33.
Bohle B.

食物アレルギーは、通常では無害な物質に対する過敏症反応であり、Bリンパ球によって合成される免疫グロブリン(IgE)によって介在される液性免疫反応とTリンパ球によって介在する細胞性免疫反応が関与する。IgE介在性のメカニズムは例えば“口腔アレルギー症候群”のような食事摂取後すぐに起こる臨床症状を引き起こす。胃腸管あるいは皮膚などの遅延型反応に関して、基礎にある免疫メカニズムはよく分かっていない。食物抗原に対する細胞性免疫反応を解明するために、試験管内で表現するのに役立つツールとして人のアレルゲン特異的T細胞が生成された。食物アレルギーの個人から分離される食物アレルゲン特異的CD4陽性Tリンパ球の大部分がIgE合成の開始に必要な二つのサイトカイン、IL-4とIL-13の高い濃度を合成していることが分かった。選択的なホーミング・プロファイルにより、食物特異的T細胞は、アレルギー性炎症の標的器官を決定するようにも見える。
最近の研究で、IgE介在性炎症に加え、食物アレルゲン特異的Tリンパ球もIgE介在性の炎症性反応に対して独立的に起こるかもしれないことが証明された。(Dr.Kawano訳)

■皮膚食物不耐症の犬における免疫反応
Immune responses in dogs with cutaneous adverse food reactions.
Vet Q. 2012 Aug 7. [Epub ahead of print]
Veenhof EZ, Knol EF, Willemse T, Rutten VP.

犬の食物不耐症(AFR)は見かけ上は無害な食物抗原による反応であり、免疫病原性など病因は分かっていない。腸管を通じて食物抗原が流入するにも関わらず、食物不耐症の犬の大部分は、臨床兆候が皮膚(CAFR)にだけ関連する。この概説において、要因がナイーブT細胞のエフェクターT細胞への分化のトリガーおよびアレルギーにおけるこれらのT細胞のタイプの役割に関連することが示唆される。例えば、皮膚への抗原提示細胞やアレルゲン-誘発性T細胞のホーミングや皮膚症状の誘導など潜在的な経路と同じくらい、腸管および皮膚におけるアレルギーの免疫反応は特にこの論文で議論される。(Dr.Kawano訳)

■慢性腸症の犬の治療前後における臨床症状、病歴そしてCD-3陽性細胞
Clinical signs, histology, and CD3-positive cells before and after treatment of dogs with chronic enteropathies.
J Vet Intern Med. 2008 Sep-Oct;22(5):1079-83. Epub 2008 Jul 28.
Schreiner NM, Gaschen F, Grone A, Sauter SN, Allenspach K.

背景:病理組織は犬の炎症性腸疾患の診断に広く使われている。病変の変化や均一なグレードシステムが入手不可能なことで組織学的検査の有用性に限界がある。

仮説:犬の慢性腸症におけるCD3細胞数は、疾患の臨床的な活動性と病理組織学的変化の重症度と関連がある。

動物:19頭の飼い主が所有する犬を慢性下痢、嘔吐あるいは両方のため検査した。

方法:治療前後において十二指腸と結腸の粘膜サンプルを内視鏡下で採取した。低アレルギー食に反応した犬は食物反応性下痢(FRD, n=10)としてグループ化した。治療開始10日後に臨床的改善が認められない犬はプレドニゾロン(免疫抑制量)を与え、ステロイド反応性下痢(SRD, n=9)としてグループ化した。標準化されたグレードシステムでの病理組織学的評価は腸のサンプルにおいて回顧的に実施された。組織学的スコア、総浸潤細胞数そしてCD3陽性細胞数を数え、臨床スコアと比較した。

結果:全グループ(FRDとSRD)における治療前後に得られた組織での組織学的グレード、固有層における総細胞数そしてT細胞数に統計学的に有意な違いは検出されなかった。

結論と臨床重要性:現在使われている病理組織学的グレードスコア、総細胞数そしてCD3陽性細胞数でFRDとSRDを区別することはできず、治療に対する臨床応答とも関連しかなった。これらの結果から総細胞数やCD3陽性細胞数よりも他の基準を評価する新しいグレードスコアが将来評価されるべきである。(Dr.Kawano訳)

■犬の食物不耐症の診断においてパッチテストとアレルゲン特異的血清IgEとIgG抗体
Patch testing and allergen-specific serum IgE and IgG antibodies in the diagnosis of canine adverse food reactions.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Feb 15;145(3-4):582-9. doi: 10.1016/j.vetimm.2012.01.003. Epub 2012 Jan 12.
Bethlehem S, Bexley J, Mueller RS.

食物不耐症(AFR)は痒みを呈する犬の一般的な鑑別診断である。食物不耐症を診断する唯一の方法はこれまでに食べたことがないタンパク質と炭水化物を含む6-8週の除去食である。人医領域において、パッチテストは食物アレルギーの診断において役に立つツールであることが証明されている。獣医学領域において、血清食物アレルゲン特異抗体検査はそのような食事の適切な成分を認識するために広く使われている。

この研究の目的は、種々の一般的なフードの成分に対し、パッチテストと血清抗体検査の感受性、特異性、陰性そして陽性の予測性を決定することであった。25頭のアレルギー犬は、除去食、選択したフード成分で再暴露、パッチテスト、食物アレルゲン特異的IgEとIgGの血清検査を実施した。11頭の臨床的に正常な健常犬はパッチテストと血清検査に参加した。パッチテストの感受性と特異性は、それぞれ96.7 と 89.0%であり、陰性そして陽性の予測性は 99.3 と 63.0%であった。IgEとIgG検査の感受性は6.7 と26.7%で、特異性は91.4 と88.3%で、陰性の予測値は80.7 と 83.7% で、陽性の予測値は15.4 と 34.8%であった。

これらの結果に基づいて、これらの検査の犬における陽性反応は、あまり役立たないが、陰性結果は。これらの抗原がよく耐えられることを示唆している。我々は、パッチテスト(そして血清検査はより低い程度で)は食物不耐症が疑われる犬における除去食の成分を選択するのに役に立つと結論付ける。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の子供の喘息のリスクに対する猫とデイケア暴露の影響
Effect of cat and daycare exposures on the risk of asthma in children with atopic dermatitis.

Allergy Asthma Proc. 2012 May;33(3):282-8.
Gaffin JM, Spergel JM, Boguniewicz M, Eichenfield LF, Paller AS, Fowler JF Jr, Dinulos JG, Tilles SA, Schneider LC, Phipatanakul W.

若い子供のアトピー性皮膚炎(AD)は、その後喘息(アトピーマーチ)を発症することが多い。この高リスク集団で環境暴露の役割は不明である。
著者らは前向き小児科集団において屋内アレルゲン暴露、特にペット、げっ歯類、ゴキブリと喘息の発症の間の予測的関係を判定するのを目的とした。

ADの子供とアレルギーの家族歴を猫、犬、ゴキブリ、ラット、マウスの環境暴露のアンケート確認で前向きに調査した。研究期間の経過中に持続的に評価した徴候の世話人の報告を基に、研究内科医により喘息を診断した。

この研究終了時に299人の子供のうち55人が喘息を発症した。猫の暴露は全ての分析を通して喘息発症リスクの減少に強く独立して作用した(オッズ比、0.16;95%信頼区間、0.05-0.53)。犬、マウス、ラット、ゴキブリの暴露は喘息の発症に有意な影響を及ぼさなかった。デイケア暴露は喘息発症に対する最も大きいリスク減少を示した(オッズ比、0.08;95%信頼区間、0.03-0.19)。母親の喘息(オッズ比、2.93;95%信頼区間、1.29-6.67)、基準肥満度指数(オッズ比、1.23;95%信頼区間、1.08-1.42)、3歳時のハウスダスト混合に対する特異免疫グロブリンEは、喘息発症に対する各々独立したリスクファクターだった。

ADの子供において、猫とデイケア暴露は、早期小児喘息発症のリスクを減らすかもしれない。(Sato訳)

■ペリオスチンはTh2サイトカインに反応する慢性アレルギー性炎症を促進する。
Periostin promotes chronic allergic inflammation in response to Th2 cytokines.
J Clin Invest. 2012 Jun 11. pii: 58978. doi: 10.1172/JCI58978.
Masuoka M, Shiraishi H, Ohta S, Suzuki S, Arima K, Aoki S, Toda S, Inagaki N, Kurihara Y, Hayashida S, Takeuchi S, Koike K, Ono J, Noshiro H, Furue M, Conway SJ, Narisawa Y, Izuhara K.

アレルゲンの暴露によって惹起されるアレルギー反応は、頻繁にアトピー性皮膚炎(AD)と気管支喘息のような慢性炎症性疾患の発病を導く。アレルギー性炎症の慢性化の根底にあるメカニズムはよくわかっていない。

ペリオスチンは最近特徴付けられたマトリックス細胞蛋白で、いくつかの細胞表面のインテグリン分子と相互作用を及ぼし、組織の発育とリモデリングのシグナルを供給する。

ペリオスチンが皮膚炎症のマウスモデルを使ったアレルギー性炎症の増幅と持続のための決定的なメディエイターであることをここに我々は示す。Th2 サイトカインであるIL-4 とIL-13は、αvインテグリンと相互作用するペリオスチンを産生する線維芽細胞を刺激した。炎症誘発性サイトカインの産生を誘発するケラチノサイトにある機能的ペリオスチン受容体は続いてTh2型の免疫反応を加速させる。従って、ペリオスチンあるいはαv インテグリンの抑制は、アレルゲン誘発性の皮膚炎症の発展あるいは進行を抑制した。従って、ペリオスチンは、ケラチノサイト活性化に対するTh2型免疫反応にリンクした悪循環を開始し、アレルギー性皮膚炎症の増幅と慢性化に重大な役割を果たす。(Dr.Kawano訳)

■食物過敏症の臨床症状を示す猫における食物抗原に対するリンパ球幼弱化反応
Lymphocyte Blastogenic Responses to Food Antigens in Cats Showing Clinical Symptoms of Food Hypersensitivity.
J Vet Med Sci. 2012 Jan 27.
Ishida R, Kurata K, Masuda K, Ohno K, Tsujimoto H.

3頭の猫を除去食試験と経口的な食物暴露試験で食物過敏症と診断した。3頭の猫で経口的食物暴露試験によって12種類のアレルゲンとなる食物成分を認識した。12種類のアレルゲンとなる食物成分のうち、9種類の問題となる食物抗原はリンパ球刺激試験で陽性を示したが、抗原特異的IgE検査ではそれらのどれもが陽性ではなく、4つの食物抗原のみが皮内検査で陽性であった。9種類の食物成分に対するリンパ球刺激試験における刺激指数は猫に除去食を与えた後に減少した。
今回の研究でリンパ球刺激試験は食物過敏症を含む免疫反応を反映し、猫の食物過敏症におけるアレルギーとなる食物成分を認識するのに役立つことが証明された。(Dr.Kawano訳)

■食物アレルギーの犬における食物アレルゲンに対するリンパ球増殖反応のフローサイトメトリー解析
Flow cytometric analysis of lymphocyte proliferative responses to food allergens in dogs with food allergy.
J Vet Med Sci. 2011 Oct;73(10):1309-17. Epub 2011 Jun 15.
Fujimura M, Masuda K, Hayashiya M, Okayama T.

アレルゲン特異的IgE定量検査(IgE検査)と末梢のリンパ球の抗原特異的な増殖に関するフローサイトメトリー解析という2つの異なるアレルギー検査を、食物アレルギー(FA)の犬における食物抗原に対するアレルギー反応の違いを検査するために実施した。
13頭の犬を臨床症状と除去食試験を元に食物アレルギーと診断した。臨床的に犬アトピー性皮膚炎(CAD)と診断した7頭の犬は疾患コントロール群として使用し、5頭の健常犬は陰性コントロール群とした。食物アレルギー群において、血清IgE検査とリンパ球増殖検査において、それぞれ19個と33個のアレルゲン反応が認識された。同様に、犬アトピー性皮膚炎群において12個と6個のアレルゲン反応、健常犬において3個と0個のアレルゲン反応が夫々の検査で認識された。リンパ球増殖試験による陽性アレルゲン検出の観点から有意差が食物アレルギーと健常犬の間に見られ、これは、その検査は食物アレルギーと健常犬を区別するのに役立つが、犬アトピー性皮膚炎は区別的ないことを示している。1.5-5ヶ月の除去食試験後に両方の検査を、食物アレルギーの6頭の犬で繰り返した。陽性反応を示した11個中9個のIgE濃度は20-80%減少した。しかし、リンパ球増殖検査におけるすべての陽性反応はほぼ0に減少(P<0.05)し、食物抗原に対するリンパ球は犬の食物アレルギーの病因において影響しているかもしれないことを示している。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬モデルにおけるプロバイオティクスの早期投与は長期の臨床的および免疫学的効果を持つ
Early exposure to probiotics in a canine model of atopic dermatitis has long-term clinical and immunological effects.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Apr 15;146(2):185-9. doi: 10.1016/j.vetimm.2012.02.013. Epub 2012 Mar 1.
Marsella R, Santoro D, Ahrens K.

プロバイオティクスは免疫応答を調節し、アトピー性皮膚炎(AD)に対して予防的効果があるかもしれない。自然発症例の犬を使った臨床治験は、異なる食事、環境や暴露など混乱する要因のため限られているが、よりコントロールされた評価が実験モデルを使うことによって可能となる。犬アトピー性皮膚炎と確定したモデルは、Lactobacillus rhamnosus GG (LGG)の早期投与によって、生後6カ月の間アレルゲン特異的IgEは有意に減少し、部分的にアトピー性皮膚炎を予防した。

この研究はLactobacillus rhamnosus GG (LGG)を中止後3年経過観察する。臨床症状はブタクサ, チモシー、コナヒョウヒダニのアレルゲン暴露後に評価した。アレルゲン特異的IgE、IL-10、TGF-βについて、暴露初日とアレルゲン暴露前に評価した。正常犬はコントロールとして参加した。プロバイオティクスを与えなかった7頭の犬と、プロバイオティクスを与えた同腹仔9頭を分析した。臨床スコアから、2-グループ× 9-回数の分散分析は、グループ(p=0.0003, probiotic<controls), 回数 (p<0.0001) and グループ × 回数の相関(p<0.0001)と有意な効果を示した。すげてのアレルゲンのIL-10はプロバイオティクスを投与した犬よりコントロールグループで明らかに高かった。アレルゲン特異的IgEとTGF-βについては同腹子では違いがなかった。プロバイオティクスの早期投与は、このモデルにおいて長期の臨床的そして免疫学的効果があり、自然発症疾患の犬を使ったさらなる大規模研究が必要である。(Dr.Kawano訳)

■喘息の実験猫におけるアレルゲン特異的IgE検査に対する経口と吸入グルココルチコイドの影響
The impact of oral versus inhaled glucocorticoids on allergen specific IgE testing in experimentally asthmatic cats.
Vet Immunol Immunopathol. 2011 Dec 15;144(3-4):437-41. Epub 2011 Sep 17.
Chang CH, Lee-Fowler TM, Declue AE, Cohn LA, Robinson KL, Reinero CR.

グルココルチコイド(GCs)によってアレルギー性喘息は緩和されるが、同定されたアレルゲンに基づいたアレルゲン特異的免疫療法(ASIT)は根治療法となる可能性がある。
この研究の目的は、経口または吸入のGCsが、感作されたアレルゲンを同定することを妨げるかどうかを明らかにすることである。
吸入ではなく、経口のGCsは、喘息の実験猫における皮膚と血清検査によるアレルゲン特異的IgEの同定が正確にできないという仮説である。ギョウギシバアレルゲン(BGA)を用いて18頭の猫に喘息を誘発した。猫(各グループ6匹)は、無作為に、1ヶ月間経口GCs(10mgプレドニゾロン24時間おき)を投与する群、吸入GCs(600μgブデソニド24時間おき)を投与する群、プラセボ(24時間おき経口)に振り分けた。皮内反応検査(IDST)および血清BGA特異的IgEは、治療の前、治療中、治療後に測定した。治療前と治療後の群を比較するのにペアT検定を用いた(p<0.05を有意とする)。
IDSTの反応は、経口GCs、吸入GCs、プラセボ群でそれぞれ、4/6, 3/6, 1/6頭で消失した。治療終了2週間後、IDSTは全ての猫において再び陽性となった。BGAに対する血清IgEは、治療によって有意に減少することはなかった。
GCsを2週間やめればIDSTに十分で、血清IgEの検査については中止する必要はないようである。(Dr.Taku訳)

■シクロスポリンを投与しているアレルギー性皮膚炎の猫50例の副作用
Adverse events in 50 cats with allergic dermatitis receiving ciclosporin.
Vet Dermatol. December 2011;22(6):511-20.
Nicole A Heinrich; Patrick J McKeever; Melissa C Eisenschenk

シクロスポリンは免疫抑制剤で、猫、犬、ヒトのアレルギーや他の免疫介在性疾患の治療に使用されている。猫のシクロスポリンの副作用についての情報は、小規模研究、症例報告と限られている。犬の副作用は主に胃腸性だが、ヒトは高血圧や腎機能の変化も見られる。
この回顧的症例シリーズ研究の目的は、アレルギー性皮膚疾患を治療するため、シクロスポリンを投与した猫の副作用の発生と臨床的外観を述べることだった。
経口シクロスポリン(1.9-7.3mg/kg/日)で治療したアレルギー性皮膚炎の猫50頭の医療記録を調査した。
副作用は66%(33頭)の猫に発生した。シクロスポリンに関係がありそうな副作用は:シクロスポリン投与から1-8週以内に起こる嘔吐あるいは下痢(24%)、体重減少(16%)、食欲不振と続く肝リピドーシス(2%)、歯肉過形成(2%)だった。シクロスポリンに関係がなさそうな副作用は:体重増加(14%)、歯石および歯肉炎(10%)、耳炎(4%)、慢性下痢(4%)、緩慢性消化管型リンパ腫を伴う炎症性腸疾患(2%)、尿路感染(2%)、白内障(2%)、肝酵素上昇(2%)、甲状腺機能亢進症および腎不全(2%)、一時的な不適切な排尿(2%)だった。複数の副作用を起こした猫もいた。それらの副作用に関して原因とシクロスポリンの影響を証明する症例コントロール研究が必要である。(Sato訳)

■隔離させた犬を含む犬のアトピー性皮膚炎
The study of canine atopic dermatitis involving the isolation of dogs.
Pol J Vet Sci. 2011;14(2):273-7.
Fujimura M.

27頭の痒みを呈する犬がこの研究に参加した。6週間これら27頭の犬に低アレルギー食を与え、痒みの改善が見られた犬はいなかった。これらの犬は、Prelaudの診断基準によって定義されたアトピー性皮膚炎の病歴と臨床兆候があった。続いて、27頭の犬は観察するため2週間病院に隔離した。動物病院の隔離室において、ケージや食器はすべてステンレススチールとし、カーペットは使わなかった。隔離室にいる時に27頭の犬には低アレルギー食を2週間連続で与えた。

PVAS (痒みビジュアルアナログスケール)は、隔離開始前、研究開始時と隔離開始後2週間で実施した。17頭の犬(63%)の痒みは隔離室で改善した。隔離2週間後に、統計的に明らかな(p<0.01)PLS (痒み直線スコア)の減少が記録された。隔離室で痒みが改善した17頭の犬は隔離室には存在していない環境アレルゲンによって惹起されたアトピー性皮膚炎であるという仮説である。10頭の犬(37%)は痒みが改善されなかった。10頭中6頭は皮内アレルギー検査において環境抗原が陽性であった。10頭中4頭は、皮内アレルギー検査で全ての環境抗原が陰性であった。環境抗原に対する感受性が認識されなかった犬は、アトピー様皮膚炎を持つと思われた。(Dr.Kawano訳)

■犬の食物有害反応の診断におけるパッチテストと抗原特異的な血清IgEおよびIgG抗体の有用性
Patch testing and allergen-specific serum IgE and IgG antibodies in the diagnosis of canine adverse food reactions.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Jan 12. [Epub ahead of print]
Bethlehem S, Bexley J, Mueller RS.

食物有害反応(AFR)は、掻痒のある犬の一般的な鑑別診断である。AFRを診断する唯一の方法は、以前に摂取したことのない蛋白と炭水化物源の除去食を6-8週間与えることである。ヒトでは、食事アレルギーを診断するのに、パッチテストが有用な方法であると示されている。獣医学では、そのような食物の適切な原料を同定するのに、血清食物抗原特異的な抗体価の測定が広く使用されている。

この研究の目的は、様々な共通する食物成分に対するパッチテストと血清抗体検査の、感度、特異性、陰性的中率と陽性的中率を決定することである。25頭のアレルギーの犬に除去食を与え、選択した食物成分をそれぞれ再び与え、食物のパッチテストと食物抗原特異的なIgEとIgGの抗体価を測定した。11例の臨床的に正常な犬をパッチテストと血清検査に用いた。

パッチテストの感度と特異性は、それぞれ96.7%と89.0%であり、陰性的中率と陽性的中率はそれぞれ99.3%と63.0%であった。IgEおよびIgGのそれぞれについて、感度は6.7%および26.7%であり、特異性は91.4%%および88.3%であり、陰性的中率は80.7%および83.7%、陽性的中率は15.4%および34.8%であった。

以上の結果によると、これらの検査で犬が陽性反応を示すことは、それほど役には立たないが、陰性の結果は、その抗原には耐容であることを示唆している。AFRを疑う犬において、除去食の原料を選ぶのにパッチテスト(より低いが血清抗体検査)が有用であると結論づける。(Dr.Taku訳)

■犬のアトピー性皮膚炎モデルにおけるハウスダストマイトに対する経口免疫療法の許容性と臨床効果:パイロットスタディー
Tolerability and clinical efficacy of oral immunotherapy with house dust mites in a model of canine atopic dermatitis: a pilot study.
Vet Dermatol. 2010 Dec;21(6):566-71.
Marsella R.

アトピー性皮膚炎(AD)は慢性的で、一生の疾患である。人において免疫療法(IT)はアトピー性皮膚炎の経過を変えることができる唯一の治療である。経口免疫療法は、投与が容易でコンプライアンスを増加させる可能性があるため魅力的である。

この研究の目的は、犬のアトピー性皮膚炎モデルを使った経口免疫療法の許容性、臨床効果そしてアレルゲン特異的IgEに対する効果を調査することだった。ハウスダストマイト(HDMs)に感作させた13頭のアトピーのビーグルを2つのグループにランダムに分けた。1つのグループはハウスダストマイトの経口投与量を毎日投与したが、他のグループは7ヶ月間溶媒だけを投与した。犬を評価する観察者は治療の割当を知らせなかった。免疫療法の前と後の2ヶ月と7ヶ月において、3日間連続でハウスダストマイトに犬を毎日暴露させ、臨床兆候を改変したCADESIでスコア化した。経口免疫療法の前と完了時に、アレルゲン特異的IgE測定のため血清を採取した。

経口免疫療法はよく耐えることができ、副作用はなかった。分散分析で、CADESIスコアに関して時間、グループ、時間×グループの相互作用に有意な影響は見られなかった。さらに、アレルゲン特異的IgE濃度において明らかな違いはなかった。結論として、ハウスダストマイトの経口投与について、これらのアトピー性皮膚炎のビーグルはよく耐えたが、このプロトコールは臨床症状を改善するには不十分であった。さらに長期の研究が獣医領域における経口免疫療法の可能性を探究するために必要になるだろう。(Dr.Kawano訳)

■アレルゲン特異的免疫療法中におけるT細胞の反応
T-cell responses during allergen-specific immunotherapy.
Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2012 Feb;12(1):1-6.
Maggi E, Vultaggio A, Matucci A.

レビューの目的:アレルゲン特異的免疫療法は唯一、特異的、用量依存的、時間依存的で、中止後数年継続する臨床的改善および生物学的寛容に関連したアレルギー治療のための疾病修正戦略である。
最近の知見:呼吸器アレルギーにおいて成功する免疫療法は、より保護的なアレルゲン特異的Th1細胞に対するTh2反応の免疫偏移と、血液中と炎症を起こした気道においてIL-10/ TGF-βを産生する制御性T細胞と関連する。皮下治療と舌下治療は用量依存的そして時間依存的に同じような変化を誘導する。
要旨:この研究は、これらの治療によって引き出される向けなおすメカニズムと調節されるメカニズムの統一する見解を提示し、皮下免疫療法と舌下免疫療法中の免疫学的なT細胞反応の最新情報を提供する。(Dr.Kawano訳)

■アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン特異的免疫療法:皮下と舌下
Specific allergy immunotherapy for allergic rhinitis: subcutaneous and sublingual.
Immunol Allergy Clin North Am. 2011 Aug;31(3):561-99.
Cox L, Wallace D.

様々なコントロール臨床研究で、アレルギー性鼻炎に関連した臨床兆候や治療費を下げるアレルゲン特異的免疫療法(SIT)の効果が立証されている。薬物療法と比較して、アレルゲン特異的免疫療法は、治療中断後の持続的な臨床的ベネフィットが提供されるかもしれない。皮下そして舌下免疫療法は世界的に最も広く処方されているアレルゲン特異的免疫療法の投与ルートである。この論文では、アレルゲン特異的免疫療法のこれらの2つのフォームと関連した効果、安全性、予防効果、免疫学的メカニズム、そして遵守率を比較する。(Dr.Kawano訳)

■舌下免疫療法のメカニズム
Mechanisms of sublingual immunotherapy.
Immunol Allergy Clin North Am. 2011 May;31(2):191-209, viii.
Scadding G, Durham SR.

舌下免疫療法(SLIT)は季節性アレルギー性鼻結膜炎の治療に効果があることが証明されている。従来の皮下免疫療法に匹敵する臨床効果にもかかわらず、舌下免疫療法のメカニズムはいまだ完全には確立されていない。
この論文では、舌下免疫療法中のアレルゲンの処理における局所の口腔粘膜と周辺リンパ組織の役割、およびその後のT細胞とB細胞の免疫コンパートメントに対する、および粘膜局所への影響を考察する。出来事のありそうな時間的経過、および舌下免疫療法に続く長期にわたる寛容に対するエビデンスが議論されます。(Dr.Kawano訳)

■アレルギー性の犬における除去食前後における食物アレルゲン特異的血清IgGとIgE
Food allergen-specific serum IgG and IgE before and after elimination diets in allergic dogs.
Vet Immunol Immunopathol. 2011 Sep 10.
Zimmer A, Bexley J, Halliwell RE, Mueller RS.

血清食物アレルゲン特異的抗体検査は、アレルギー性皮膚疾患の犬において食物有害反応(ARF)を診断するための食事に対し、適した成分を認識するために広く提供されている。食事変更の選択を手助けするため、不成功に終わった食事中に得られた血液サンプル中の抗体濃度は、前の食事によって影響をうけるかもしれません。
この論文の目的は、除去食の前後において最も一般的に使われる16種類の食物抗原に対する食物抗原特異的IgEとIgG濃度を測定することだった。
食物特異的血清IgEとIgG抗体の濃度は酵素結合免疫吸着測定(ELISA)で測定した。犬には、検出できる牛肉、豚肉、羊肉そして牛乳のIgE抗体があり、検出できる牛肉、豚肉、羊肉、牛乳、鶏肉そして七面鳥に対するIgG抗体があった。完全にデータが揃っている19頭の中で、14頭は食事中に明らかか改善が認められ、7頭の犬において食物有害反応は再チャレンジ中による悪化と再び与える食事による改善で診断することができた。血清はそのような食事を与える前と、開始後6-8週で採取した。いくつかの個々のアレルゲンも全てのアレルゲンの総IgE濃度も総IgG濃度も食事前後で有意差(それぞれP=0.55 and P=0.53 )はなかった。食物アレルギーの診断のために除去食を使った19頭の犬のうち、おそらく食物アレルギーであろう14頭と食物アレルギーを証明した7頭において、除去食を6-8週与えた前後において食物特異的抗体に有意差はなかった。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎での一般的なアレルゲン:皮内検査に基づく比較所見
Common allergens of atopic dermatitis in dogs: comparative findings based on intradermal tests.
J Vet Sci. 2011 Sep;12(3):287-90.
Kim HJ, Kang MH, Park HM.

2004-2008年において韓国の建国大学獣医教育病院で、アトピー性皮膚炎と診断した58頭の犬の皮内検査を実施した。韓国や他の国で行われたほかの調査結果と今回の調査で観察されたアレルゲン分布を比較するため、アレルゲンを種類で分けた。犬の性の分布において有意差は認められなかった。58頭の中で最も一般的であった品種はマルチーズ(11頭)とシーズ(11頭)であった。平均年齢は4.8歳であった。皮内検査において最も頻繁に反応したアレルゲンは、カビ(67.3%)で、続いてハウスダスト(54.5%)とハウスダストマイト(49.1%)であった。今回の研究で、他の国で行われた研究と比較して、様々な屋外アレルゲンに対する犬のアレルギー反応は低い分布であった;これは韓国に住んでいる犬の生活環境の差を反映しているかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■ラブラドールおよびゴールデンレトリバーにおける犬アトピー性皮膚炎の発症に対する環境の役割
Role of the environment in the development of canine atopic dermatitis in Labrador and golden retrievers.
Vet Dermatol. August 2011;22(4):327-34.
S Meury; V Molitor; M G Doherr; P Roosje; T Leeb; S Hobi; S Wilhelm; C Favrot

犬およびヒトアトピー性皮膚炎は、遺伝的背景、環境、二次的感染、食物および心理学的影響のようないくつかの要因により臨床的に発症する多面的疾患である。環境の役割はヒトで大規模に研究されているが、犬では不明なままである。
この研究の目的は、2つの遺伝的に近い種類であるラブラドールおよびゴールデンレトリバーにおいて、環境因子を研究した。
標準基準を用い、スイスとドイツでアトピー犬を選抜し、健康な個体と比較した。環境要因に対する情報は、誕生日と誕生場所、ブリーダーおよびオーナーの家での生活様式、食物および治療を包含する46項目のアンケート調査を使用して収集した。一変量および多変量ロジスティック回帰を使用し、潜在的リスクファクターと疾患状態の間の関連を評価した。
以下のパラメーターは、疾患発症のリスク増加と関連した:子犬の時期に小屋で数週間飼育されシャンプーされる、8-12週齢で決まって譲渡される。
対照的に以下の要因はリスク低下と関連した:田舎の環境で生活、他の動物と一緒に生活するおよび森林を散歩する。

それらの関連は因果関係を証明されていないが、確実な環境因子が犬アトピー性皮膚炎の発症に影響するかもしれないという主要仮説を支持する。それらの結果および結論を確認する更なる研究が必要である。(Sato訳)

■猫と犬の食事過敏症
Dietary hypersensitivity in cats and dogs.
Tijdschr Diergeneeskd. 2010 Oct 1;135(19):706-10.
Mandigers P, German AJ.

食物に対する有害反応あるいは食事過敏症は、小動物医療において頻繁に見られる問題であり、炎症性腸疾患(IBD)との鑑別が難しいかもしれない。食事過敏症は免疫学的と非免疫学的問題の2つのサブグループに別けられる。非免疫学的問題は、食物不耐性、食中毒そして食あたりに細分される。免疫学的グループは真の食物アレルギー(IgE介在性)とアナフィラキシー(非IgE介在性)に細分される。この論文は、食事過敏症とは何か、さらに特異的な食物アレルギーとは、そして食事過敏症が疑わしい患者にどう対応するかというアウトラインを提供する。(Dr.Kawano訳)

■10の家庭において開放した袋および封をした箱で貯蔵したドライのドックフードのハウスダストと貯蔵庫ダニ汚染
House dust and storage mite contamination of dry dog food stored in open bags and sealed boxes in 10 domestic households.
Vet Dermatol. April 2011;22(2):162-72.
Christina Gill; Neil McEwan; John McGarry; Tim Nuttall

ドライのペットフードは、犬のアトピー性皮膚炎においてハウスダストおよび貯蔵庫ダニ抗原の暴露源となる可能性がある。
この研究はグアニン、Der p 1 ELISAおよびダニ浮遊に対するAcarex試験を使用し、10の家庭で90日間、紙袋、封のできるプラスチック袋、封のできるプラスチック箱で貯蔵したドライのドックフードとハウスダストの汚染を評価した。
Acarex検査は全てのフードサンプルで陰性だったが、全てのハウスダストサンプルで陽性だった。Der p 1濃度とダニ数は紙袋のフードで有意に増加した(それぞれP=0.0073およびP=0.02)が、プラスチック袋や箱では見られなかった。ダニ数とDer p 1濃度は、対応するフードサンプルと比較してハウスダストで10-1000倍高かった(P<0.0001)。ハウスダストのDer p 1と紙袋のフード(P<0.0001)およびプラスチック袋のフード(P=0.003)に有意な相関があり、ハウスダストのダニ数と紙袋のフード(P=0.0007)に有意な相関があった。寝床と絨毯は、ハウスダストのDer p 1濃度(それぞれP=0.015、P=0.01)、紙袋のフード(両方ともP=0.02)およびプラスチック袋のフード(それぞれP=0.03、P=0.04)と有意に関連した。ダニは10の紙袋中6、10のプラスチック袋中3、10のプラスチック箱中1、10のハウスダストサンプル中9で認められた。それらの内訳は、チリダニ(54%)、コナダニ(10%;すべてフードから)、未同定ダニ(36%)だった。
封のできるプラスチック箱でのフードの貯蔵は、ほとんどが3ヶ月間汚染を防いだ。しかし、全ての貯蔵フードにおいてダニおよびダニ蛋白の暴露は、ハウスダストに比べて些細なことと思われた。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎における犬種関連表現型
Breed-associated phenotypes in canine atopic dermatitis.
Vet Dermatol. April 2011;22(2):143-9.
Sylvia Wilhem; Marcel Kovalik; Claude Favrot

犬のアトピー性皮膚炎はさまざまな側面を持つ疾患で、臨床症状は動物の遺伝的背景、環境、関係するアレルゲンおよびフレア因子などの多数の要因により影響を受けると思われる。特に、犬種関連の違いはしばしば述べられているが、正確に定義されていない。アトピー犬の大きなデータセットを使用し、我々はこの研究でよく罹患する9犬種の臨床症状を述べ、各犬種と全集団の間の臨床的表現型の実質的な違いの存在を示す。その違いのいくつかは遺伝的違いによるもので、別のものの多くは環境要因における変動に関係すると思われる。(Sato訳)

■アトピー犬と非アトピー犬におけるマラセチアpachydermatis抽出物に対するIgG反応
The immunoglobulin G response to Malassezia pachydermatis extracts in atopic and non-atopic dogs.
Can Vet J. August 2010;51(8):869-72.
Ha J Kim; Eun T Kim; Chae Y Lim; Chul Park; Byeong T Kang; Ju W Kim; Jong H Yoo; Hee M Park

アトピー犬と非アトピー犬においてマラセチアpachydermatisに対するIgG免疫反応を比較した。マラセチアpachydermatis蛋白は分子量98kDaで、有意に高い頻度でアトピー犬の血清において認められた。マラセチア性皮膚炎を持つアトピー犬の多くは正常犬よりも大きなIgG反応を認めた。(Sato訳)

■アレルゲン特異的免疫療法のモニターのための血清免疫学的マーカー
Serum immunologic markers for monitoring allergen-specific immunotherapy.
Immunol Allergy Clin North Am. 2011 May;31(2):311-23.
Shamji MH, James LK, Durham SR.

アレルゲン免疫療法はIgE介在性アレルギー患者、特に通常の抗アレルギー薬に反応しない患者において効果的な治療オプションである。成功する免疫療法は、アレルゲン特異的IgG抗体、特にIgG(4)サブクラスの増加と標的組織のアレルギー性炎症の抑制に関連する。現在まで免疫療法に対する臨床的反応の予測となるバイオマーカーはない。この論文では、IgEに競合して、IgE-アレルゲン複合体形成を抑制するIgGの能力に基づく機能的分析が、免疫療法に対する臨床反応に関して代理となる、あるいは予測となるかもしれない可能性について探究する。(Dr.Kawano訳)

■舌下免疫療法の安全性
Safety of sublingual immunotherapy.
J Biol Regul Homeost Agents. 2011 Jan-Mar;25(1):1-6.
Ciprandi G, Marseglia GL.

舌下免疫療法(SLIT)は現在古典的な注射による投与に変わる実行可能な代替療法として認識されており、現在ヨーロッパでは日々の臨床診療で使われている。舌下投与は痛みがないので子供に特に魅力的である。今までのところ、舌下免疫療法による致死例は報告されていないが、吸入アレルゲンに対するアナフィラキシーの2症例が報告されている。文献で報告されているよくある副作用は軽度と記述されている。副作用の多くは、口(ヒリヒリ感あるいは痒み)や胃腸管(胃痛、悪心)であり、通常全く処置なく数日で自然治癒する。現在、舌下免疫療法はアレルギー専門医にとって主な治療オプションとなるが、錠剤の免疫療法が舌下滴下に対する興味深い代替手段になることが出来た。(Dr.Kawano訳)

■非アトピー性皮膚炎のウエストハイランドワイトテリアにおける高アレルゲン特異的血清IgE濃度
High allergen-specific serum immunoglobulin?E levels in nonatopic West Highland white terriers.
Vet Dermatol. 2011 Jan 26.
Roque JB, O’Leary CA, Kyaw-Tanner M, Latter M, Mason K, Shipstone M, Vogelnest L, Duffy D.

人と犬のアトピー性皮膚炎(AD)は環境アレルゲンに特異的なIgEと関係を共有するが、非アトピー犬の血清アレルゲン特異的IgEを評価している研究はわずかである。この研究では30頭のアトピーと18頭の非アトピー性ウエストハイランドホワイトテリアにおける血清アレルゲン特異的IgE濃度を比較した。アトピー性皮膚炎は標準的な基準を使って確定した。非アトピー犬は5歳以上で、臨床症状がないか、アトピー性皮膚炎の病歴がなかった。血清アレルゲン特異的IgE濃度は48項目のオーストラリアパネルを使用するAllercept IgE酵素免疫測定法(ELISA)で測定した。ELISA吸光度単位画150以上で陽性反応と決定した。
16頭のアトピー性皮膚炎の犬で血清採取時点か、あるいは様々な血清採取前の時点で皮内反応を実施した。アトピー性皮膚炎の犬において、最も一般的に陽性を示した酵素免疫測定法(ELISA)と皮内反応試験結果は、コナヒョウヒダニ ( 30 頭中11頭の犬)だったが、どのアレルゲンに対する2つの方法からの結果では統計的に有意な関連はなかった。
非アトピー犬において、複数のELISA高陽性反応が48アレルゲン中45アレルゲンで報告され、最も一般的なものはコナヒョウヒダニとケナガコナダニ(それぞれ18頭中17頭)だった。非アトピー犬における陽性のELISA結果は、48アレルゲン中44アレルゲンでアトピー性皮膚炎の犬の結果と比べて統計的に有意に高く、一般的に犬のアトピー性皮膚炎において有意と言われている二つのアレルゲン(コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニ)も含まれた。
結論として、アレルゲン特異的IgE ELISA陽性は犬のアトピー性皮膚炎で特異的ではなく、高いアレルゲン特異的IgE濃度は非アトピー犬でも見られた。これの臨床的意義およびそれが保護的な表現型を特徴付けるかどうかは不明である。(Dr.Kawano訳)

■アレルゲン特異的舌下免疫療法の免疫学的メカニズム
Immunological mechanisms of sublingual allergen-specific immunotherapy.
Allergy. 2011 Jan 20. doi: 10.1111/j.1398-9995.2010.02535.x.
Novak N, Bieber T, Allam JP.

アレルゲン特異的免疫療法のここ100年以内に、多くの臨床的そして科学的な努力によって非浸襲的アレルゲン応用戦略が確立されている。従って、舌下粘膜への口腔内アレルゲンデリバリーは安全であり、効果的であることが証明されている。結果として、今日まで舌下免疫療法(SLIT)が殆どのアレルギー専門医に、従来の皮下免疫療法の代替法として広く受け入れられている。免疫学的メカニズムは詳しく解明され続けるべきであるが、近年のマウスや人のいくつかの研究によって、舌下免疫療法に対する反応に関する局所的と同じくらい全身的な免疫学的兆候に深い見地が提供された。まず、標的器官(口腔粘膜)が、免疫寛容メカニズムを補強する恒常的な性質を持つ樹状細胞(DCs)のような他の細胞や局所の抗原提示細胞(APC)の中に含まれる舌下免疫療法に、重要かつ必要な非常に複雑な免疫学的ネットワークを抱くことが示された。
それ以上に口腔粘膜内の局所樹状細胞に関する基礎研究によって、口腔前庭などの舌下組織以外の粘膜領域へアレルゲンを届けることが可能な代替戦略をもたらした。さらに、口腔内の樹状細胞の特徴づけは、舌下免疫療法の間に適用できたアジュバントとアレルゲンの両方のための標的構造の識別に繋がった。要するに、舌下免疫療法は前世紀に始まる時から、今までのところ大いに進歩しているが、舌下免疫療法に関する全ての質問に回答できるわけではない。しかし、臨床アプローチと同様に最近の研究努力によって舌下免疫療法のさらにエキサイトした100年の道が開かれた。(Dr.Kawano訳)

■アレルゲン特異的免疫療法のメカニズムにおけるアップデート
Update in the mechanisms of allergen-specific immunotheraphy.
Allergy Asthma Immunol Res. 2011 Jan;3(1):11-20. Epub 2010 Nov 16.
Akkoc T, Akdis M, Akdis CA.

アレルギー性疾患はTh2型T細胞とアレルゲン特異的IgE優位を伴い、自然環境アレルゲンに対する複雑な先天的および獲得免疫反応を表す。アレルゲン特異的免疫療法は、免疫寛容メカニズムを増強することにより、アレルゲンに対する制御されない免疫反応に対する最も効果的な治療アプローチである。免疫療法の主な目的は、感作された患者のアレルゲン非反応性あるいは寛容性T細胞の産生、およびT細胞-およびIgE-介在性免疫反応優位のダウンレギュレーションである。アレルゲン特異的免疫療法の間、制御性T細胞が産生され、IgG4抗体の産生に対するアレルゲン特異的B細胞の誘導およびIL-10を分泌する。これらのメカニズムはアレルギー兆候を減少さる抗原に対する寛容を引き起こす。現在の知識では制御性T細胞介在性免疫寛容の役割が強調されているが、アレルゲン特異的免疫療法の成功している臨床結果に続く明確なメカニズムはまだ研究の未開部分である。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の治療におけるマシチニブ:パイロットスタディー
Masitinib for the treatment of canine atopic dermatitis: a pilot study.
Vet Res Commun. 2010 Jan;34(1):51-63. Epub 2009 Dec 23.
Daigle J, Moussy A, Mansfield CD, Hermine O.

犬のアトピー性皮膚炎(CAD)の長期治療に適した薬物療法を継続して判定する必要があります。メシル酸マシチニブは有望であり、c-KIT受容体の選択的チロシンキナーゼ阻害剤である。SCF/c-KIT 経路と犬アトピー性皮膚炎の病因には強い関連性が存在し、マシチニブが役割以上のことを潜在的に果たすかもしれないと示唆している。
この研究は犬アトピー性皮膚炎においてマシチニブの非コントロールパイロットスタディーを報告する。マスチニブを28日間11.0 +/- 1.83 mg/kg/day(free base)の平均投与量で11頭の犬に経口投与した。治療に対する反応は修正バージョンのCanine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index (mCADESI)、痒みスコアそして病変部の表面積に従い臨床的様相の進展により評価した。マシチニブは基線と比較して28日目でmCADESI が50.7 +/- 29.8% (95% C.I. = 29.4-72.0; p = 0.0004)の平均減少で犬アトピー性皮膚炎を改善させ、mCADESI が33%以上 、40% 以上、50%以上の改善を見せたのは夫々10頭中8頭、10頭中8頭そして10頭中4頭であった。改善は痒みスコアと病変部の表面積の減少によってさらに証明された。この試験中重度あるいは重篤な副作用は起こらなかったが、11頭中6頭の犬は、副作用に関連した軽度から中等度の治療を行った。さらなる調査を保正当化する十分説得力のあるエビデンスがある。(Dr.Kawano訳)

■α1-プロテイナーゼ阻害剤によるアトピー性皮膚炎の治療
Treatment of atopic dermatitis with alpha 1-proteinase inhibitor.
Ann Allergy. 1992 Nov;69(5):407-14.
Wachter AM, Lezdey J.

不応性アトピー性皮膚炎の治療に対して、セリンプロテアーゼ阻害剤であるα1-プロテイナーゼ阻害剤(alpha 1-PI)の効果を検査した。アトピー性皮膚炎は子供と大人の両方が罹患し、病因は確立されていない。我々は、セリンプロテアーゼ阻害剤が正常な血清濃度であっても、炎症があると、セリンプロテアーゼが過剰になり、組織障害のある局所でそれらの阻害物質の自然発生が欠乏していると過程した。
このパイロットスタディーは、濃度が20mg/mL水溶液であるα1-プロテイナーゼ阻害剤を使った非盲検試験であり、組み合わせてα1-プロテイナーゼ阻害剤の1%クリーム(ステージI)とα1-プロテイナーゼ阻害剤の5%クリーム(ステージII)を隔日投与で維持療法を行った。この試験に参加した患者6人全員は過去に強力なステロイドの局所療法に反応がなかった。安全性は、患者の主訴の注意深い臨床モニター、紅斑や浮腫などの皮診、血液生化学検査と完全血球計算の連続測定値で判断した。傷の治癒は連続写真で実証された。それぞれの患者から書面にしたインフォームドコンセントが得られた。すべての患者において隔日治療の開始から6~21日以内で臨床的に明らかな改善が見られた。α1-プロテイナーゼ阻害剤(alpha 1-PI)は6名のすべての患者において痛みと痒みを止め、瘢痕なしで組織の治癒を促進した。治療後120日経過しても臨床経過、身体検査あるいは血液検査上で治療の副作用は見られなかった。炎症がセリンプロテアーゼとそれらの自然に起こる抑制物質のバランスの不均衡による一例がアトピー性皮膚炎なのかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■犬の慢性アトピー性皮膚炎の臨床兆候とその診断に関する前向き研究
A prospective study on the clinical features of chronic canine atopic dermatitis and its diagnosis
Claude Favrot, Jean Steffan, Wolfgang Seewald & Federicca Picco

犬のアトピー性皮膚炎(CAD)は、環境アレルゲンや食物アレルゲンなど様々な問題となる物質に対する暴露と関連した多面的な疾患である。典型的な症状がないということが特徴的なので、このコンディションの診断は難しい。診断基準が報告されているが、主に臨床研究の犬に使われている。今回の研究の目的は、犬アトピー性皮膚炎の犬の大きな母集団における臨床兆候と症状を特徴づけ、これらの特徴が食物誘発アトピー性皮膚炎(FIAD)と非食物誘発性アトピー性皮膚炎(NFIAD)の違いを認識できるかどうかを確認し、このコンディションを診断するための基準を開発することであった。
焼きなまし法を使い、痒みのある犬の大規模で地理的に広範囲の母集団において、選択した診断基準を検査した。はじめに研究では犬のアトピー性皮膚炎の大きな母集団におけるシグナルメント、病歴、臨床兆候を記載し、食物誘発アトピー性皮膚炎(FIAD)と非食物誘発性アトピー性皮膚炎(NFIAD)と比較し、両方のコンディションが臨床的に区別可能かどうかを確認した。その後犬のアトピー性皮膚炎の診断と様々な臨床兆候の関係を算出し、感受性(80~85%)と特異性(79~85%)に関連した2つの診断基準が提案された。最終的にWillemseやPrelaudの診断基準と比較すると、これらの新しい診断基準は感受性と特異性がより高いことが証明された。これらの診断基準は食物誘発アトピー性皮膚炎(FIAD)と非食物誘発性アトピー性皮膚炎(NFIAD)の両方に適用することができる。(Dr.Kawano訳)

■解明されつつある皮膚バリア:アトピー性皮膚炎とハウスダストマイトに関する新しいパラダイム
Unravelling the skin barrier: a new paradigm for atopic dermatitis and house dust mites
Rosanna Marsella and Don Samuelson
アトピー性皮膚炎(AD)は、遺伝と環境要因が複雑に相互作用することによって惹起される慢性再発性炎症性皮膚疾患である。人において、皮膚バリアの機能障害がアレルゲンの侵入を増強し、アレルギー感作のリスクが増加する原因であると証明されており、考えられている。一度炎症が起こると、さらに皮膚バリア障害が起こり、感作の自己永続的サイクルへと導かれる。
犬のアトピー性皮膚炎は、臨床的にも免疫学的にも人とよく似ており、多くの類似性があるように思われる。皮膚バリア機能の原発的欠損もアトピーの犬(例えば高いIgE産生ビーグルを使った実験的モデル)の一部で存在しており、特に若い犬や局所的に病変が起こりやすい部位であると仮説が立てられる。皮膚バリア障害は臨床的に正常な皮膚に存在し、病変の発展で悪化し、経表皮水分喪失量の測定によって定量化できる。従って、アトピー性皮膚炎の病変の分布は、これらの部位における原発性皮膚バリア欠損にリンクするかもしれず、アレルゲンとの接触というシンプルな影響ではなく、アレルゲンの侵入に対する感受性の増加が人生の早期に存在しているのかもしれない。正常犬と比較すると、アトピー犬において臨床的に正常な皮膚でも層板小体分泌や細胞外二層構造に異常があることが超微細構造的に、透過電子顕微鏡で明らかである。病変の発症はこれらの変化(例えば細胞間スペース拡大、層板小体の放出、脂質層板の組織崩壊など)を悪化させる。免疫異常(‘内側/外側‘)によるものを主体とする犬のアトピー性皮膚炎のパラダイムは、皮膚バリア機能(‘外側/内側‘)の原発性欠損を含むようにシフトすべきであると提唱される。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬の病変部および非病変部における経表皮水分喪失量の増加とセラミド含有量の低下
Increased transepidermal water loss and decreased ceramide content in lesional and non-lesional skin of dogs with atopic dermatitis
Kenichiro Shimada, Ji-Seon Yoon, Toru Yoshihara , Toshiroh Iwasaki and Koji Nishifuji

この研究ではアトピー性皮膚炎(AD)の犬において、経表皮水分喪失量(TEWL)、皮膚水和そして角質間脂質含有量の変化を評価した。アトピー性皮膚炎の犬10頭と健常犬30頭の鼠径部皮膚で経表皮水分喪失量と皮膚水和を測定した。健常コントロール(12.3±2.3)よりアトピー性皮膚炎の犬で病変部(94.3±38.8g/m2/h)と非病変部(28.8 ± 9.5)の両方で有意に(P<0.05)経表皮水分喪失量は高かった。アトピー性皮膚炎の犬の病変部皮膚における水分含有量(15.8±7.0 AU)は、コントロール(24.2±8.8)と比べ有意に(P<0.05)低かった。しかしアトピー性皮膚炎の犬と健常犬の非病部皮膚における水分含有量では有意差が認められなかった。
アトピー性皮膚炎と健常犬の病変部と非病変部皮膚の脂質含有量を比較するため、角質層から抽出した角質間脂質を薄層クロマトグラフィーで定量した。アトピー性皮膚炎の犬の病変部皮膚(24.4±5.6%)と非病変部皮膚(25.6 ± 3.8%)におけるセラミドの相対量は、コントロール(31.4±6.9%)より有意に(P<0.05)低かった。逆にアトピー性皮膚炎と健常犬の犬において、コレステロールと遊離脂肪酸(FFA)の相対量に有意差がないことがわかった。さらに、アトピー性皮膚炎の犬の病変部と非病変部において、経表皮水分喪失量とセラミドの相対量に統計学的な関連性があるが、コレステロールと遊離脂肪酸との間には関連性がない。これらの結果から、人のアトピー性皮膚炎で見られる状況と同じように、減少したセラミド含有量がアトピー性皮膚炎の犬における経表皮水分喪失量を加速させることが強く示唆される。(Dr.Kawano訳)

■幼少期の犬の所有と接触と後のアレルギーへの発展
Dog ownership and contact during childhood and later allergy development.
Eur Respir J. 2008 Feb 6
Chen CM, Verena M, Bischof W, Herbarth O, Borte M, Behrendt H, Kramer U, von Berg A, Bauer CP, Koletzko S, Wichmann HE, Heinrich J; the LISA Study Group and the GINI Study Group.

アレルギーへの発展に対し、幼少期に犬を所有することの影響に関する研究は少なく、論争がある。乳児期における犬の接触および室内のエンドトキシン暴露と、6歳以上でのアレルギー感作およびアトピー性皮膚炎への発展との関連性について調査した。2つの進行中の出生コホートGINI (n=1962)と LISA (n=1193)で分析した。両方の研究において、子供達の犬との接触と彼らのアレルギー症状、医師の診断したアレルギー疾患に関する情報を追跡期間にアンケートを使って集めた。一般的な空気アレルゲンに対する特異的IgEを6歳で測定した。3ヶ月齢でハウスダストのサンプルを集め、ハウスダスト内のエンドトキシン量を測定した。
幼児期の早期での犬の所有は、明らかに低い確率の花粉と吸入抗原感作に関連したが、6歳までの犬の感作とアレルギー症状および疾患とは関連がなかった。所有しないで幼少期に犬と定期的な接触をしても、健康結果には関連しなかった。幼少期のハウスダストのエンドトキシン暴露と感作結果との間には関連性が見られなかった。結論として、幼少期の早期の犬の所有は吸入抗原感作への発展を防ぎ、この効果はエンドトキシンの同時暴露に対して帰することが出来ない。(Dr.Kawano訳)

■軽度から中等度のアトピー性皮膚炎の犬のCADESIスコアと痒みスコアに対する、Actinidia arguta(サルナシ)製剤であるEFF1001の効果を評価するためのランダム化二重盲検プラセボコントロール試験
A randomized, double-blind, placebo-controlled study to evaluate the effect of EFF1001, an Actinidia arguta (hardy kiwi) preparation, on CADESI score and pruritus in dogs with mild to moderate atopic dermatitis.
Vet Dermatol. 2009 Oct 20.
Marsella R, Messinger L, Zabel S, Rosychuck R, Griffin C, Cronin PO, Belofsky G, Lindemann J, Stull D.

犬のアトピー性皮膚炎(AD)は一般的であり、新しい治療が有益である。多施設ランダム化二重盲目プラセボコントロール試験で、軽度/中等度のアトピー性皮膚炎の犬において、Actinidia arguta(サルナシ)(EFF1001)の効果を検査した。研究は2つのステージに分けた。ステージ1は6週間で終えた。最初の2週間は、プレドニゾロン[1-3日目: 0.2 mg/kg (1日2回), 4-14日目: 0.2 mg/kg (1日おき)]を投与した。反応した犬は、プレドニゾロン0.2 mg/kg (1日おき)+割り当てられた検査対象物[プラセボあるいはEFF1001 (30 mg/kg)]を1日1回4週間与えた。ステージ1に反応した犬はステージ2へ進み、EFF1001単独で4週間使用した。臨床医はCADESIを使って病変をスコア化し、飼い主は痒みVASを使って痒みをスコア化した。
77頭の犬が参加し、76頭は14日でランダム化し、57頭(57頭/76頭=75%)の犬はステージ1(EFF1001が27頭とプラセボが30頭)を終えた。ステージ1の終わりで、57頭中35頭(35頭/57頭=61%)は反応(EFF1001が18頭でプラセボが17頭)し、ステージ2へ進んだ。ステージ1が完了した時点で、CADESIスコアは、グループ間で有意差は見られなかったが、痒みはEFF1001グループで減少し、有意に近づいた。ステージ2が完了した時点で、19頭(19頭/35頭=54%)が反応した(ステージ1では15頭/19頭= 79%がEFF1001で4頭/19頭= 21%がプラセボだった。)。ステージ2が完了した後、研究を通じてEFF1001を飲ませた犬は、ステージ2からはじめた犬より維持スコアあるいは改善スコアが3.5倍もよかった。EFF1001は長期的な使用後、有益な補助療法となることが結論付けられた。(Dr.Kawano訳)

特許公報を調べると、
「キーウィ抽出物(アクチニジア・アルグータ(Actinidia arguta)は、
1.IgEの産生のダウンレギュレーション
2.IgE抗体と細胞上のレセプターとの結合のダウンレギュレーション
3.ヒスタミン、PGD2又はLTC4のような媒介物質の放出の抑制又は防止
によって細胞の脱顆粒を妨げて、アレルギー応答を停止させることができる。」と記載されています。

■スイスにおける犬アトピー性皮膚炎および食物誘発アレルギー性皮膚炎の前向き研究
A prospective study on canine atopic dermatitis and food-induced allergic dermatitis in Switzerland
Vet Dermatol. June 2008;19(3):150-5.
F Picco, E Zini, C Nett, C Naegeli, B Bigler, S Rufenacht, P Roosje, M E Ricklin Gutzwiller, S Wilhelm, J Pfister, E Meng, C Favrot

狭義の犬アトピー性皮膚炎と食物誘発アレルギー性皮膚炎は犬によく見られる皮膚病で、しばしば臨床的に区別が付かないと考えられる。アトピー犬の集団を述べ、犬種素因を判定するいくつかの試みがなされているが、コントロール群として病院の集団が使用されることにより結果に偏りが出ることがある。この研究の目的は、スイスのアトピー性および食物アレルギー性の犬の集団を述べ、全てのスイスの犬の85%以上を復元するデータセットと比較することである。
スイスのいくつかの動物病院および教育病院で1年間行った研究で、259頭のアレルギー性皮膚炎のグループを述べ、アトピー性皮膚炎および食物誘発アレルギー性皮膚炎の犬種素因を判定し、両疾患の臨床症状および特徴を比較し、上位5犬種の臨床像の概要を述べる。(Sato訳)

■健常に対するアトピー性皮膚炎の犬の非病変部の皮膚におけるセラミドの性質決定と定量化
Characterization and quantification of ceramides in the nonlesional skin of canine patients with atopic dermatitis compared with controls
Lisa V. Reiter, Sheila M. F. Torres and Philip W. Wertz
The work was presented at the North American Veterinary Dermatology Forum 2008 and an abstract was published in Veterinary Dermatology 2008.

人間のアトピー性皮膚炎のように、犬のアトピー性皮膚炎(AD)の病因においても、異常な皮膚バリアが関与することを支持するエビデンスが増加している。アトピー性皮膚炎の人の研究では、セラミドが欠乏した異常な皮膚バリアが関連しており、セラミドが角質層(SC)における細胞間脂質ラメラの重要な構成成分であることを意味する。従って、この研究の目的は、健常な犬と比べてアトピー性皮膚炎の犬の角質層において、セラミドが不足しているかどうかを決定することだった。
14頭のアトピー性皮膚炎の犬と年齢、品種そして性別が同じで健常な14頭の犬の尾側腹部の非病変部の皮膚からシアノアクリレート剥離法を使って角質層のサンプルを採取し、セラミドのサブクラスと相対量を薄層クロマトグラフィーで盲目的に評価した。R統計コンピューターソフトウエアーを使ったペアT検定は、セラミド1とセラミド9の割合量が、健常と比較してアトピー性皮膚炎の犬の非病変部の皮膚において有意(それぞれP= 0.034 とP= 0.047)に低く、コレステロールの割合量は健常と比べてアトピー性皮膚炎の犬で有意(P= 0.016)に高かったことを明らかにした。さらにコレステロール/セラミド比は健常と比較してアトピー性皮膚炎群で有意(P= 0.014)に高かった。これらの所見はアトピー性皮膚炎の犬の皮膚におけるセラミド量の減少が、障害を受けた皮膚バリア機能に影響を与えるかもしれないことを示唆する。(Dr.Kawano訳)

■ペニシリウム属Mer-f17067より産生された新奇細菌性セラミダーゼ阻害剤セラミダスチン
Ceramidastin, a novel bacterial ceramidase inhibitor, produced by Penicillium sp. Mer-f17067.
J Antibiot (Tokyo). 2009 Feb;62(2):63-7. Epub 2009 Jan 9.
Inoue H, Someno T, Kato T, Kumagai H, Kawada M, Ikeda D.

皮膚におけるセラミドの減少はアトピー性皮膚炎の悪化要因のひとつである。皮膚はしばしば緑膿菌のようなセラミダーゼ産生細菌の感染をうける。その後、細菌性セラミダーゼは皮膚のセラミドを分解する。抗アトピー性皮膚炎薬の発展に伴い、我々はセラミダーゼ阻害剤を研究し、ペニシリウム属Mer-f17067の培養ブイヨンから細菌性セラミダーゼの新奇阻害剤であるceramidastinの発見へと繋がった。CeramidastinはIC(50) 値 6.25 mug/mlで細菌性セラミダーゼを抑制した。ここに我々はceramidastinの分離、物理化学的性状、構造決定そして生物学的活性を記載する。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎患者における白内障-症例報告と文献再調査
[Cataract in an atopic dermatitis patient–case report and review of the literature]
Klin Oczna. 2006;108(10-12):443-5.
Strzalka A, Przepiorkowski R.

アトピー性白内障は初老性白内障のいくつかの原因の一つであり、アトピー性皮膚炎に罹患した患者の20%にみられる。アトピー性白内障は両側性に最も一般的にみられ、急速な進行が特徴的である。若齢の患者が通常患活発で、アトピー性皮膚炎の発生率が増加するため、このタイプの白内障は、ますます重要な社会問題となる。この論文の目的は、クラクフのRegional Ophthalmologic病院で手術したアトピー性白内障の症例報告と文献再調査である。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の患者における皮膚バリアに対するピメクロリムスとベタメタゾンの異なる効果
Different effects of pimecrolimus and betamethasone on the skin barrier in patients with atopic dermatitis.
J Allergy Clin Immunol. 2009 May;123(5):1124-33.
Jensen JM, Pfeiffer S, Witt M, Brautigam M, Neumann C, Weichenthal M, Schwarz T, Folster-Holst R, Proksch E.

背景:皮膚のバリア機能障害を導く遺伝的欠損はアトピー性皮膚炎(AD)のリスク因子として認識されていた。環境のアレルゲンによる感作を防ぐために、アトピー性皮膚炎の患者に適用する薬物は損傷した表皮バリアを回復させることが必要不可欠である。

目的:我々は皮膚バリアにおいて、カルシニューリン阻害剤とコルチコステロイドの2つの一般的な治療の効果を観察した。

方法:ランダム化研究においてアトピー性皮膚炎の患者15名は、1日2回3週間ピメクロリムスで片方の上腕を、ベタメタゾンでもう片方を治療した。

結果:内部-外部のバリア機能のマーカーである角質層水分量および経皮水分蒸散量は両方のグループで改善した。外部-内部のバリア機能のマーカーであるdye penetrationも両方の薬物で減少した。ピメクロリムスで治療した皮膚では、バリア構造の電子顕微鏡検査で規則正しい角質脂質層と規則的な層板小体突起が示されたが、ベタメタゾンで治療した後は、不整合な細胞外脂質バリアと、ほんの一部にしか層板小体が満たされていなかった。両方の薬剤は上皮の分化を正常化し、表皮の過剰増殖を減少させた。ベタメタゾンは臨床症状の改善および表皮増殖を抑制することに優れていた。;しかし、上皮の菲薄を誘発する。

結論:この研究でベタメタゾンとピメクロリムスは、臨床と生物物理学的パラメーターおよび表皮分化を改善することが証明された。ピメクロリムスで表皮バリアを改善され、萎縮されなかったため、ピメクロリムスはアトピー性皮膚炎の長期治療により適しているかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬に推奨される市販入手可能な獣医療法食の効果
The efficacy of commercially available veterinary diets recommended for dogs with atopic dermatitis
Vet Dermatol. October 2008;19(5):280-287.
Katharina Glos, Monika Linek, Christine Loewenstein, Ursula Mayer, Ralf S Mueller

古くからアトピー性皮膚炎の犬の治療は、伝統的に経口止痒剤、アレルゲン特異免疫療法、局所治療である。
アトピー性皮膚炎の犬用に販売されている3つの市販獣医療法食(A-C)のうち1つ、あるいは広く販売されているスーパーマーケットの餌(D)を8週間給餌して臨床反応を比較する多施設、二重盲検、無作為研をアトピー性皮膚炎の犬50頭で行った。アトピー性皮膚炎はWillemse’s判定基準および鑑別診断の除外により診断した。
14頭の犬をAに、B、C、Dは12頭ずつ振り分けた。毎月フィプロニルスポットオン製剤を使用したノミ、ダニコントロールを研究に入る最低4週間前と研究期間中に投与した。確立されたスコアリングシステム(犬アトピー性皮膚炎の広がりと重症度指数、CADESI-03)を使用した病変スコア、ビジュアルアナログスケールを用いた掻痒レベルのオーナーの評価は毎月行った。
新しい食餌を与えて8週後、B食でCADESIおよび掻痒スコア(ウィルコクソン検定、P=0.043およびペアt-検定、P=0.012)、A食で掻痒スコア(ペアt-検定、P=0.019)、D食でCADESIスコア(ウィルコクソン検定、P=0.037)の有意な改善を認めた。C食には有意な変化が見られなかった。この研究結果をもとに、従来の治療に加え、アトピー性皮膚炎の犬の食餌の変更が補助治療法として有効かもしれない。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の管理における0.0584%のヒドロコルチゾンアセポネートスプレーの効果:ランダム化二重盲検プラセボコントロール試験
Efficacy of a 0.0584% hydrocortisone aceponate spray in the management of canine atopic dermatitis: a randomised, double blind, placebo-controlled trial
Tim Nuttall, Ralf Mueller, Emmanuel Bensignor, Maite Verde, Chiara Noli, Vanessa Schmidt, Christophe Reme

この研究では、犬のアトピー性皮膚炎(AD)における0.0584%のヒドロコルチゾンアセポネート(HCA)スプレー(Cortavance; Virbac SA, Carros, France)の効果を評価した。はじめに、犬アトピー性皮膚炎の範囲と重症度指数(CADESI-03)が50以上の犬を、ランダムにヒドロコルチゾンアセポネート(HCA)スプレー(n=15)あるいはプラセボ(n=13)(100cm2の病変を治療するために10㎝離れて2回スプレー)を1日に1回28日間使用するように振り分けた。その後1日1回ヒドロコルチゾンアセポネート(HCA)スプレーを使用した21頭の犬で改善が維持できていれば、投与量を減らして隔日あるいは1週間に2回の投与を42日以上使用した。CADESIスコア、痒みスコア(14cm ビジュアルアナログスケール)そして飼い主の満足度スコア(5ポイントスケール)を14日毎に記録した。血液学、生化学検査そして副腎皮質刺激ホルモン刺激試験をベースライン、28日そして70日で実施した(ヒドロコルチゾンアセポネートスプレーn=9; プラセボ n=7)。
全例解析を行った。ヒドロコルチゾンアセポネートスプレーの使用は、プラセボに比べて28日においてCADESIスコア(?61.4% vs ?13.4%, P=0.0069)と痒み(?38.8% vs +57.6%, P=0.0015)を有意に減少させた。スコアはヒドロコルチゾンアセポネートスプレーに続くベースラインと比較して、14日(CADESI ?50.5%, P<0.0021)と28日 (CADESI P<0.0001; 痒み P=0.018)で有意に減少したが、プラセボではそうではなかった。28日においてヒドロコルチゾンアセポネートスプレーを使用した犬において、CADESIスコアと痒みスコアが50%以上の減少した症例は、プラセボの犬の13頭中3頭(P=0.02)と13頭中1頭(P=0.04)と比べてそれぞれ15頭中11頭と15頭中7頭であった。飼い主の満足度スコアは、ヒドロコルチゾンアセポネートスプレー群において有意に(28日 P=0.0001)高かった。21頭中3頭は毎日の維持療法が必要となり、7頭は隔日での維持療法、6頭が1週間に2回の維持療法そして5頭が更なる治療が必要であった。被毛の長さは結果に影響を与えなかった。副作用あるいは血液パラメーターの変化は見られなかった。ヒドロコルチゾンアセポネートスプレーは70日まで安全であり、効果があることが証明された。しかし長期的な治療として許可があるわけではない。(Dr.Kawano訳)

■アレルギーの猫におけるマラセチア種の過剰増殖
Malassezia spp. overgrowth in allergic cats
Vet Dermatol. October 2007;18(5):316-23.
Laura Ordeix, Franca Galeotti, Fabia Scarampella, Carla Dedola, Mar Bardagi, Erica Romano, Alessandra Fondati

18頭の多病巣性マラセチア種過剰増殖を伴うアレルギーの猫を報告する。16頭はアトピー性皮膚炎の診断を受け、他は食物有害反応、1頭はマラセチア過剰増殖の診断後2ヶ月で安楽死された。全頭それ以外は健康で、猫白血病または免疫不全ウイルス感染を検査した猫(16/18)は全頭陰性だった。皮膚検査時、多病巣性脱毛、紅斑、痂皮、脂っぽい粘着性の茶色がかった鱗屑が全ての猫に不規則に分布しているのが見て取れた。顔面皮膚(n=11)、頚部腹側(n=6)、腹部(n=6)、耳道(n=4)、あご(n=2)、耳介(n=2)、趾間(n=1)、爪の皺皮膚(n=1)における細胞診で、細菌感染を伴うまたは伴わないマラセチア種の過剰増殖が明らかとなった。あらに2頭の猫の損傷性皮膚からMalassezia pachydermatisが分離された。7頭にアゾール単独療法が処方され、8頭は、アゾールおよび抗菌療法、3頭はアゾールと抗菌および抗炎症療法が行われた。併用療法を行った11頭とアゾール単独の7頭中5頭は治療から3-4週間後、痒みおよび皮膚病変がかなり少なくなった。
アレルギーの猫、特に皮膚検査で脂っぽい粘着性の茶色い鱗屑を呈す猫で、マラセチア種の過剰増殖が二次的な皮膚の問題を起こすかもしれない。抗真菌治療単独に対する良好な反応は、犬と同様にマラセチア種がアレルギーの猫でも痒みおよび皮膚病変の部分的原因となっているかもしれないと示唆する。(Sato訳)

■花粉に対する子供のアレルギーにおける超急速法による高用量舌下免疫療法の効果と安全性
Efficacy and safety of high-doses sublingual immunotherapy in ultra-rush scheme in children allergic to grass pollen.
Clin Exp Allergy. 2009 Mar;39(3):401-8. Epub 2008 Dec 23.
Stelmach I, Kaczmarek-Wozniak J, Majak P, Olszowiec-Chlebna M, Jerzynska J.

背景: 舌下免疫療法(SLIT)の使用頻度は増加しているが、小児喘息における舌下免疫療法の効果に関するデータは限られる。

目的:私たちの研究目的は、花粉に対するアレルギー性気管支喘息の子供に超急速法で季節前と季節中に投与した高用量舌下免疫療法の効果と安全性を評価することだった。

方法:花粉に敏感な16~17歳の喘息に罹患している15人の子供が、超急速導入で5つの花粉の標準的な抽出物として舌下免疫療法(Staloral 300 IR, Stallergenes SA, 25 microg major allergens)の効果と安全性を2年間の前向きランダム化二重盲検プラセボコントロール試験で調査した。

結果: 舌下免疫療法は喘息の徴候スコア(41% vsプラセボ群)を明らかに改善し、鼻の症状(25% vsプラセボ群)と緊急薬剤の使用(10% vsプラセボ群)が減少し、1秒間努力呼気容量が増加したが、眼の症状、鼻の過敏反応、25%と75%の間の肺活量における最大呼気流量と努力呼気容量に効果はなかった。舌下免疫療法後IgEとIgG4の血清濃度に変化はなかった。舌下免疫療法の2度目の季節後、気管支の反応性亢進の改善が観察された:しかしプラセボと比較してこの効果は有意ではなかった。舌下免疫療法群の全ての患者において、優位な局所反応が初年度では患者の59%で記録され、2年目では患者の35%で記録されている。

結論:2年間の高用量超急速季節内舌下免疫療法は安全であり、多発する症状投薬スコアが減少することが我々の研究から示された。(Dr.Kawano訳)

■スウェーデンにおけるボクサー、ブルテリア、ウエストハイランドホワイトテリアの中で犬アトピー性皮膚炎に対するリスクファクターの症例-コントロール研究
A case-control study of risk factors for canine atopic dermatitis among boxer, bullterrier and West Highland white terrier dogs in Sweden
Vet Dermatol. October 2007;18(5):309-15.
Ane Nodtvedt, Kerstin Bergvall, Marie Sallander, Agneta Egenvall, Ulf Emanuelson, Ake Hedhammar

ボクサー、ブルテリア、ウエストハイランドホワイトテリアのハイリスク犬種における犬アトピー性皮膚炎(CAD)の発症に対する環境および食餌性リスクファクターを症例-コントロール研究で評価した。スウェーデンにおける12施設からの58症例と犬種、生年月日がマッチした61頭の非罹患犬において、それらの相関重要性を評価するのにロジスティック回帰モデルを使用した。
最終モデルは、同じ所からの犬が独立していると考えられなかったとき、’examining veterinarian’と呼ばれる確率的誤差を含めた。CAD発症のオッズに対し、性別、生まれた季節、環境、ワクチン、寄生虫駆除の影響は見られなかった。主な所見は、母犬授乳中に非市販製品を含む食餌を与えることが、その子犬におけるCADの発症に保護作用をもたらすということだった。CAD発症のオッズは、ホームメード/非市販食を与えなかった雌犬の子犬で二倍高かった(オッズ比の95%信頼区間(CI):1.2-3.8)。授乳中の雌犬にホームメード食を与えなかった割合の集団は、0.4(95%CI:0.04-0.63)だった。CAD発症における食餌の潜在的保護作用の所見をさらに支持する無作為コントロール臨床試験が必要である。(Sato訳)

■水溶性ワクチンでアレルゲン特異的免疫療法を受けたアトピー性皮膚炎の犬におけるコナヒョウヒダニ特異的IgGの反応
Dermatophagoides farinae-specific IgG responses in atopic dogs undergoing allergen-specific immunotherapy with aqueous vaccines.
Vet Dermatol. 2008 Aug;19(4):215-20.
Hou CC, Griffin CE, Hill PB.

アレルゲン特異的免疫療法(ASIT)が成功する分子および免疫メカニズムは完全には解明されていない。この研究の目的は、水溶性ワクチンでアレルゲン特異的免疫療法を受けたアトピー性皮膚炎の犬におけるコナヒョウヒダニ特異的IgGの変化を特徴付けることだった。皮内反応でコナヒョウヒダニに陽性反応を示した15頭のアトピー性皮膚炎の犬に対し、標準的なプロトコールに従って最短で2ヶ月の期間、水溶性ワクチンで治療した。治療前と治療中に血清検体を採取し、コナヒョウヒダニから分離した蛋白を含むウェスタンブロットの検索に使用した。
IgG反応はポリクローナル山羊抗犬IgG抗体と発色基質3,3′-diaminobenzidineを使って検出した。ブロットはIgG濃度と関連した強さと、同様にバンドの数と分子量を評価する半定量的デジタル画像分析システムを使って分析した。アレルゲン特異的免疫療法に先立って、すべての犬は、コナヒョウヒダニの様々な抗原に対するアレルゲン特異的IgG反応を示した。アレルゲン特異的免疫療法中、ダニからの様々な抗原に対するコナヒョウヒダニ特異的IgG抗体の総量は明らかに(P = 0.015)増加した。Der f 15でありそうな98-kDaバンド(P = 0.015)、50と70kDa(P=0.012)の間の分子量を持ったバンド、また30から45 kDa(P=0.035)の間のバンドの明らかな増加が観察された。これらの所見からアレルゲン特異的免疫療法は犬のアトピー性皮膚炎に関与が知られているアレルゲンに対するIgGブロッキング抗体を引き起こすという仮説を支持する。(Dr.Kawano訳)

■小児喘息における酵素的そして非酵素的な抗酸化系の包括的な評価
A comprehensive evaluation of the enzymatic and nonenzymatic antioxidant systems in childhood asthma.
2008 Jul;122(1):78-85. Epub 2008 May 16.
Sackesen C, Ercan H, Dizdar E, Soyer O, Gumus P, Tosun BN, Buyuktuncer Z, Karabulut E, Besler T, Kalayci O.

背景:喘息における酸化ストレスに対する十分なエビデンスがあるが、抗酸化防御システムに関する情報は限られる。

目的:喘息に罹患している子供の大きなグループにおいて、酵素的そして非酵素的抗酸化防止剤の両方の様々な成分の包括的な評価をすること

方法:軽度の喘息に罹患した164人の子供と173人の健康な子供がこの研究に参加した。還元型グルタチオン、アスコルビン酸、α-トコフェロール、リコピン、β-カロテン、グルタチオン合成に関与しているアミノ酸と酸化に感受性のあるアミノ酸はHPLCで測定し、グルタチオン・ぺルオキシダーゼとスーパーオキサイド・ジムスターゼなど酵素の濃度はELISAで測定した。アトピー、BMI、タバコの煙暴露そしてペット所有率などを調節して比較した。

結果:グルタチオン・ペルオキシダーゼとスーパーオキサイド・ジムスターゼの酵素濃度と還元型グルタチオン、アスコルビン酸、α-トコフェロール、リコピンそしてβ-カロテンなどの抗酸化システムの非酵素的成分の濃度は健康なグループに比べて喘息を伴う子供の方が有意に(各P < .001)低かった。グルタチオン合成に関与するアミノ酸のうちグリシンとグルタミンは喘息の子供で有意に(P < .001)低かった。酸化的ストレスに感受性のあるアミノ酸の大部分が喘息を伴う子供においてより低い濃度(P<.05)を示した。

結論:小児喘息は酵素的そして非酵素的抗酸化防御の両方の様々な成分において明らかな減少と関連がある。(Dr.Kawano訳)

■リコピンは喘息のマウスモデルにおいて卵白アルブミン誘発気道炎を抑制する。
Lycopene suppresses ovalbumin-induced airway inflammation in a murine model of asthma.
Biochem Biophys Res Commun. 2008 Sep 19;374(2):248-52. Epub 2008 Jul 16.
Lee CM, Chang JH, Moon DO, Choi YH, Choi IW, Park YM, Kim GY.

この研究において、我々はリコピンが卵白アルブミン(OVA)誘発マウス喘息モデルにおいて炎症メディエーターを調整するかどうか観察する。これに取り組むために、マウスに卵白アルブミンを感作させ、暴露し、それから最後の卵白アルブミン暴露前からリコピンで治療した。リコピンの投与は、メサコリンの吸入に対する卵白アルブミン誘発気道反応性亢進を明らかに緩和した。リコピンの投与は気管支肺胞洗浄液内の炎症性免疫細胞の浸潤も明らかに抑制する結果となり、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-9のゼラチン分解活性と好酸球ペルオキシダーゼの発現を減弱させた。さらにリコピンは、卵白アルブミンに暴露させたマウスにおいて増加したGATA-3mRNAのレベルとIL-4発現を減少させた。しかし、リコピンを暴露したマウスにおいてT-bet mRNAレベルとIFN-γ発現は増加した。これらの所見は喘息のマウスモデルにおける効果に関して、リコピンの免疫薬理学的役割に関する新しい洞察を提供する。(Dr.Kawano訳)

■スペイン、ガリシア地方における犬のアトピー性皮膚炎のハウスダストと貯蔵ダニの重要性
Importance of house dust and storage mites in canine atopic dermatitis in the geographic region of Galicia, Spain.
Acta Vet Hung. 2008 Jun;56(2):163-71.
Goicoa A, Espino L, Rodriguez I, Puigdemont A, Brazis P, Rejas J.

ダニに対する感作はアトピー性皮膚炎の犬で頻繁である。犬のアトピー性皮膚炎における主要なダニ属はDermatophagoidesである。犬における貯蔵ダニ抗原の重要性は議論の余地がある。
この研究の目的は、スペインでも高温多湿のガリシア地方のアトピー性皮膚炎の犬において、FcイプシロンRIアルファに基づいた免疫グロブリンE(IgE)インビトロ試験を使って、貯蔵ダニ(Lepidoglyphus destructor と Tyrophagus putrescentiae)とイエダニ(Dermatophagoides farinae と D. pteronyssinus)に対する感作率を評価することだった。
アトピー性皮膚炎に罹患し、検出可能な特異血清IgE濃度を示す95頭の犬を使って実験を行った:イエダニに対する感作は87.4%検出され、一方91.6%の犬が貯蔵ダニに対して陽性だった。これらの結果からこの特異的な地域における貯蔵ダニの重要性が示される。(Dr.Kawano訳)

■βカロテンの給餌はマウスの血清IgE濃度を下降調節し、Ⅰ型アレルギー反応を抑制する。
The feeding of beta-carotene down-regulates serum IgE levels and inhibits the type I allergic response in mice.
Biol Pharm Bull. 2004 Jul;27(7):978-84.
Sato Y, Akiyama H, Suganuma H, Watanabe T, Nagaoka MH, Inakuma T, Goda Y, Maitani T.

約1ヶ月間腹腔内に卵白アルブミン(OVA)を投与して免疫を施したBALB/c マウスに、βカロテンを含む餌を経口的に投与した。マウスの血清卵白アルブミン特異的IgE抗体価、卵白アルブミン特異的IgG1抗体価そして卵白アルブミン特異的IgG2a抗体価を測定した。
βカロテンを投与したマウスの卵白アルブミン特異的IgE抗体価と卵白アルブミン特異的IgG1抗体価は明らかに抑制された。一方、βカロテンを投与した卵白アルブミン特異的IgG2a抗体価は、コントロールマウスのそれより有意に高かった。βカロテン投与による卵白アルブミン特異的IgE抗体価の抑制は用量依存性であった。
我々は活発な全身性アナフィラキシーにおけるβカロテン投与に対する効果も検査した。卵白アルブミンで免疫を施したマウスに対するβカロテンの給餌は、抗原刺激によって誘発された体温の即効性の低下を抑制した。さらに活発な全身性アナフィラキシーの状況でβカロテンを投与したマウスにおいて、血清ヒスタミン濃度の増加はコントロール群と比べて低かった。
それから、我々は試験管内において卵白アルブミンによる再刺激につづくマウスの脾細胞からのサイトカイン産生のパターンを検査した。βカロテンを与えたマウスの脾細胞は対照群に比べIFN-γ、IL-12そしてIL-2をより産生した。対照的にベータカロテンを与えたマウスの脾細胞はコントロール群に比べIL-4、IL-5、IL-6、IL-10の産生はより少なかった。さらにリアルタイム定量RT-PCR法を使って脾細胞のIFN-γのmRNA量を分析すると、βカロテンを与えたマウスの脾細胞の方がより高濃度であることが明らかとなった。これらの所見からβカロテンの給餌は、特異的IgEと特異的IgG1産生と抗原誘発アナフィラキシー反応を抑制し、ヘルパーT細胞のTh1-Th2バランスを改善することが示唆される。(Dr.Kawano訳)

■多抗原に過敏症があるアトピー性皮膚炎の犬におけるコナヒョウヒダニ特異的免疫療法:ランダム化2重盲検プラセボコントロール試験
Dermatophagoides farinae-specific immunotherapy in atopic dogs with hypersensitivity to multiple allergens: A randomised, double blind, placebo-controlled study.
Vet J. 2008 Jul 22.
Willemse T, Bardagi M, Carlotti DN, Ferrer L, Fondati A, Fontaine J, Leistra M, Noli C, Ordeix L, Scarampella F, Schleifer S, Sinke J, Roosje P.

コナヒョウヒダニに対して皮膚テスト反応性があり、共に血清IgEが上昇が見られ、少なくともさらなる1つのアレルゲンに反応しているアトピー性皮膚炎の25頭の犬でランダム化2重盲検プラセボコントロール試験を行った。コナヒョウヒダニを制限した免疫療法液(n=14)あるいはプラセボ(n=11)のどちらかで治療し、臨床的なスコアシステム(SASSAD)と痒みのアナログスケールスコアを使って治療の開始後6週と3、5、7、そして9ヶ月で評価した。コナヒョウヒダニを制限した治療液とプラセボは痒みおよび皮膚症状の両方において同等(P>0.05)の効果であった。この研究の結果から、コナヒョウヒダニに加えて環境アレルゲンに対する過敏症がもととなるアトピー性皮膚炎の犬において、コナヒョウヒダニを制限した免疫療法はこの疾患をコントロールするには不十分であることが示された。結果的にアレルゲン特異的免疫療法の治療液は検査結果に合わせて作製すべきである。(Dr.Kawano訳)

■アトピーの犬の角質層バリアにおける表皮脂質製剤の局所投与の効果
Effects of a topically applied preparation of epidermal lipids on the stratum corneum barrier of atopic dogs.
J Comp Pathol. 2008 May;138(4):197-203. Epub 2008 Apr 2.
Piekutowska A, Pin D, Reme CA, Gatto H, Haftek M.

犬のアトピー性皮膚炎(AD)は、人の疾患で見られる状態と同じように、超微細構造的に角質層(SC)における層状脂質(LLs)の組織崩壊によって特徴付けられる。生検サンプルの調査に基づくこの研究は、犬の表皮脂質の発現を観察し、固定後、電子顕微鏡と四酸化ルテニウムで、アトピー性皮膚炎の犬5頭の皮膚における構造欠損における新しい局所性皮膚脂質複合体(SLC)の効果を定量的に評価するために実施された。アトピーの犬における無病変の皮膚は、層状脂質の数が減少し、器質性が乏しいという点において、健康な犬の皮膚とは違っていた。
アトピー性皮膚炎の犬の無病変皮膚への皮膚脂質複合体の繰り返しの投与後に、角質層の最も深い部分で多数の層状脂質が観察された。同じ犬の治療していない皮膚(コントロール)から比較可能な生検サンプルにおいて、層状脂質は角質細胞間腔のたった31.8%だったが、治療した場合は角質細胞間腔の74%を占拠していた。対照的に、層状脂質は健常犬の角質層において深部の角質細胞間腔の89.5%を満たしていた。アトピー性皮膚炎の無病変の皮膚の治療後に、生きている表皮と角質層の境界に、多くのケラチノソームが観察された。短い層状脂質ディスクの堆積は、治療したアトピーの犬において、新しく形成された角質層の緻密部で見られた総層状脂質の57.6%に相当した。
皮膚脂質複合体での治療は、内因性の角質層脂質の産生と分泌を刺激する、つまり改善した表皮バリアの形成に貢献することが示された。(Dr.Kawano訳)


■低用量メトトレキサート療法は遅発性アトピー性皮膚炎と特発性湿疹に効果がある。
Low dose methotrexate therapy is effective in late-onset atopic dermatitis and idiopathic eczema.
Isr Med Assoc J. 2008 Jun;10(6):413-4.
Zoller L, Ramon M, Bergman R.

背景: アトピー性皮膚炎とアトピー性湿疹は、皮膚の湾曲部に好発する痒みのある炎症性皮膚疾患である。成人でも発生すると報告があるが、ほとんどの症例は子供の時に始まる。局所のコルチコステロイドあるいはカルシニューリン阻害剤に対して抵抗性である中等度から重度の患者は、光線療法や全身性免疫抑制剤などのセカンドライン治療が必要となるかもしれない。メトトレキサート療法は成人のアトピー性皮膚炎において有効な免疫抑制剤として提案されている。

目的:新たに発症したアトピー性皮膚炎、あるいは特発性湿疹がある成人における低用量メトトレキサート療法の効果をさらに決定すること。

方法: 2004年~2006年までに我々の病院において、メトトレキサートで治療した新たに発症したアトピー性皮膚炎あるいは特発性湿疹がある全ての成人患者を研究した。すべての症例は経口の抗ヒスタミン剤と局所のコルチコステロイドクリームによる長期療法に失敗している。1週間に5日の葉酸サプリメントと共にメトトレキサート10~20mgを経口的に1週間に1回投与した。追加治療は主に皮膚軟化薬だった。全体の治療期間中、研究者は臨床反応の包括的な評価を行った。

結果: 遅発性アトピー性皮膚炎(n = 6)あるいは特発性湿疹(n = 3)と診断した9人の患者をメトトレキサートで治療した。すべての患者は薬に反応した。初期反応は3~7週後に見られた。6人の患者はメトトレキサート療法開始後3ヶ月で完全寛解に達し、3人の患者は明らかに改善した。1人の患者の状態はメトトレキサートにより完全寛解に達し、完全に休薬した後に悪化した。治療中に重篤な副作用は見られなかった。

結論: 低用量メトトレキサート療法は、局所あるいはそのほかの全身療法に反応しない遅発性アトピー性皮膚炎と特発性湿疹の患者に対して効果的な代替療法となる。(Dr.Kawano訳)

■正常犬における皮内反応に対するベタメサゾン点耳の影響
Effects of otic betamethasone on intradermal testing in normal dogs
Vet Dermatol. August 2007;18(4):205-10.
Pedro J Ginel, Cristina Garrido, Rosario Lucena

外耳炎はアトピー犬でよく見られ、強力なグルココルチコイド点耳薬で治療されることが多い。それらの製剤は、副腎を抑制し、皮膚試験反応性に影響する可能性がある。この研究の目的は、正常犬においてベタメサゾンを含む耳用製剤が皮膚の反応性を低下させる可能性があるかどうかを判定することだった。クロスオーバー盲検に16頭の実験用ビーグルを使用した。犬を2つの群にわけ、1群はプラセボ、他の群はベタメサゾン含有耳用製剤(Otomax)1日2回を2週間投与した。4週間のウォッシュアウト期間の後、治療を切り替えた。投与期間の0日、14日目にリン酸ヒスタミン(1 : 100,000 and 1 : 200,000 w/v)、その地域の一般的なアレルゲンで皮内試験を行った。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験を副腎抑制を調査するため治療前後に行った。
ベタメサゾン点耳の2週間後、Dermatophagoides farinae(P = 0.0034)、Cynodon dactylon(P = 0.0459)、ヒスタミン1 : 100,000 w/v(P = 0.0028)反応は有意に低下した。治療前ACTH後血清コルチゾール濃度、両治療後の濃度に統計学的差はなかった(P=0.6362)。ベタメサゾンはわずかだが、血清アルカリフォスファターゼの統計学的有意な上昇をもたらせた(P = 0.0002)。その増加にもかかわらず、値は正常範囲内だった。
ベタメサゾン点耳は、副腎を抑制しなかったが、1 : 100,000 w/vヒスタミン、D. farinae、C. dactylonの皮内反応を軽度抑制したと締めくくる。(Sato訳)

■アトピー性皮膚炎の治療あるいは予防としてのプロバイオティクス:ランダム化コントロール試験からのエビデンス調査
Probiotics for the treatment or prevention of atopic dermatitis: a review of the evidence from randomized controlled trials.
Am J Clin Dermatol. 2008;9(2):93-103.
Betsi GI, Papadavid E, Falagas ME.

プロバイオティクスは、適当量で管理すると宿主に健康的な利益を与える生きた微生物と定義される。子供のアトピー性皮膚炎(AD)の治療あるいは予防においてプロバイオティクスの効果のエビデンスを統一するため、我々はアトピー性皮膚炎の治療としてプロバイオティクスを評価した10例と、予防としてプロバイオティクスを評価した3例、あわせて13例の適切なランダム化(プラセボ)-コントロール試験(RCTs)の結果を調査した。
9例のRCTsにおける主な結果測定はSCORAD(SCORing Atopic Dermatitis)で変化した。プラセボ投与後に比べ、アトピー性皮膚炎の幼児あるいは子供に1~2ヶ月間プロバイオティクスを投与後、SCORADは統計学的に明らかに減少したと4例のRCTsでは示した一方、2つのRCTs でアトピー性皮膚炎と関連したIgEがある子供に乳酸菌だけで治療した後にSCORADは明らかに減少した。これらの6例のRCTsのうち4例において、臨床改善はいくつかの炎症マーカーにおける変化と関連があった。これらの試験の中で1例は、食事に感作された子供においてプラセボで治療した後よりプロバイオティクスで治療した後のほうがより有意にSCORADが低かったが、3例のRCTsで、 SCORADの変化はプロバイオティクスで治療した子供とプラセボで治療した子供の中で統計学的に有意ではなかった。ほとんどのRCTsにおいて、プロバイオティクスはプラセボに比べてIFN-γ、IL-4、TNF-α、ECPあるいはTGF-βなどの統計学的に有意な変化を引き起こさなかった。アトピー性皮膚炎の予防におけるプロバイオティクスの効果に関して、2例のRCTsで、プロバイオティクスを受けたアトピーにハイリスクな乳児は、プラセボを受けた乳児より初めの2年間、アトピー性皮膚炎になる頻度が明らかに少なかった。
これらの研究において、母親は周産期に他のプロバイオティクスと共にあるいはなしでLactobacillus rhamnosus GGを摂取し、続いて初めの6カ月いくつかのプロバイオティクスで乳児を治療した。しかし、他の試験では、プラセボを投与した乳児と、初めの6ヵ月L. acidophilusを受けたアトピーの母親の乳児の間で、はじめの1年の間アトピー性皮膚炎の発生頻度も重症度も統計学的な違いがなかった。
プロバイオティクス、特にL. rhamnosus GGはアトピー性皮膚炎の予防に効果的であるように思える。評価したRCTsの過半数で測定された炎症マーカーの大部分の明らかな変化は見出されなかったが、評価したRCTsの約半分において、アトピー性皮膚炎の重症度の減少も見られた。プロバイオティクスがアトピー性皮膚炎の治療あるいは予防に役立つかどうかを解明するためには、より多くのRCTsを行う必要がある。(Dr.Kawano訳)

■市販のドライのドックフードの貯蔵庫ダニ汚染の評価
Evaluation of storage mite contamination of commercial dry dog food
Vet Dermatol. May 2008;0(0):.
Pilar Brazis, Montserrat Serra, Alex Selles, Fabienne Dethioux, Vincent Biourge, Anna Puigdemont

貯蔵庫ダニは、アトピー性皮膚炎の犬における重要なアレルゲンと考えられるかもしれない。Tyrophagus、Acarus、Lepidoglyphus種に対する高感作率がアトピー犬で報告されており、ドライのペットフードは、貯蔵庫ダニ暴露の源である可能性が示唆されている。
この研究の目的は、市販ドライフードの貯蔵庫ダニ汚染、および貯蔵時間やその状況が汚染のリスクにどのように影響しえるのかを評価することだった。
皮膚疾患のために作られた10種類の異なる市販プレミアムのドライドックフードを選択した。袋を開封し、2つの異なる環境下で6週間保管した。異なるタイムポイントで各袋からサンプルをとり、顕微鏡、グアニン試験、貯蔵庫ダニ特異トラップ、修正浮遊法により分析した。開封時、Acarus siroと同定した2匹の貯蔵庫ダニが浮遊法により10種の袋のうち1つから分離され、貯蔵庫ダニがドライのドライフードの袋をパックしたときに存在しえることを示した。ダニ生育に適した環境下(摂氏23.2±2.1度、相対湿度71±5.6%)で5週間貯蔵した後、10種類の餌うち9種類からダニが顕微鏡で検出された。ダニが浮遊法で認められたとき、最も認められた汚染種はTyrophagus spp.だった。それらの結果は、ドライのドッグフードが貯蔵庫ダニ生育に適した培地となりえ、環境と保管状況が食物汚染およびダニ発生に影響するかもしれないことを示す。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の管理における必須脂肪酸が豊富な食事の効果:ランダム化単盲検クロスオーバー試験
Efficacy of an essential fatty acid-enriched diet in managing canine atopic dermatitis: a randomized, single-blinded, cross-over study.
Vet Dermatol. 2008 Jun;19(3):156-62.
Bensignor E, Morgan DM, Nuttall T.

必須脂肪酸(EFA)や他の栄養素が豊富な高品質の食餌は、犬のアトピー性皮膚炎(AD)を回復させるというエビデンスがある。この研究ではランダム化単盲検クロスオーバー試験で、ある食餌(ユカヌバFP)と自家製で相当する食餌(魚とポテト)を比較した。通年性アトピー性皮膚炎の20頭の犬を1ヶ月間、試験食(グループA)あるいはコントロール食(グループB)にランダムに振り分け、さらに1ヶ月対照の食事を与えて経過を観察した。Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index (CADESI version 2)と痒み(視覚的アナログ目盛法)スコアを0日、30日、60日で記録した。それぞれのグループの8頭の犬は研究を完了した。
試験食を与えたとき、CADESIスコアは明らか(group A P < 0.01; group B P < 0.001)に減少し、コントロール食を与えた時は増加(group A P < 0.05)あるいは維持した。試験食を与えた16頭中15頭でCADESIスコアは減少したが、すべての症例において50%以下となった。コントロール食に比べ試験食を与えた時、痒みスコアも減少したが、これはグループA(P = 0.027)だけ有意だった。痒みは試験食を与えた16頭中11頭で減少したが、50%あるいはそれ以上の減少は2頭だけだった。この試験で犬のアトピー性皮膚炎におけるユカヌバFPの効果を証明することができたが、ほとんどの症例で補助的治療が必要となるだろう。メカニズムは不明だが、増加し、バランスのとれたEFA濃度が影響しているかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■IgE介在性食物過敏症疾患
IgE-MEDIATED FOOD HYPERSENSITIVITY DISORDERS.
Georgian Med News. 2008 Apr;(157):39-44.
Gotua M, Lomidze N, Dolidze N, Gotua T.

食物アレルギーは過去20年間、特に先進国において重大な健康に関する関心となっている。一般的な統計では子供の約4~6%と大人の1~3%が食物アレルギーを経験している。この文献ではIgE介在性食物過敏症疾患を見直す。IgE介在性食物アレルギーの疫学、メカニズム、臨床症状、遺伝操作された作物、診断、予防そして治療を議論する。子供のIgE介在性食物アレルギーの90%以上は牛のミルク、鶏卵、醤油、ピーナッツ、木の実、小麦、魚そして甲殻類によって惹起されることが研究で示されている。また食物アレルギーの原因は食品添加剤、遺伝子組み換え作物でもあります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーのリスクファクターには、喘息や原因となる食物に対する過去のアレルギー反応が含まれる。100万の人口あたり年間4症例という発生率で年間約500人が死亡する全身性のアナフィラキシーとアナフィラキシー様反応の最も一般的な原因の1つが食物アレルギーである。胃腸兆候に加えて、肥満細胞と好塩基球からのメディエイターの大量放出で引き起こされた蕁麻疹、血管性水腫、アトピー性皮膚炎、口腔シンドローム、喘息、鼻炎、結膜炎、低血圧、ショック、および心不整脈を経験するかもしれない。食物アレルギーの診断は病歴、詳細な食物分析、皮膚検査、血清の特異的IgE測定、暴露試験に基づく。治療と予防は食物回避、自己接種可能なエピネフリンの適用、H1とH2抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗ロイコトリエン剤、プロスタグランジン合成抑制剤、クロモグリク酸ナトリムなどが含まれる。(Dr.Kawano訳)

コメント:クロモグリク酸ナトリム(経口インタール)は、腸管粘膜上でマスト細胞の脱顆粒を抑制することで高分子物質の腸管内透過性亢進が抑制され、食物抗原の血中移行を阻止するとされています。
インタールを経口投与した場合の血中移行率は0.8%程度で腸管からほとんど吸収されず、アレルギーの関与が明らかなアトピー性皮膚炎患児におけるインタール内服薬の有効率は60%と言われています。

■犬の皮内反応におけるアレルゲンの閾値濃度の決定と2つの異なるヒスタミン濃度の評価
Determination of threshold concentrations of allergens and evaluation of two different histamine concentrations in canine intradermal testing.
Vet Dermatol. 2004 Oct;15(5):304-8.
Hensel P, Austel M, Medleau L, Zhao Y, Vidyashankar A.

この研究の目的は、犬の皮内反応における最適なヒスタミン濃度とアレルゲンの閾値濃度を決定することだった。30頭の健常犬を、ヒスタミンの2つの異なる濃度と、それぞれのアレルゲンの4つの異なる濃度で検査した。最適なヒスタミンの濃度は1:10 000 w/vで決定した。1:500 w/vだったノミを除いて、イネ科、草、樹木、カビそして昆虫の全てで閾値濃度は少なくとも1750 PNU/mLだった。Dermatophagoides farinae とTyrophagus putrescentiaeは 100 PNU/mLだったが、Dermatophagoides pteronyssinusでは、最適な閾値濃度は250 PNU/mLだった。ヒトのフケを除く全ての上皮の閾値濃度は少なくとも1250 PNU/mLだった。ヒトのフケの最適閾値濃度は300 PNU/mLだった。我々の結果では、現在のヒスタミン濃度の1:100 000 w/vとほとんどのイネ科、草、樹木、カビ、上皮そして昆虫に使用している1000 PNU/mLは犬の皮内反応には不適切かもしれない。(Dr.Kawano訳)

■健常犬とアレルゲン特異的免疫療法を受けているアトピー性皮膚炎の犬において、犬の調節性T細胞集団、血清IL-10そしてアレルゲン特異的IgE濃度の定量
Quantitation of canine regulatory T cell populations, serum interleukin-10 and allergen-specific IgE concentrations in healthy control dogs and canine atopic dermatitis patients receiving allergen-specific immunotherapy.
Vet Immunol Immunopathol. 2008 Jun 15;123(3-4):337-44. Epub 2008 Feb 17.
Keppel KE, Campbell KL, Zuckermann FA, Greeley EA, Schaeffer DJ, Husmann RJ.

犬のアトピー性皮膚炎(AD)は人のADと多くの臨床的、免疫学的類似性がある。調節性T細胞(Treg)はIgE産生と関連したアレルギー性炎症のダウンレギュレーションなど様々な免疫抑制作用をもつTリンパ球の系統とは異なる。抗原誘発性調節性T細胞は典型的にIL-10などのサイトカインの産生を通じて免疫恒常性を調節する。人のADと似た免疫学的類似性を考えると、調節性T細胞とそれらが放出するサイトカインは、犬でも同じように重要な役割を果たすかもしれない。交叉反応性FoxP3抗体は、健常犬と一年以上免疫療法を行っているアトピー性皮膚炎の犬の両方の血液において、CD4(+)T細胞のサブセットを認識するのに使われた。健常犬において長期にわたり、調節性T細胞の割合に明らかな違いがなかった。コントロールグループと比較して免疫療法グループは6、9そして12ヶ月での調節性T細胞の割合の明らかな増加が観察された。
免疫療法グループにおいて、研究を始めたころの平均調節性T細胞の割合は4.94+/-0.71で、終了時には10.86+/-2.73だった。市販で利用可能なELISAキットは、犬の同じサブセットの血清のIL-10濃度を定量にも使用された。健常犬において長期にわたりIL-10濃度の明らかな違いはなかった。コントロールグループと比較して免疫療法グループは6、9そして12ヶ月での血清IL-10濃度の明らかな増加が観察された。免疫療法の開始時における平均血清IL-10濃度は20.40+/-3.52ng/Lで、研究終了時は37.26+/-15.26ng/Lだった。アレルゲン特異的免疫療法中で特定した特異的アレルゲンに対する1年以上の治療期間の間、免疫療法グループでは血清IgE濃度の明らかな低下も認められた。免疫療法を実施した人の研究と似ているこれらの研究から、アトピー性皮膚炎と他のアレルギー疾患のこの特定のタイプの治療の成功において調節性T細胞数の増加が重要な役割を担うことが結論付けられる。(Dr.Kawano訳)

■猫のアトピー性皮膚炎における急速アレルゲン特異免疫療法プロトコール:4頭の猫の予備的研究
Rush allergen specific immunotherapy protocol in feline atopic dermatitis: a pilot study of four cats.
Vet Dermatol. 2005 Oct;16(5):324-9.
Trimmer AM, Griffin CE, Boord MJ, Rosenkrantz WS.

急速免疫療法は犬のアトピー性皮膚炎患畜において従来の免疫療法と同じくらい安全性が示されている。猫のアトピー性皮膚炎患畜において急速免疫療法は報告されていない。この予備的研究の目的は、猫のアトピー性皮膚炎患畜において急速免疫療法の安全なプロトコールを決定することだった。病歴、身体検査そして適切な鑑別診断による除外で診断した4頭のアトピー性皮膚炎の猫がこの研究に組み込まれた。アレルゲンは液相免疫酵素検査(VARL: Veterinary Allergy Reference Labs, Pasadena, CA)で認識した。はじめの注射の24時間前と2時間前に1.5mgのトリアムシノロンを経口的に前投与し、24時間前と12時間前と2時間前に10mgのヒドロキシジンを経口投与した。はじめの注射の前に静脈内カテーテルを設置した。
15000PNU/mlの維持容量となるように5時間まで30分毎にprotein nitrogen units (PNU) を増加させながらアレルゲン抽出液(グリアー社、レノア、ノースキャロライナ)をすべて皮下注射した。バイタルサインを15分ごとに評価した。2頭の猫は軽度掻痒に発生し、次の注射を30分延期した。2頭の猫はバイタルサインに変化がなく、更なる痒みもなかった。すべての猫で急速免疫療法は完全に成功した。2頭の猫で1週間後に頚背部の皮膚が腫脹した。これらの4頭の猫において、このプロトコールは維持療法に到達するための安全な治療方法になると思われた。副作用の発生率の決定やこの方法による誘導に基づいたアレルゲン特異的免疫療法の成功に繋げるために、より多い猫の検体が必要である。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬の治療においてアレルゲン抽出物(急速免疫療法)の簡略化した連続注射することの安全性の評価
Evaluation of the safety of an abbreviated course of injections of allergen extracts (rush immunotherapy) for the treatment of dogs with atopic dermatitis.
Am J Vet Res. 2001 Mar;62(3):307-10. Links
Mueller RS, Bettenay SV.

目的:アトピー性皮膚炎の犬の治療においてアレルゲン抽出物(急速免疫療法)の簡略化した連続注射における安全性を評価すること

動物:アレルゲン特異的免疫療法の治療のためveterinary dermatology referral practiceで検査した30頭のアトピー性皮膚炎の犬

方法:それぞれの犬の静脈内にカテーテルを設置した 。実施中は常に犬を観察した。6時間で20000PNU/mlの維持濃度になるよう30分毎に濃度を増加させアレルゲン抽出物を注射した。必要であればエピネフリン、酸素そして救急治療が利用可能であった。

結果:22頭(73%)の犬で、急速免疫療法はアレルゲン抽出物の濃度を増加させる週1回の注射処置による長い誘導期間(15週)と安全に置き換わった。7頭(23%)の犬において、誘導期間は4週間省略できた。
急速免疫療法中に問題が起こった8頭のうち、7頭は痒みが増加したので、急速免疫療法を早期に中断し、1頭は全身性の膨疹に発展した。8頭全ての犬でプレドニゾロン(1 mg/kg)の経口投与によって副作用が解消した。

結論と臨床関連:動物病院のスタッフによって実施する急速免疫療法は、アトピー性皮膚炎の犬の治療において安全な方法である。(Dr.Kawano訳)

■犬の血清中のアレルゲン特異的IgG抗体の血清濃度における免疫療法の効果 
Effect of immunotherapy on the serum concentrations of allergen-specific IgG antibodies in dog sera.
Vet Immunol Immunopathol. 1989 Aug;22(1):39-51.
Hites MJ, Kleinbeck ML, Loker JL, Lee KW.

犬の血清中のアレルゲン特異的犬IgGの検出のため、わさび大根ペルオキシダーゼに結合した抗犬IgGとポリスチレンマイクロタイターウェルを使用したELISA分析法について記述する。個々のアレルゲン・ブランクは、様々なアレルゲン中の多様な非特異的な結合を説明するために使用された。また、吸光度のミリユニットで観察された結果は、4つの参照血清を使用して基準化された。検定内の変動係数は、1.34から12.50%、検定間変動性は4.62から9.77 %の範囲だった。アレルゲン特異的IgGのELISA結果および血清濃度の関係を定量した。様々なアレルゲンに対して特異性を備えたIgG抗体は、大多数のアトピーではない個体および全てのアトピーの個体で検出された。特異的免疫療法は、アレルゲン特異的IgGの血清濃度の上昇を起こす。(Dr.Kawano訳)

■花粉免疫療法:IL-10誘導と遅延反応の抑制はIgG4抑制性抗体活性に先行する。
Grass pollen immunotherapy: IL-10 induction and suppression of late responses precedes IgG4 inhibitory antibody activity.
J Allergy Clin Immunol. 2008 Mar 26 [Epub ahead of print]
Francis JN, James LK, Paraskevopoulos G, Wong C, Calderon MA, Durham SR, Till SJ.

背景: 花粉免疫療法はアレルゲン特異的免疫寛容の誘導と維持を研究するための機会を提供する季節性アレルギー性鼻炎の効果的な治療である。

目的:免疫療法の1年間のアレルゲンに対する臨床的応答性、調節性サイトカイン産生と抗体の応答の関係を調査した。

方法: 重篤な季節性アレルギー性鼻炎の18人の患者が、ミョウバンを吸収させた花粉ワクチン(Alutard SQ)のアクティブあるいはプラセボ注射を行うランダム化二重盲検を受けた。患者は皮内アレルゲンに対する早期と遅発性皮膚反応の検査を繰り返し行い、花粉アレルゲンに対する細胞性反応を検査した。IgE応答の生物学的検定法においてアレルゲン特異的IgG4、IgAそして抑制活性を血清で検査した。

結果:花粉免疫療法はすべての兆候スコア(P < .05)と結膜の反応性(P < .05)の減少において効果的であった。アクティブグループでは低濃度のアレルゲン注射の時に明らかなIL-10産生が早期に起こる。2~4週目の遅発性皮膚応答の抑制と同じタイミングだった。血清アレルゲン特異的IgG4、IgAそして好塩基球のヒスタミン放出のための抑制性抗体活性そしてIgE促進性のB細胞に対するアレルゲン結合が、より高濃度のアレルゲンの6~12週で遅れて起こり、早期皮膚応答の抑制に先行した。

結論 : IL-10 の反応は早期に起こるが、臨床的に効果的ではない免疫療法の投与量では起こらない。IgG4やIgAなどの抑制性抗体の後の誘導はIgE介在性現象の調節を通じた効果に必要かもしれなかった。(Dr.Kawano訳)

■犬アトピー性皮膚炎のthymus and activation-regulated chemokineの病変部発現
Lesional expression of thymus and activation-regulated chemokine in canine atopic dermatitis.
Vet Immunol Immunopathol. 2002 Sep 6;88(1-2):79-87.
Maeda S, Fujiwara S, Omori K, Kawano K, Kurata K, Masuda K, Ohno K, Tsujimoto H.

この研究で、アトピー性皮膚炎(AD)の犬と健常犬の両方から採取した皮膚サンプルにおいて、ケモカインであるthymus and activation-regulated chemokine(TARC)そしてIL-1β、IL-4、IFN-γそしてTNF-αを含むサイトカインのmRNAの発現を観察した。TARC のmRNAはADの犬の局所皮膚病変で選択的に発現していたが、AD犬の病変がない皮膚や健常犬での正常な皮膚では発現していなかった。病変のある皮膚でのIL-1β、IFN-γそしてTNF-αの発現レベルも、AD犬の病変がない皮膚での発現より明らかに高かった。しかし、IL-4 のmRNA は今回の研究におけるどの皮膚サンプルでも検出できなかった。TARCやIL-1β、IFN-γそしてTNF-αなどの炎症性サイトカインは、人のAD同様に犬ADの病因に何らかの役割があるのかもしれないと示唆される。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の新しい治療
Emerging treatment of atopic dermatitis.
Clin Rev Allergy Immunol.2007 Dec;33(3):199-203.
Hsu CJ, Wang LF.

アトピー性皮膚炎は慢性的に繰り返す皮膚の湿疹である。幅広い治療法がアトピー性皮膚炎には使用されている。その病因のより良い理解も、この病気を治療するための目新しいアプローチの開発につながるだろう。この論文では舌下免疫療法、抗ロイコトリエン、プロバイオティクス、ミコフェノール酸モフェチル、 レフルノミドそして間欠的なプロピオン酸フルチカゾン軟膏などによる治療の最近の進歩を見直します。著者はこれらの治療が近い将来、臨床的に有効な治療となることを予期する。(Dr.Kawano訳)

メモ
プロピオン酸フルチカゾン:合成副腎皮質ステロイド薬
ミコフェノール酸モフェチル:イノシン一リン酸脱水素酵素阻害
レフルノミド:イソキサゾール系抗リウマチ薬

■犬アトピー性皮膚病変におけるCCケモカイン受容体4(CCR4)mRNAの発現
Expression of CC chemokine receptor 4 (CCR4) mRNA in canine atopic skin lesion.
Vet Immunol Immunopathol. 2002 Dec;90(3-4):145-54.
Maeda S, Okayama T, Omori K, Masuda K, Sakaguchi M, Ohno K, Tsujimoto H.

CCケモカイン受容体4(CCR4)はTh2細胞を選択的に発現するG蛋白共役7膜貫通受容体で、炎症部へのTh2細胞の輸送に重要な役割を果たしている。この研究において、犬のアトピー性皮膚炎における皮膚病変で起こるアレルギー反応でのCCR4の潜在的な役割を検査するため、完全長の犬のCCR4cDNAをクローン化し、特徴付けた。この研究で報告した犬のCCR4 cDNAは360のアミノ酸をコード化した1083のヌクレオチドの読み取り枠を含んでいた。犬のCCR4の予測したアミノ酸配列は人、マウスそしてモルモット対応物でそれぞれ91.9、85.3、84.5%の相同性を示した。CCR4mRNAの発現は胸腺、脾臓、心臓、小腸そしてリンパ節など様々な組織で検出された。さらにCCR4mRNAはCCR4のリガンドでthymus and activation-regulated chemokine (TARC)のmRNAと一緒にアトピー性皮膚炎の犬の病変のある皮膚に優先的に発現していた。今回の研究でCCR4は犬のアトピー性皮膚炎の免疫病原性に強く貢献していることが証明される。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎あるいは実験的に日本スギ花粉に感作させた犬の末梢CD4細胞におけるCCR4陽性細胞の増加
Increase of CC chemokine receptor 4-positive cells in the peripheral CD4 cells in dogs with atopic dermatitis or experimentally sensitized to Japanese cedar pollen.
Clin Exp Allergy. 2004 Sep;34(9):1467-73.
Maeda S, Ohmori K, Yasuda N, Kurata K, Sakaguchi M, Masuda K, Ohno K, Tsujimoto H.

背景:人と同様に犬も頻繁にアレルギー疾患になりやすいので、犬が人のアレルギーのための潜在的な動物モデルとなります。人のアトピー性皮膚炎(AD)において、CCケモカイン受容体4(CCR4)は、アトピー性皮膚炎のアレルギー性炎症の発症に重要な役割を担うことが解っている。;しかしアレルギー性皮膚炎を持つ犬でアレルギー反応とCCR4の関連性はまだ良く理解されていない。

目的:アトピー性皮膚炎および実験的に日本スギ花粉に感作させた犬の抹消血のCD4陽性細胞におけるCCR4発現を調査すること。

材料と方法:アトピー性皮膚炎の犬17頭から末梢血単核細胞(PBMCs)を分離した。フローサイトメトリーを使って末梢血CD4陽性細胞中のCCR4陽性細胞の比率を評価し、10頭の健常犬と比較した。同様に日本スギ花粉抗原に実験的に感作させた犬において、感作前後でCCR4/CD4比を検査した。

結果:アトピー性皮膚炎(40.3+/-3.3%)の犬におけるCCR4/CD4比は、正常犬(23.6+/-4.3%)に比べて明らか(P<0.01)に高かった。実験的に感作させた犬において、CCR4/CD4比は感作前で25.4+/-2.6%なのに対し、明らか(P<0.01)に感作後に増加(29.8+/-2.9%)した。

結論:アレルギー状態の犬で末梢血のCD4陽性細胞におけるCCR4陽性細胞比を測定した。今回の所見からCCR4陽性細胞は人間のように犬におけるアレルギーの病因に関与するかもしれないことが示唆された。(Dr.Kawano訳)

■CADESI-03の確証:アトピー性皮膚炎の犬を用いた臨床試験の重症度スケール
Validation of CADESI-03, a severity scale for clinical trials enrolling dogs with atopic dermatitis
Vet Dermatol. April 2007;18(2):78-86.
Thierry Olivry, Rosanna Marsella, Toshiroh Iwasaki, Ralf Mueller, International Task Force On Canine Atopic Dermatitis

犬でアトピー性皮膚炎(AD)は、薬剤による治療を必要とする一般的で慢性アレルギー皮膚疾患である。過去30年の間に、抗炎症薬の効果の多くの臨床試験が報告されているが、結果測定値の評価で一貫性が欠けている。いくつかの臨床スケールがその時々に使用されているが、それらのスコアリングシステムで妥当性と信頼性を試験したものはこれまでになかった。International Task Force on Canine Atopic DermatitisはADのヒトおよび犬で疾患罹患率の評価に使用する現在利用可能なスケールを評価し、犬アトピー性皮膚炎範囲と程度の指数第3バージョン(CADESI-03)を作った。
このバージョンは、試験するからだの部位を増やし再分布すること、隠れた痒み(例えば自己誘発脱毛)を反映する追加病変の使用、各病変の程度を示す数の範囲を増やすことにより過去の物から発展させた。CADESI-03スケールはADの犬38頭の集団で、妥当性と信頼性を検査した。このCADESIの改定バージョンは、総体的に許容できる内容、構築、診断基準、変化に対する観察者間、観察者内信頼性と感受性を示すことがわかった。結果として、このスケールはADの犬における治療効果の臨床試験で疾患程度を評価する確実な手段として推奨される。(Sato訳)

■アトピー性皮膚炎乳児における皮膚上空気アレルゲン感作-表皮バリア障害の役割
Epicutaneous aeroallergen sensitization in atopic dermatitis infants – determining the role of epidermal barrier impairment.
Allergy. 2008 Feb;63(2):205-10.
Boralevi F, Hubiche T, Leaute-Labreze C, Saubusse E, Fayon M, Roul S, Maurice-Tison S, Taieb A.

背景:アトペンに対する感作は乳児期のアトピー性皮膚炎(AD)の発病と一致する早期の現象である。早期の表皮バリア障害はアトペンの皮膚上の透過を促進させるかもしれない。

目的:アトピー性皮膚炎の乳児の経皮水分蒸散量(TEWL)と経皮感作を関連させること

方法:この横断的研究において、我々は年齢3~12ヶ月のアトピー性皮膚炎の子供59人とコントロールの30人を集めた。Dermatophagoides pteronyssinus、D. farinae、猫、犬、カバノキ花粉、 ブタクサそしてゴキブリなどの 7つの空気アレルゲンに対して、無病変部の経皮水分蒸散量(TEWL)、特異的免疫グロブリンE、アトピーパッチ検査(APT)そして皮膚プリック検査を実施した。環境の状況はアンケート用紙で評価し、ハウスダストマイト(HDM)濃度は塵のサンプルで測定した。

結果:アトピー性皮膚炎乳児の89%はAPT陽性で、コントロール群の11人中1人が陽性であった。アトピー性皮膚炎乳児(27.4 g/m(2)/h)は、コントロール群(11.1 g/m(2)/h)に比べて平均経皮水分蒸散量が有意(P < 0.001)に高かった。APTが2つ以上陽性の子供(31.1 g/m(2)/h)は、他の子供(19.0 g/m(2)/h)に比べて経皮水分蒸散量がより(P < 0.025)高かった。室内APT結果と自宅でHDM、猫そして犬に対する暴露との関係には関連性は認められなかった。

結論:アトピー性皮膚炎乳児は、室内と室外での空気アレルゲンに対して高い発生率で遅延感作されており、経皮水分蒸散量(TEWL)も高く、空気アレルゲンに対する感作率もより高いことが解った。アトピー性皮膚炎の乳児において早期のアトペン感作の成立には構成的な皮膚バリア障害が主要な役割となっていることがこれらのデータで支持された。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎と非アトピー性皮膚炎の犬における血清総IgG1濃度の検査
Examination of serum total IgG1 concentration in atopic and non-atopic dogs.
J Small Anim Pract. 2004 Apr;45(4):186-90.
Fraser MA, McNeil PE, Gettinby G

この研究において、異なるレベルの寄生虫コントロールをしたアトピー性皮膚炎の犬と非アトピー性皮膚炎の犬における血清免疫グロブリンG1(IgG1)濃度を測定した。厳密な寄生虫コントロールをした非アトピー性皮膚炎は、厳密な寄生虫コントロールをしなかったアトピー性皮膚炎あるいは非アトピー性皮膚炎の犬に比べ、明らかに血清総IgG1濃度が低かった。アレルゲン特異的免疫療法(ASIT)の6ヶ月後のアトピー犬の血清総IgG1濃度検査において、血清総IgG1濃度は明らかに増加した。血清総IgG1濃度は寄生虫、アトピー性皮膚炎そしてASITに影響を受けることが提唱される。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎と菌状息肉腫の発症の関連を調査する:遡及症例-コントロール研究
Investigation on the association between atopic dermatitis and the development of mycosis fungoides in dogs: a retrospective case-control study
Vet Dermatol. April 2007;18(2):101-6.
D Santoro, R Marsella, J Hernandez

人医で、アトピー性皮膚炎(AD)に見られる免疫調節不全と菌状息肉腫(MF)の発症の関連性は、過去にADの病歴を持つMFの患者数が増えてきたことでかなり注目されている。この遡及症例-コントロール研究の目的は、MFと診断された犬がADを持つ傾向にあるのかどうかを調査することだった。フロリダ大学で96000件の犬の記録を調査した。含有基準はMFの臨床および組織学的診断だった。同時期(1991-2004)の間にフロリダ大学獣医センターを訪れた犬でMFの診断を受けなかったものをコントロールとした。各研究犬に対する4つのコントロールを無作為に選択した(来院年による合致)。ADと他の暴露変動値の頻度を、条件付ロジスティック回帰を使用し、症例とコントロールで比較した。
MFの診断を受けた10頭の犬の記録を確認した。それらのうち5頭(5/19、26.3%)は過去にADと診断されていた。MFを持つ比率は、ADでない犬よりADの犬が12倍高かった(OR=12.54;95%CI=1.95-80.39;P<0.01)。
結論としてこの研究は、犬でADとMFの関連を示唆する。この所見を確認し、この関連に対する病院メカニズムを調査する今後の研究が必要である。(Sato訳)

■猫を洗う異なったテクニックの評価:猫から除去したアレルゲンの定量と空気中のFel d1の影響
Evaluation of different techniques for washing cats: quantitation of allergen removed from the cat and the effect on airborne Fel d 1.
J Allergy Clin Immunol. 1997 Sep;100(3):307-12.
Avner DB, Perzanowski MS, Platts-Mills TA, Woodfolk JA.

背景と目的:この研究の目的は、猫における主要猫アレルゲン、Fel d1の量と分布を調べ、猫からアレルゲンを取り除くことや空中アレルゲンレベルを減少させるなど洗浄に対する効果を評価することだった。

方法:空気中のサンプルは8頭の猫(各フィルタあたり18L/分、45分間のサンプリング)を洗浄前と連続的に洗浄した3時間後において、30m3部屋において4個のグラスファイバーフィルタで集めた。一定分量の毛と風呂水も集め、含まれるFel d1も評価した。

結果:水道水あるいはペットシャンプーを使って3分間で抽出した猫の毛は、それぞれ毛1グラム当たり平均191μgそして245μgのFeld1が除去された。猫の毛のサンプルにおけるアレルゲン量は1μg/gmから1770μg/gm以上の範囲に及んだ。頚部からの毛が最も高いアレルゲン濃度であった。全身毛刈りに基づいた猫の総Fel d 1の推定量は3 ~142 mg (平均 = 67 mg)だった。猫を洗浄することによって3時間後に空気中のアレルゲンが減少した。動物病院で5週間に渡り1週間隔で洗った3頭の猫では空気中のFel d 1が平均44%減少 (n = 15, p < 0.02)した。
1週間隔で1ヶ月間、3分間の浸漬で洗った3頭の猫は空気中のアレルゲンが平均79%減少した(n = 12, p < 0.001)。しかし繰り返し洗った後は、次の洗浄前の空気中のレベルは首尾一貫して減少しなかった。浸漬によって除去したFel d 1の量は1~35mgと変動した。

結論:猫は大量のFel d1を運ぶが、わずかな割合(約0.002%/hr)しか空気中に浮遊しない。浸漬で猫を洗うことは猫から明らかなアレルゲンを除去し、空気中に浮遊するFel d 1の量を減らせることが出来る。
しかし、その減少は1週間しか維持できない。(Dr.Kawano訳)

■1歳までの犬及び猫の暴露と6~7歳でのアレルギー感作のリスク
Exposure to dogs and cats in the first year of life and risk of allergic sensitization at 6 to 7 years of age.
JAMA. 2002 Aug 28;288(8):963-72.
Ownby DR, Johnson CC, Peterson EL.

前後関係: 小児喘息はアレルギー感作と強く関連があります。乳児期に動物に暴露されることは後のアレルギー感作を減らすことが研究で示唆されている。

目的: 1歳で犬や猫に暴露されることと6~7才でのアレルギー感作の関係を評価すること

企画、設定そして被験者: 健常人の前向きコホート研究 、1987年4月15日から1989年8月31日までに生まれたデトロイト郊外の健康維持団体に入会した月満ちて生まれた乳児を平均6.7 才まで1年毎に経過観察した。研究に参加した835人の子供の内、474人(57%)は6~7才での経過の評価を終了した。
主な結果測定: 6つの一般的な空気アレルゲン(家ダニ[Dermatophagoides farinae, D pteronyssinus]、犬、猫、ブタクサ[Ambrosia artemisiifolia]、ブルーグラス[Poa pratensis])に対して皮膚プリックテストでいずれかの陽性判定を示した場合をアトピーと定義し、アレルゲン特異的IgE検査結果で同じ6つのアレルゲンあるいはアルタナリア属に対して陽性反応を示した場合をセロアトピーと診断した。

結果:6-7歳での皮膚プリックテスト陽性(アトピー)の有症率は、1歳までに犬や猫に暴露されていない場合33.6%、1頭の犬または猫に暴露された場合34.3%、2頭以上の犬や猫に暴露された場合は15.4%(P =.005)だった。アレルゲン特異的IgE検査(セロアトピー)陽性の有症率は、犬や猫に暴露されていない場合は38.5%で、1頭の犬や猫に暴露された場合は41.2%で、2頭以上の犬や猫に暴露された場合は17.9%(P =.003)だった。臍帯血清IgE濃度、性別、兄弟、親の喫煙、親の喘息、2歳齢での寝室の家ダニアレルゲンレベル、犬や猫との同居などを補正後、1歳までに2頭以上の犬や猫への暴露は明らかにアトピー (修正オッズ比0.23%; 95%信頼区間 0.09-0.60) と セロアトピー(修正オッズ比0.33; 95%95%信頼区間 0.13-0.83)のリスクが少なかった。

結論:1歳までに2頭以上の犬や猫に暴露されることは、後に小児期において多数のアレルゲンに対してアレルギー感作のリスクが減るかもしれない。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の治療における抗ヒスタミン剤:171頭による回顧的研究(1992-1998).
Antihistamines in the management of canine atopic dermatitis: a retrospective study of 171 dogs (1992-1998).
Vet Ther. 2002 Spring;3(1):88-96.
Zur G, Ihrke PJ, White SD, Kass PH.

1992年から1998年までの間、カリフォルニア大学獣医教育病院デービス校において、アトピー性皮膚炎と診断した271頭のうち178頭に抗ヒスタミン剤を処方した。
抗ヒスタミン剤を与えた166頭の54%がこれらの治療に有意に反応し、27%が良く反応し、27%が中等度に反応した。ジフェンヒドラミンとヒドロキシジン は最も一般的に使用された抗ヒスタミン剤で、最も効果的であった。クロルフェニラミンとクレマスチンはあまり頻繁に使用されず、反応率が悪かった。より若齢で臨床症状が発現した犬は、有意に抗ヒスタミン剤が反応した。 (年齢が一歳増えることによるオッズ比= 0.72, 95% 信頼区間=0.57-0.91, P =.005)。(Dr.Kawano訳)

■トシル酸スプラタストによる四季を通じて続く鼻アレルギーの患者のTh2経路抑制
Suppression of the Th2 pathway by suplatast tosilate in patients with perennial nasal allergies.
Am J Rhinol. 2002 Nov-Dec;16(6):329-36.
Furukido K, Takeno S, Ueda T, Hirakawa K, Yajin K.

バックグラウンド:試験管内あるいは動物モデルにおいてインターロイキン(IL)-4とIL-5の生産を抑制する選択的Th2サイトカイン抑制剤のトシル酸スプラタスト(IPD-1151T)が、アレルギー性鼻炎(AR)において臨床的に効果的であることが立証されている。この研究の目的はIPD-1151Tによる薬物療法後に人間の鼻粘膜においてTh2経路の変化を調査することだった。 12人の患者がIPD-1151Tで治療した。

方法:正常コントロールとして12人の健康なボランティアが集まった。以下のパラメーターを評価した。 (i)主観的な鼻の臨床兆候、(ii)免疫細胞学的染色による炎症性細胞(EG2、CD4、およびCD8)の割合、(iii)酵素免疫測定によるサイトカインの濃度 (活性化したIL-4、IL-5、IL-13、正常なT細胞発現、そして分泌(RANTES)、およびインターフェロン(IFN)ガンマ)。

結果:鼻の症状スコアは治療後に明らかに減少した。細胞浸潤に関しては、炎症性細胞(EG2とCD4) の割合とCD4/CD8比が明らかに減少した。サイトカイン(IL-4、IL-5、 IL-13そして IFN-ガンマ)の濃度とIL5/IFN-ガンマの比は明らかに減少し、IL4/IFN-ガンマ比は正常と明らかな違いはなかった。対照的に、RANTESは明らかに変化しなかった。RANTESは互いに関連しなかったが、IL-5の減少割合は好酸球浸潤において関連した。

結論:これらの結果は、IPD-1151TがTh2経路を減少させることを示す。(Dr.Kawano訳)

■スギ(Cryptomeria japonica)花粉症を伴う犬においてトマトで口腔アレルギー症候群が誘発された。
Oral allergy syndrome induced by tomato in a dog with Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollinosis.
J Vet Med Sci.2002 Nov;64(11):1069-70.
Fujimura M, Ohmori K, Masuda K, Tsujimoto H, Sakaguchi M.

スギ(Cryptomeria japonica, CJ)花粉を伴う犬が、新鮮なトマトを摂取後に口腔アレルギー症候群(OAS)に罹患した。犬にはCJとトマトアレルゲンの両方に対する特異的IgEが見られた。陰性コントロールとしてトマトに暴露されておらず、CJアレルゲンに対する特異的IgEを持たず、アトピー性皮膚炎ではない犬20頭が使われた。また、その犬においてCJとトマトアレルゲンとの間にIgEクロス反応が観察された。トマトで誘発される口腔アレルギー症候群は犬に存在し、CJとトマトアレルゲンとの間に関連性があることが分った。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬117頭におけるアレルゲン特異的免疫治療の結果
Results of allergen-specific immunotherapy in 117 dogs with atopic dermatitis.
Vet Rec. 2006 Jan 21;158(3):81-5.
Schnabl B, Bettenay SV, Dow K, Mueller RS.

48カ月までアレルゲン特異的免疫療法でアトピー性皮膚炎の治療に成功した117頭の犬を評価した。素晴らしい反応(免疫治療から離脱できた完解)は18頭の犬で記録され、良い反応(薬物療法の50%以上の減少と臨床的徴候の改善)は57頭、適度の反応は24頭、18頭で不十分な反応が記録された。アレルゲン抽出液の中のカビ抗原は投与前に別々のバイアルに集め、カビ抗原を含む免疫療法の成功率はカビ抗原と花粉抗原が同じバイアルに入った早期の研究より高かった。
成功率は病気が発症した時の犬の年齢、治療を開始した時の年齢や臨床症状を示した期間に影響を受けなかった。また花粉、カビ抗原、チリダニが抗原として使われたかどうか、影響するアレルゲンが皮内反応やアレルギー特異的免疫グロブリンEを検査する血清検査で認識されたかどうかも影響を与えなかった。(Dr.Kawano訳)

■ヒトおよび犬アトピー性皮膚炎におけるハウスダストマイトおよびわらかゆみダニforage mite抗原とそれらの役割
House dust and forage mite allergens and their role in human and canine atopic dermatitis
Vet Dermatol. August 2006;17(4):223-35.
T. J. Nuttall*, Peter B. Hill, E. Bensignor, T. Willemse§ and the members of the International Task Force on Canine Atopic Dermatitis

犬のアトピー性皮膚炎においてハウスダストと飼料中のダニアレルゲンの役割に関する文献を批評します。
これらのダニ、特にDermatophagoides farinaeに対する免疫グロブリンE (IgE)の存在は、健常犬とアトピー性皮膚炎の犬の両方において一般的です。環境中のダニや動物の皮膚に付着したハウスダストや飼料ダニなど異なるダニが犬に暴露されることについて述べます。犬のアレルギー性疾患を引き起こすアレルゲンは、人間で引き起こすアレルゲンと異なるように思えます。 アトピー性疾患の人間で一般的に関連する低分子グループ1とグループ2プロテアーゼに比べて、犬は高分子アレルゲンに反応するように思えます。この主題に対処するための様々な研究にも関わらず、まだ多くの質問が犬のアトピー性皮膚炎の病因におけるこれらのダニの正確な役割をより理解するために言及され、臨床に使用されるアレルゲンの品質を改善する必要があります。(Dr.Kawano訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の治療で、シクロスポリンの効果と安全性の系統的再検討とメタ解析
A systematic review and meta-analysis of the efficacy and safety of cyclosporin for the treatment of atopic dermatitis in dogs
Vet Dermatol. February 2006;17(1):3-16. 32 Refs
Jean Steffan, Claude Favrot, Ralf Mueller

抄録。2001-2005年の間に発表された前向き臨床試験の系統的再検討をもとに、犬アトピー性皮膚炎の治療に対するシクロスポリンA(CsA)の効果を評価した。適切な研究特性を持つ10個の研究を含めた。それらの研究では799頭の犬を使用し、672頭(84%)はCsA、160頭(20%)はプラセボ、74頭(9%)は経口グルココルチコイド、23頭(3%)は抗ヒスタミンで治療されていた。治療期間は2週間から6ヶ月の幅だった。安全性分析は、660頭の犬のデータを利用した。病変スコアーは、4,6および16週後にそれぞれ30-52%、53-84%、52-69%の範囲で基準よりも改善した。軽度の痒みのみを示す犬の比率は、開始時0-13%、4週後32-59%、12週後に46-90%となった。
ほとんどの研究で、CsA投与の頻度は4週間後で40-50%の犬が隔日投与に、12-16週後20-26%の犬が週2回投与に減らすことができた。メタ解析でプラセボと比較するとCsAの有意で高い効果が確認できたが、経口CsAとグルココルチコイドの間に有意差はなかった。初期疾患の程度、年齢、体重は治療の成否に影響しなかった。基準から病変スコアー50%以上の改善は、治療維持期間より良い反応を示す傾向にあった。嘔吐および軟便/下痢はよく見られた副作用で、研究中少なくとも1回は見られた。それらは犬のそれぞれ25%と15%に発生した。副作用の他のタイプの頻度は2.1%以下だった。概要は犬ADの治療としてCsAの投与がグルココルチコイド同様の効果で、副作用は最小限だと分かった。(Sato訳)

■異なる源と濃度のハウスダストマイトに対する高-IgEビーグルでアトピーパッチテスト反応
Atopy Patch Test Reactions in High- IgE Beagles to Different Sources and Concentrations of House Dust Mites
Vet Dermatol 16[5]:308-314 Oct’05 Pilot Study 30 Refs
Rosanna Marsella, Connie Nicklin and Jennifer Lopez

アトピーパッチテスト(APT)のプロトコールを、種々の濃度と源のハウスダストマイト(HDM)を使用し、HMD感受性高-IgE犬6頭で調査した。2つの源のHDMを比較した。Heska slurryとGreer HDMの4種類の濃度だった。生食は陰性コントロールとして使用した。パッチは48時間後に取り除き、その部位の紅斑、斑、丘疹、膿疱を0、6、24、48、72、96時間目に評価した。各徴候を0-3(0=なし、3=強)のスコアをつけた。トータルスコアを分析に使用した。平均トータルスコアーはGreer、Heska共に6時間で有意に増加し、G100(100mg/ml)、G300、G668は48時間でピークに達し、HeskaとG31.25は72時間でピークに達した。全ての経過で、Heska HDMスコアーはG31.25よりも有意に高く、最大の差は96時間目で認められた。しかし、Heskaスコアーは他のGreer濃度(G100、G300、G668)よりも有意に低く、特に96時間目が顕著だった。生食部位に反応はみられなかった。結論として、より濃度の高いHDM製剤でなくてもそれに匹敵する反応を引き起こすので、犬のAPTに最も適当な濃度はGreer-HDMの100mg/mlである。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎の治療として低用量免疫療法の効果:前向き二十盲検臨床研究
Effectiveness of Low Dose Immunotherapy in the Treatment of Canine Atopic Dermatitis: A Prospective, Double-Blinded, Clinical Study
Vet Dermatol 16[3]:162-170 Jun’05 Clinical Study 30 Refs
Silvia Colombo, Peter B. Hill, Darren J. Shaw and Keith L. Thoday

製造元で推奨されているものより低いワクチン投与量の犬で、抗原特異免疫療法(ASIT)の効果を増すという逸話的報告がある。しかし対照研究は行われていない。この前向き二重盲検研究の目的は、低用量(LD)ASITでの導入と維持が標準的な用量(SD)よりも異なる成功率を残すかどうか評価することだった。
アトピー性皮膚炎と確認した27頭の犬を、2つの群に無作為に振り分けた。同頻度のプロトコールで1群(n=13)にはSD ASITを他群(n=14)にはLD ASIT(SDの1/10)を投与した。0、3、6、9ヶ月時に、修正犬アトピー性皮膚炎範囲および程度指数(mCADESI)を使用し症例の臨床症状を、そして0-5デスクリプタースケールにより痒みにスコアーをつけた。
研究終了時、痒みとmCADESIスコアーにおける群間有意差はなく(P>0.155)、研究開始から終了までの痒みとmCADESIスコアーの変化は両群同様だった。両群の痒みスコアーは研究中変化しなかった(p>0.052)。しかしmCADESIスコアーの有意な低下は両群で認められた(P<0.032)。最終的な痒みスコアーが0に達したイヌは6頭で、6頭の痒みスコアーは低下し、15頭は改善または悪化した。ゆえに、標準プロトコールよりもLD ASITがより効果的であるという証拠はない。(Sato訳)

■コントロールとして抗ヒスタミンを使っているアトピー性皮膚炎の犬における遺伝子組み換え型犬インターフェロン-γ(KT-100)の無作為比較臨床試験
A randomized comparative clinical trial of recombinant canine interferon-γ (KT-100) in atopic dogs using antihistamine as control
Veterinary Dermatology
Volume 17 Page 195 – June 2006
Toshiroh Iwasaki* and Atsuhiko Hasegawa

遺伝子組み換え組換え型犬インターフェロン-γ(KT-100)と局所的抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン:DH)を4週間アトピー性皮膚炎(AD)の犬に投与し、痒み、擦創、紅斑そして脱毛を評価基準として用い夫々の効果を比較した。日本の18の動物病院で92頭のアトピー性皮膚炎の犬(KT-100グループ: 63頭、DHグループ: 29頭)を使い臨床研究を行なった。 KT-100は4週間隔日で1日1回週3回皮下投与した。DHは4週間毎日2回局所的に投与した。28日目のKT-100グループの効果率は、痒みで72.1%、擦創で73.8%、紅斑で75.4%そして脱毛症で60.7%で、DHグループ(痒みで20.7%、擦創で27.6%、紅斑で24.1%そして脱毛で24.1%)の効果率よりかなり高かった。(Dr.Kawano訳)

■ラブラドール、ゴールデンレトリバーのアトピー性皮膚炎の遺伝性を推定する
Estimation of heritability of atopic dermatitis in Labrador and Golden Retrievers.
Am J Vet Res 65[7]:1014-20 2004 Jul
Shaw SC, Wood JL, Freeman J, Littlewood JD, Hannant D

目的:ゴールデン、ラブラドールレトリバーのアトピー性皮膚炎の遺伝率を推定する

動物:アトピー性皮膚炎の13頭に関連する429頭

方法:アトピー性皮膚炎は、臨床記録に記載された臨床症状のタイプと頻度をもとに定義し、各イヌをアトピー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎の可能性がある、非アトピー性と分類した。アトピー性、非アトピー性犬のデータを使用し、子孫状態に対する親の状態の回帰分析を遺伝率を推定するため行った。

結果:性別、または犬種間のアトピー性皮膚炎の頻度に差はなかった。その子、その子の親、特にオスのアトピー性状況間に顕著な関与があった。アトピー性皮膚炎または非アトピー性に分類されたイヌのみ考慮した両親の状況が分かっている子犬32頭のデータを使用して、アトピー性皮膚炎の遺伝率(±SE)は、0.47(±0.17)を算出した。

結論と臨床関連:アトピー性皮膚炎は、強い遺伝要素を持ち、アトピー性皮膚炎の臨床症状があるイヌの繁殖は中止すべきである。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の治療におけるシクロスポリンの長期使用
Long-term use of cyclosporine in the treatment of canine atopic dermatitis
Veterinary Dermatology;Volume 16 Issue 2 Page 81 – April 2005
STACEY N. RADOWICZ and HELEN T. POWER

最低6ヶ月シクロスポリン(CsA)で治療したアトピー性皮膚炎(AD)に罹患した犬51頭の回顧的研究で、投与の頻度と臨床症状をコントロールするための継続治療の必要性を評価した。この研究では診療記録そしてアンケートと電話追跡で飼い主より提供された情報の両方を評価した。検査パラメータ、起こりうる副作用と飼い主の満足を評価した。シクロスポリンの投与量は1日1回5mg/kg、経口投与で6~30ヶ月投与した。
研究期間の終了時に、28頭の犬(55%)が、アトピー性皮膚炎の臨床症状をコントロールするためシクロスポリンの継続投与が必要であった: 8頭 (15%)は一週間に2~3日投与し、10頭(20%)は一週間に4~5日投与し、10頭(20%)は毎日投与が必要だった。限局性の反応(22%)であるか臨床応答に達した(24%)ので、6~24ヶ月後に23頭(45%)の犬はシクロスポリンを中止した。 シクロスポリンで治療したアトピー性皮膚炎の何頭かの犬は、臨床症状をコントロールするのに毎日の投薬は必要ではない、もしくは継続治療さえ必要ないかもしれないことを結果が示している。検査所見の異常はシクロスポリンによる治療中、13頭(25%)で検出された。2頭の犬が口腔増殖に発展し、3頭の犬は多毛症に発展した。40人の飼い主(78%)は治療期間中、それらの犬の有害事象を全く報告しなかった。 36人の飼い主(71%)がアトピー性皮膚炎の犬の治療としてシクロスポリンに満足した。(Dr.Kawano訳)

■根拠に基づいた獣医皮膚科学:犬のアトピー性皮膚炎の薬物療法に関する系統的な検討
Evidence-Based Veterinary Dermatology: A Systematic Review of the Pharmacotherapy of Canine Atopic Dermatitis
Vet Dermatol 14[3]:121-146 Jun’03 Clinical Trial 66 Refs
T. Olivry; R.S. Mueller and The International Task Force on Canine Atopic Dermatitis

脂肪酸サプリメントやアレルゲン特異的免疫療法を除いて、犬のアトピー性皮膚炎を治療するのに使用される薬理学的介入の効果を1980年から2002年の間に発行された前向き臨床試験の系統的な検討に基づいて評価した。研究によって様々な介入による計画の特性(無作為化世代と隠伏、隠蔽現象、全例解析そして研究対象の登録の質)、有益(皮膚病変あるいは痒みのスコアの改善)そして有害(型、副作用の重症度と頻度)が比較された。蓄積された結果のメタアナリシスは評価された薬の異種性のため不可能だった。1607頭の犬が登録された40の試験が認識された。犬のアトピー性皮膚炎の治療に経口グルココルチコイドとシクロスポリンの使用を推薦する有力な根拠があり、局所タクロリムススプレー、局所タクロリムスローション、経口ペントキシフィリンあるいは経口ミソプロストールの使用を推薦する有望な根拠がある。
第1、第2世代1型ヒスタミン受容体拮抗薬、三環系抗うつ薬、シプロヘプタジン、アスピリン、中国のハーブ療法、同種複合療法、アスコルビン酸、AHR-13268かパパベリン、免疫調節抗生物質あるいはトラニラストと局所プラモキシンあるいはカプサイシンに関して処方を推薦する十分な根拠はなかった。
さらには経口arofylline、ロイコトリエン合成阻害剤そしてシステニルロイコトリエン受容体拮抗薬の使用を推薦する有望な根拠がある。(Dr.Kawano訳)

■アトピー性皮膚炎の犬におけるシクロスポリンの効果と安全性を評価する臨床試験
Clinical Trial Evaluating the Efficacy and Safety of Cyclosporine in Dogs With Atopic Dermatitis
J Am Vet Med Assoc 226[11]:1855-1863 Jun 1’05 Clinical Trial 14 Refs
Jean Steffan, MS; Craig Parks, MS, DVM; Wolfgang Seewald, PhD; and the North American Veterinary Dermatology Cyclosporine Study Group

目的:北アメリカのアトピー性皮膚炎の犬の治療で、シクロスポリンの効果と安全性を判定する

構成:無作為化(1相)およびオープンラベル(2相)試験

動物:アトピー性皮膚炎の268頭の犬

方法:第1相で、シクロスポリン(5mg/kg、PO、q24)、またはプラセボを投与する群に無作為に振り分けた。第2相で、全ての犬に16週間シクロスポリンを処置した。シクロスポリン投与頻度は臨床的改善が見られたら少なくした。

結果:第1相の終わりに、シクロスポリン処置犬のアトピー性皮膚炎の範囲と程度指数(CADESI)スコアーは、コントロール犬のスコアーよりも有意に低かった。シクロスポリン群の重度掻痒を持つ犬の比率は67%から16%に減少したが、コントロール群は66%から61%にしか減少しなかった。第2相中、4週間後のシクロスポリン投与量は、39%の犬で2日に1回投与に減少した。12週間後には、22%の犬が週2回、36%が2日に1回になった。16週後、CADESIスコアーは、68%の犬で50%以上減少しており、47%のイヌは掻痒がないか、軽度だった。よく見られた副作用は、胃腸症状だった。

結論と臨床関連:シクロスポリンはアトピー性皮膚炎の犬の治療に効果的で、シクロスポリン投与頻度は、最初の導入期間後少なくできると思われる。イヌは薬剤をよく許容した。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎に対しシクロスポリンの長期使用による治療
Long-Term Use of Cyclosporine in the Treatment of Canine Atopic Dermatitis
Vet Dermatol 16[2]:81-86 Apr’05 Retrospective Study 23 Refs
Stacey N. Radowicz and Helen T. Power

最低6ヶ月間シクロスポリンを投与した、アトピー性皮膚炎(AD)の犬51頭の回顧的研究で、投与頻度、臨床症状をコントロールするための持続治療の必要性を評価した。その研究は、医療記録とアンケートおよび電話調査をオーナーに行い入手した情報で評価した。検査パラメーター、起こりえる副作用、オーナーの満足度を分析した。1日のシクロスポリンの投与量は5mg/kg経口とし、6-30ヶ月投与した。研究期間の終わりには、28頭(55%)の犬が臨床症状のコントロールのため継続投与が必要だった。
それらの犬は、8頭(15%)が週2-3日、10頭(20%)は週4-5日、10頭(20%)は毎日投与が必要だった。23頭(45%)の犬は、わずかな反応(22%)または臨床反応達成(24%)により6-24ヵ月後に投与を中止した。これらの結果は、アトピー性皮膚炎のシクロスポリンによる治療が毎日必要としない犬もいるし、臨床症状コントロールのために継続しなければならない犬もいることを示している。シクロスポリン投与中の13頭(25%)の犬に検査異常が認められた。2頭の犬は歯肉増殖、3頭に多毛が起こった。オーナー40人(78%)は治療期間中に犬の副作用はないと報告した。オーナー36人(71%)はアトピー犬の治療としてシクロスポリン投与に満足していた。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎の局所病変に対するタクロリムス軟膏による治療:盲検無作為対照試験
Treatment of Localized Lesions of Canine Atopic Dermatitis with Tacrolimus Ointment: A Blinded Randomized Controlled Trial
Vet Dermatol 16[1]:52-60 Feb’05 Clinical Trial 21 Refs
Emmanuel Bensignor and Thierry Olivry *

この研究者盲検無作為対照試験は、犬アトピー性皮膚炎(AD)の局所病変の程度をタクロリムス軟膏(プロトピック、藤沢ヘルスケア)が低下させるかどうかを判定するため実施した。ADの犬20頭は両前足中手部に病変が存在した。各足を6週間1日2回、0.1%タクロリムスまたはプラセボ(ワセリン)軟膏で無作為に処置した。研究前、研究中2週間ごとに紅斑、苔癬化、滲出、擦過創について各10点の段階をつけた(最大合計スコア:40)。主要結果測定値は、研究終了時の病変スコアーの基準からの低下率と50%以上スコアーが低下した犬の頭数とした。全例解析を使用した。
研究開始時、タクロリムスとプラセボで治療する部位の病変スコアーに有意差はなかった。6週間目には基準スコアーからの低下率がプラセボ処置部位(中央値3%;95%信頼区間:-2-13)よりもタクロリムス処置部位(中央値63%;95%信頼区間:39-67)のほうが高かった(ウィルコクソン検定;P=0.0003)。タクロリムスを使用したとき、50%以上病変が改善したイヌは15120頭(75%)で、それらのイヌは研究を完遂した。対照で、どのプラセボ処置部位もこの基準に達していなかった(フィッシャーズ検定;P<0.0001)。副作用は、タクロリムス処置部位にわずかな刺激を起こした犬がいるだけにとどまった。この研究結果は、犬ADの局所皮膚病変の程度を低下させるのに0.1%タクロリムス軟膏の処置は有効であると示唆する。(Sato訳)

■アトピー犬で反復性掻痒、引っかき行動の治療にデキストロメトルファンは使用可能か?
Can Dextromethorphan Be Used To Treat Repetitive Itching and Scratching in Atopic Dogs?
Vet Med 100[1]:20-23 Jan’05 Dermatology Update 5 Refs
Karen A. Moriello, DVM, DACVD

健康犬に対するデキストロメトルファンの静脈内、または経口投与の薬物動態に対する近年の研究で、短い半減期、急速な清浄化、乏しい生物学的利用能が分かった。この薬物動態研究の著者は、薬物の不安定な吸収、短い排泄半減期、急速なクリアランスが、長期経口投与したときにその有効性のポテンシャルを制限しているとした。
デキストロメトルファンが本当に有効ならば、オーナーや獣医師が痒みと解釈する反復性行動(例えば、舐める、咬む)や掻痒に対する中枢性の構成部分が存在することを示唆する。他の動物種の反復性行動にオピオイド拮抗薬の使用で成功している。例えば、ウマのかみ癖の治療で効果を示している。デキストロメトルファンはオピオイド遮断ではなく、N-メチル-D-アスパラギン酸遮断の作用をすると仮説される。実際のメカニズムは不明だが、脊髄や脳でN-メチル-D-アスパラギン酸受容体が認められ、学習や記憶、耐性や感作に関与した。デキストロメトルファンは、明らかな炎症の症状がない患者、反復性行動が疑われる症例に有効かもしれない。しかし、習慣的な病因の存在の述べる研究がないことを認識しておくことは重要である。おそらくアトピーの治療でデキストロメトルファンのような薬剤もあるのだが、今のところ著者は、伝統的な抗掻痒療法や基礎疾患のモニタリングに重きを置くことを推奨する。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎の治療で、必須脂肪酸添加のステロイド減量効果を評価する無作為対照試験
A Randomized Controlled Study to Evaluate the Steroid Sparing Effect of Essential Fatty Acid Supplementation in the Treatment of Canine Atopic Dermatitis
Vet Dermatol 15[3]:137-145 Jun’04 Clinical Trial 41 Refs
Bente K. Saevik, Kerstin Bergvall, Birgit R. Holm, Leena E. Saijonmaa-Koulumies, Ake Hedhammar, Stig Larsen and Flemming Kristensen

必須脂肪酸のステロイド減量効果を調査するため、アトピー性皮膚炎の犬60頭で無作為、二重盲検、プラセボ-対照多施設臨床試験を12週間行った。犬に無作為にルリヂサ油、魚油、またはプラセボの組み合わせとプレドニゾン錠を投与した。全頭標準化した基準食を与えた。10cmビジュアルアナログスケールを用いてオーナーに犬の痒みを毎日記録してもらい、指示書に従い痒みスコアーをもとにプレドニゾロンの投与量を確定した。プレドニゾロンの投与量と現在行っている治療(シャンプーおよび/または耳洗浄)を、日々を基準にしてオーナーに記録してもらった。研究者は0、42、84日目に皮膚病変にグレードをつけた。試験期間中のプレドニゾロンの使用は、投与群でより低かったが、統計学的有意差はなかった(P=0.32)。試験期間を43-84、50-84、57-84、64-84、71-84、78-84日に経時的に分割した。
64日目、投与群とプラセボ群の差は統計学的有意に達し(P=0.04)、研究終了に向け差が増していた。0-84日目までの痒みスコア、総合臨床スコアで統計学的有意な低下が両群に認められた(P<0.0001)。研究終了時、痒みスコアと総合臨床スコアは投与群でより低かった。我々の治験は、犬アトピー性皮膚炎の必須脂肪酸添加のステロイド減量効果を示す。また効果が見られるまでにタイムラグが存在する。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎に対する0.1%タクロリムス軟膏(プロトピック)の臨床効果と安全性の調査:無作為、二重盲検、プラセボ-対照、交差研究
Investigation on the clinical efficacy and safety of 0.1% tacrolimus ointment (Protopic) in canine atopic dermatitis: a randomized, double-blinded, placebo-controlled, cross-over study
Volume 15 Issue 5 Page 294 – October 2004
R. MARSELLA, C. F. NICKLIN, S. SAGLIO and J. LOPEZ

抄録
人のアトピー性皮膚炎に局所タクロリムスの使用が成功している。ローション剤含有タクロリムスを使用したアトピー性皮膚炎の犬の予備研究で、研究者により紅斑や掻痒が有意に低下したことを示していたが、オーナーは有意な改善は見られないと報告していた。
この研究の目的は、アトピー性皮膚炎の犬に市販で入手可能な0.1%タクロリムス軟膏(プロトピック)の臨床効果と安全性を評価することである。研究は二重盲検、プラセボ-対照、交差研究とした。研究犬をタクロリムスまたはプラセボ4週間投与に振り分けた。4週間後、2週間のウォッシュアウト期間を設け、投与を逆にし、12頭の犬が研究を完遂した。各治療の0週目と4週目に採血し、全血数、生化学パネル、タクロリムス濃度を測定した。
試験終了時にオーナー、研究者共にタクロリムス軟膏が症状の程度を有意に低下させたことを認めた。プラセボを投与していた同じ犬で、0週目と4週目のスコアに差はなかった。全身疾患の犬よりも局所疾患の犬の方が反応が良かった。タクロリムスは活性成分を投与されていた動物の血中に検出できた。どの犬にも中毒や副作用の濃度以下と報告された。グループまたはグループ内で全血数、生化学パネルに変化が認められなかった。結論として、アトピー性皮膚炎、特に局所疾患の犬にタクロリムスは安全な代替療法と思われる。(Sato訳)

■ガンマーリノレン酸とドコサヘキサエン酸による肥満細胞伝達物質産生と放出の変化
Alterations of mast cell mediator production and release by gamma-linolenic and docosahexaenoic acid
Veterinary Dermatology
Volume 15 Issue 5 Page 309 – October 2004
THOMAS GUECK*, ANJA SEIDEL*, DANIELA BAUMANN , ANTJE MEISTER and HERBERT FUHRMANN*

我々の研究目的は、犬アトピー性皮膚炎のモデルとして犬肥満細胞腫細胞系(C2)におけるガンマーリノレン酸(GLA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の言われているような有効性を評価することだった。細胞を基礎培地(DEH)で培養し、その培地には14.3?M GLA(DEH-GLA)または14.3?M DHA(DEH-DHA)を8日間添加した。ヒスタミン、プロスタグランジン(PG)E2放出と共に、キマーゼ、トリプターゼ活性を測定した。ヒスタミンとPGE2放出を刺激するために、スズメバチ毒ペプチドマストパラン(50?M)と共に細胞を30分間培養した。C2刺激後、GLAはトリプターゼ活性を増し、ヒスタミン放出を低下させた。活性化C2でDEHはPGE2産生を減じた。それらの結果は、犬アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるためのGLAとDHAを豊富に含む療法食を支持する。(Sato訳)

■ラム肉、牛肉、牛乳に対する犬の皮膚食物有害反応の原因となるアレルゲンの確認
Identification of allergens responsible for canine cutaneous adverse food reactions to lamb, beef and cow’s milk
Veterinary Dermatology
Volume 15 Issue 6 Page 349 – December 2004

ラム、牛肉そして牛乳は犬の皮膚食物有害反応の一般的な原因である。この研究の目的はこれらの食事に対する皮膚の有害反応の原因となる蛋白を認識することであった。ラム、牛肉そして牛乳に対する抗原特異血清免疫グロブリン(IgE)を持った10頭の犬でこの研究を行った。
これらの犬はそれと思われる病歴と除去食トライア後の暴露試験により皮膚食物有害反応と診断されていた。血清は牛の蛋白を使ったELISAと、ラム、牛肉そして牛のミルクの抽出液を使ったドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動免疫ブロット法で分析した。
全ての犬が牛のIgGに対する特異IgEを持っており、研究した血清のIgEに結合した牛乳抽出液の唯一の蛋白であった。ラムと牛肉の抽出液において、ほとんどの血清の特異的IgEによって認識された主要アレルゲンは、ホスホグルコムターゼとIgGのH鎖として認識される51-58kDaの分子量を持っていた。27、31、33、37そして42kDaの分子量を持った他のIgE結合蛋白も、いくつかの血清から検出された。
我々の結果が示すのは、牛乳でウシIgGは主要であり、従ってウシIgGは牛肉、そして羊の免疫グロブリンと高い相同性のためおそらくラムと交差反応する源であると思われる。これらの結果は人における食肉アレルギーに対し発見されたものと類似している。しかしこれはホスホグルコムターゼが、初めてラムと牛肉に対するアレルギー反応に関連する重要なアレルゲンであると確認されたものである。(Dr.Kawano訳)

■63頭の痒みを伴う犬にける市販のチキン加水分解食によるダイエットトライアル
Dietary trials with a commercial chicken hydrolysate diet in 63 pruritic dogs.
Vet Rec. 2004 Apr 24;154(17):519-22.
Loeffler A, Lloyd DH, Bond R, Kim JY, Pfeiffer DU.

63頭の痒みを伴う犬のオーナーに、非季節性の掻痒における診断調査の一部として、6週間チキンの加水分解食のみを与えるよう指導した。外部寄生虫駆除と細菌感染はダイエットトライアル中に除外した。犬の皮膚病変、胃腸症状と排便頻度が評価され、痒みのスコアはその食事を始める前そして元の食事に戻す前後に評価した。
その餌で掻痒が改善し元の食事摂取に戻した時に再発したら食物不耐性と診断した。
63頭中17頭の犬がその食事が口に合わずトライアルを中止した。しかし48頭の犬においてその嗜好性が “よい”もしくは”すぐれている” と報告がされていた。食物不耐性単独は46頭中9頭(19.6%)で診断され、他の9頭は食物不耐性とアトピーと診断された。ダイエットトライアルで解決し元の食事に戻したときに再発する食物不耐性の犬9頭中6頭で胃腸症状があった。(Dr.Kawano訳)

■ハウスダストマイト感受性犬60頭におけるハウスダストマイトの環境コントロールの臨床効果
The Clinical Effect of Environmental Control of House Dust Mites in 60 House Dust Mite-Sensitive Dogs
Vet Dermatol 15[1]:31-36 Feb’04 Prospective Study 31 Refs
Christine Swinnen and Margreet Vroom

この研究目的は、ハウスダストマイトのコントロールで殺ダニ剤安息香酸ベンジルの効果をハウスダストマイト感受性犬60頭で評価することである。ハウスダストマイト(Dermatophagoides farinae, Dermatophagoides pteronyssinus)単独、またはハウスダストマイトとストレージマイト(Acarus Biro, Tyrophagus putrescentiae, Glycophagus domesticus)に対する皮内試験で、全頭陽性反応を示した。オーナーの家のハウスダストサンプルを収集し、ハウスダストマイト産生物グアニンの量を半定量する検査(Acarexx test)を実施する著者の病院に送付してもらった。ハウスダストサンプルのハウスダストマイトグアニンが陰性になるまで、安息香酸ベンジル処置を繰り返し行った
処置後、ハウスダストマイト感受性犬60頭のうち29頭(48%)は皮膚病変や痒みが認められなかった。22頭(36%)で中程度の結果が得られ、痒みの低下、最小限の皮膚病変となったが、治療は必要であった。13頭のイヌは、抗生物質と抗酵母療法の定期的な治療(年3,4回)を必要とし、8頭は免疫療法を使用した。1頭は単独療法で必須脂肪酸によりコントロールし、1頭は、免疫療法と必須脂肪酸でコントロールした。残り9頭(15%)で、痒みは同様に残り、それらのイヌは経口コルチコステロイドでコントロールした。ハウスダストマイト感受性犬の管理にハウスダストマイト除去が有効な手段だと、それらの結果は示している。(Sato訳)

■サイクロスポリンAまたはメチルプレドニゾロン投与中止後、イヌアトピー性皮膚炎の臨床症状軽減
Remission of the clinical signs of atopic dermatitis in dogs after cessation of treatment with cyclosporin A or methylprednisolone.
Vet Rec 154[22]:681-4 2004 May 29
Steffan J, Horn J, Gruet P, Strehlau G, Fondati A, Ferrer L, Noli C

アトピー性皮膚炎の78頭のイヌを、シクロスポリンAまたはメチルプレドニゾロンで4ヶ月間治療した。治療を中止後2ヶ月間で、メチルプレドニゾロンにより治療したイヌの87%が平均期間27.9日でぶり返し、サイクロスポリンAで治療したイヌの62%が、平均期間40.7日後にぶり返した(P<0.001)。イヌの臨床状況は、ぶり返したとき、またはぶり返さなければ投与中止後2ヶ月で評価した。サイクロスポリンAで治療したものより、メチルプレドニゾロンで治療したイヌの方が皮膚病変と痒みの増加がより有意に顕著だった。研究終了時の皮膚病変は、治療前よりも顕著に程度が低くなっていた。ぶり返さなかった両群のイヌで、治療中止後2ヶ月の病変スコアーは77%改善し、ぶり返したイヌの病変スコアーは、サイクロスポリンAで治療したイヌで45%、メチルプレドニゾロンで治療したイヌで35%改善していた。ぶり返さなかったイヌで痒みはうまくコントロールを維持したが、ぶり返したイヌでは、基準レベルに増加し、または基準レベルに接近した。(Sato訳)

■アレルギー性皮膚炎のイヌの反復性引っかき行動、咬みつき行動、チューイング行動のデキストロメトルファンを使用した治療
The use of dextromethorphan to treat repetitive self-directed scratching, biting, or chewing in dogs with allergic dermatitis.
J Vet Pharmacol Ther 27[2]:99-104 2004 Apr
Dodman NH, Shuster L, Nesbitt G, Weissman A, Lo WY, Chang WW, Cottam N

目的:反復性問題行動(慢性アレルギー性皮膚炎に関する自分自身を舐める、チューイング、咬む)のイヌに対する経口デキストロメトルファンの効果を評価する

動物:慢性アレルギー性皮膚炎の14頭のイヌを研究に使用した。12頭は研究を完遂した。

方法:無作為二重盲検クロスオーバー構成研究で、各2週間デキストロメトルファン(2mg/kgBID)とプラセボを投与した。外皮の罹患エリアの評価と自分に向けられた行動の程度など皮膚スコアーを2週間の研究期間前後に付けた。オーナーには、毎日イヌとすごした時間の長さと、特定の自分に向けられた行動をとっていた時間の長さを記録してもらった。

結果:報告されたイヌの自分に向けた行動を観察された時間の比率は、2週間の薬剤投与期間中有意に短かった。皮膚スコアー中の痒みスコアーも投薬期間中有意に低かった。また、皮膚科専門医の全体評価は、投薬後12頭中11頭でより好ましいものだった。

結論:デキストロメトルファンは、アレルギー性皮膚炎のイヌが自分を舐める、チューイング、咬む行動に費やす時間の比率を有意に低下させる。

臨床関連:デキストロメトルファンは、アレルギー性皮膚炎に関与する自分に向けられた行動の管理の補助に有効で、おそらく他の反復行動も同様かもしれない。(Sato訳)

■イヌアトピー性皮膚炎に対するミソプロストール単独療法の無作為コントロール試験:皮膚細胞性と皮膚腫瘍壊死因子-アルファへの影響
A Randomized Controlled Trial of Misoprostol Monotherapy for Canine Atopic Dermatitis: Effects on Dermal Cellularity and Cutaneous Tumour Necrosis Factor-Alpha
Vet Dermatol 14[1]:37-46 Feb’03 Clinical Trial 32 Refs
Thierry Olivry *, Stanley M. Dunston, Christine Rivierre, Hilary A. Jackson, K. Marcy Murphy, Erin Peters and Gregg A. Dean

この盲検無作為プラセボ-コントロール試験で、20頭のアトピー性皮膚炎(AD)のイヌにプラセボ(8頭)、またはミソプロストール(12頭)を1日3回5μg/kg経口で3週間投与した。プラセボでなく、有効薬剤の投与で、損傷性と痒みのスコアーの有意な低下を引き起こした。両スコアーの基準値からの低下中央値は30%だった。ミソプロストール療法で、皮膚細胞数や皮膚腫瘍壊死因子(TNF)アルファmRNAコピー数の低下は引き起こさなかったが、プラセボのそれらと有意差はあった。間接免疫蛍光検査による皮膚TNFアルファタンパク産生は、ミソプロストールの投与を受けていたイヌで減少するか、または変化しないままだった。対照として治療後のTNFアルファ蛍光スコアーはプラセボの2頭以外全て、より高かった。TNFアルファ蛍光スコアーの基準からの変化は、損傷性、または痒み指標と有意に関連しなかった。それらの知見は、イヌアトピー性皮膚炎の治療でミソプロストールの適度な効果を確認し、その軽度抗アレルギー効果は、炎症性細胞の遊出、またはTNFアルファ生成物の抑制に関係しないと示唆する。(Sato訳)

■イヌアトピー性皮膚炎:University of California, Davis, 1992-1998年に検査した169症例の回顧的研究、Part2減感作の反応
Canine Atopic Dermatitis: A Retrospective Study of 169 Cases Examined at the University of California, Davis, 1992-1998. Part 2. Response to Hyposensitization
Vet Dermatol 13[2]:103-111 Apr’02 Retrospective Study 51 Refs
* Gila Zur, Stephen D. White, Peter J. Ihrke, Philip H. Kass, Nina Toebe

169頭をアトピー性皮膚炎と診断し、皮内試験(IDST)またはELISAの結果をもとに最低1年、減感作で治療した。素晴らしい(すなわち臨床症状を減感作のみでコントロール)、良い(>50%改善)、中程度(<50%改善)、無(臨床症状の変化なし)反応は、それぞれ19.5%、32.5%、20.1%、27.8%に見られた。発症年齢、治療開始時の年齢、臨床症状の持続期間は減感作の反応に影響しなかった。ノミアレルギー性皮膚炎を併発しているイヌは、食物アレルギーを併発しているイヌよりも、統計的により良く反応する傾向があった。統計的有意差はないが、ゴールデンレトリバーやオスイヌは、他の犬種やメスイヌよりも良い反応を示す傾向があった。アレルギー検査で21個以上の陽性反応を持ち、21抗原以上の治療を行ったイヌは反応スコアーが低く、有益反応に至るまでに長期間要した。より低い反応スコアーは、栽培植物、雑草、木、昆虫に陽性反応のイヌに見られた。IDSTまたはELISAをもとにした減感作の反応に違いはなかった。(Sato訳)

■犬のアトピー性皮膚炎の治療に関する、メチルプレドニゾロンとシクロスポリンAの比較:パラレル盲検無作為コントロール試験
Comparison of Cyclosporine A with Methylprednisolone for Treatment of Canine Atopic Dermatitis: A Parallel, Blinded, Randomized Controlled Trial
Vet Dermatol 14[1]:11-22 Feb’03 Clinical Trial 32 Refs
Jean Steffan *, Deborah Alexander, Fabienne Brovedani and Roland D. Fisch

この多中心性パラレル盲検無作為コントロール試験の目的は、4カ月間のアトピー性皮膚炎の治療において、メチルプレドニゾロン(MP群、59頭)と比較したシクロスポリン(CsA群、117頭)の有効性と、安全性を評価することです。両薬物の平均導入薬物量(5mg/kgCsA、0.75mg/kgMP)は、臨床反応により時間をかけて漸減しました。研究の終了時点で、犬に関する、CsAとMP群における、病変スコアの基準(信頼区間)からの平均改善パーセンテージは、それぞれ、52%(44-59)と45%(35-56)、そして掻痒スコアにおける改善は、CsA 36%(27-43)と、MP33%(23-43)でした。これらのパーセンテージにおける、グループ間での有意差はありませんでした。
有効性に関し、有意に良好な総体的評価が、CsA治療犬で達成されました(優良または良と評価されたのが、CsA群76%に対しMP群63%)。CsA治療犬は、より高い頻度で嘔吐を主体とした胃腸障害を発現しましたが、MP治療犬はより感染しやすい傾向がありました。2つの群において、血液学的、生化学的パラメーターの基準からの著しい変化はありませんでした。(Dr.K訳)

肥満細胞介在物質放出に対するビタミンEの影響
Influence of Vitamin E on Mast Cell Mediator Release
Vet Dermatol 13[6]:301-305 Dec’02 Clinical Study 23 Refs
Thomas Gueck,* Jorg Rudolph Aschenbach, Herbert Fuhrmann

イヌのアトピー性皮膚炎のモデルとして肥満細胞腫細胞系(C2)で介在物質活性と放出に対するビタミンEの影響を調査した。細胞はビタミンE(100um)を添加したものとしないものを24時間培養した。ヒスタミンとプロスタグランジンD2(PGD2)放出、キマーゼとトリプターゼ活性を測定した。PGD2、ヒスタミン放出を刺激するために、細胞をスズメバチ毒ペプチドのマストパラン(50um)と共に30-45分間培養した。無刺激性と同様マストパラン刺激性ヒスタミン、PGD2放出は、ビタミンE添加細胞で有意に減少した。キマーゼ活性は減少傾向を見せたが、C2細胞のトリプターゼ活性はビタミンEの影響を受けなかった。それらの結果はビタミンEがC2細胞の炎症介在物質の産生と放出を減少させることを示し、ビタミンEが炎症疾患に有効である可能性があるかもしれないと示唆する。(Sato訳)

■犬アトピー性皮膚炎の抗ヒスタミン剤による管理:犬171頭の回顧的研究
Antihistamines in the Management of Canine Atopic Dermatitis: A Retrospective Study of 171 Dogs (1992-1998)
Vet Ther 3[1]:88-96 Spring’02 Retrospective Study 29 Refs
Gila Zur, DVM; Peter J. lhrke, VMD, DACVD; Stephen D. White, DVM, DACVD; Philip H. Kass, DVM, PhD

1992年から1998年の間にカルフォルニア、デービス校の獣医教育病院で、アトピー性皮膚炎と診断された271頭中178頭に抗ヒスタミン剤を処方した。抗ヒスタミン剤を投与した166頭中54%は、その治療に良好な反応を示し、その反応のうち27%は良いとし、27%はまあまあだった。ジフェンヒドラミンとヒドロキシジンは一番良く使用された抗ヒスタミン剤で、より効果的だった。クロルフェニラミンとクレマスチンはあまり投与されず、陽性反応率はより低かった。グループとしての抗ヒスタミンの反応は、若い時に臨床症状が発現しているイヌの方が有意に良かった(年齢1歳増加のオッズ比0.72、95%信頼区間は0.57-0.91、P=.005)。(Sato訳)

■アトピー犬と健康犬で血清脂質の脂肪酸組成
Fatty acid composition of serum lipids in atopic and healthy dogs.
Res Vet Sci 73[2]:153-8 2002 Oct
Saevik BK, Thoresen SI, Taugbol O

犬アトピー性皮膚炎の治療に脂肪酸の使用される頻度が増えており、それらの有効性はいくつかの回顧的コントロール研究で述べられている。最近の研究結果は、アトピー犬が不飽和化酵素活性の低下による脂肪代謝障害を持っていることが示されている。それらの潜在的な異常をさらに明白にするため、我々は、アトピー性皮膚炎のイヌと正常なコントロール犬の血清脂肪酸パターンを検査した。
他の掻痒性皮膚炎を起こしえる原因を除去した後、Willemseにより提唱されている診断基準に従いアトピー性皮膚炎を診断した。血清中脂肪酸の相対、絶対量共にガスクロマトグラフィーで判定した。不飽和化酵素活性の減少を示すような血清脂肪酸パターンの相違は、アトピー犬とコントロールを比べた時に検出されなかった。(Sato訳)

■アトピー性皮膚炎の治療で、シクロスポリンの効果に対する無作為化管理試験
Randomized Controlled Trial of the Efficacy of Cyclosporine in the Treatment of Atopic Dermatitis in Dogs
J Am Vet Med Assoc 221[3]:370-377 Aug 1’02 Randomized Trial 35 Refs
Thierry Olivry, DrVet, PhD, DACVD; Jean Steffan, MS ; Roland D. Fisch, PhD; Pascal Prelaud, DrVet; Eric Guaguere, DrVet; Jacques Fontaine, DrMedVet; Didier N. Carlotti, DrVet; the European Veterinary Dermatology Cyclosporine Group

目的:アトピー性皮膚炎(AD)の犬に、シクロスポリンAを2種類の投与量で治療したとき、その効果を評価すること
構成:多施設無作為化コントロール試験

動物:アトピー性皮膚炎の犬91頭

方法:犬をプラセボ(30頭)、低用量シクロスポリン(2.5mg/kg、PO、1日1回6週間30頭)、高用量シクロスポリン(5.0mg/kg、PO、1日1回6週間31頭)群に振り分けた。

結果:6週間後、病変程度のスコアーで、基準スコアーと比較した時の平均減少比率は、プラセボで34%、低用量シクロスポリンで41%、高用量シクロスポリンで67%だった。同様に痒みスコアーの平均減少比率は、それぞれ15%、31%、45%だった。痒みと皮膚病変スコアーの減少率は、プラセボより高用量のシクロスポリンが有意に高かった。治療効果は、季節性アトピー性皮膚炎の病歴を持つ犬かどうかということに有意に関連があった。皮膚病変と痒みスコアーの減少率は、高用量シクロスポリンで治療した非季節性のアトピー性皮膚炎の犬で高かった。全群の季節性アトピー性皮膚炎の犬は、試験期間中に改善した。

結論と臨床関連:結果は、1日1回シクロスポリン5.0mg/kg経口投与が、アトピー性皮膚炎、特に非季節性疾患の犬の痒みや皮膚病変の程度を効果的に軽減すると示唆する。(Sato訳)

■アトピー性皮膚炎とマラセチア過剰増殖を伴うイヌにおけるMalassezia pachydermatisの主要アレルゲンの同定
Chen TA et al; Vet Dermatol 2002 Jun;13(3):141-50; Identification of major allergens of Malassezia pachydermatis in dogs with atopic dermatitis and Malassezia overgrowth.

私たちは以前、アトピーと健康な犬の両方はMalassezia pachydermatis 抗原に対するIgG を発生させることを示した。この研究の目的は、ウエスタンブロッティング法を用いて、22頭の臨床的に健康なイヌと、マラセチア皮膚炎を伴う28頭のアトピー犬におけるMalassezia pachydermatis の分離蛋白へのIgE 反応を比較することであった。6つの異なる発見システムが感受性の判断、非特異的吸着と交差反応の除去のために評価された。
最良の結果を生み出したプロトコールは、モノクローナルマウス抗イヌIgE 、イヌIgGカラムを3回通したアルカリフォスファターゼ活性ヤギ抗マウスIgG、化学発光基質、デジタル画像化システムの利用した。45、52、56、63kDa のタンパクはアトピー犬血清の50%以上に認められ、主要なアレルゲンに相当した。健康イヌのわずか少数に、これらのタンパクへのかすかなIgE 結合がみられた。結果はマラセチア皮膚炎を伴うアトピー犬の大多数は、健康な犬よりも大きなIgE反応を持っていることを示し、IgE関連の免疫反応がこの疾患の病因において臨床的に重要であるだろうと示唆している。(Dr.Yoshi訳)

コメント:皮膚病のセミナーで、マラセチアを管理すれば掻痒はかなり軽減できる、と聴きました。マラセチアに対するアレルギーが関係している場合、皮膚のマラセチアがごくわずかでも、治療することで掻痒の軽減が期待できるのでしょう。

■イヌアトピー性皮膚炎におけるマラセチア酵母に対する血清抗体
Nuttall TJ, Halliwell RE.; Vet Dermatol 2001 Dec;12(6):327-32; Serum antibodies to Malassezia yeasts in canine atopic dermatitis.

アトピー性皮膚炎のヒトで多くは、マラセチア特異的IgE を持つようになる。マラセチアに対する即時皮膚テスト反応はアトピー犬において実証されている。この研究の目的は、マラセチア皮膚炎、および/もしくは外耳炎それぞれの臨床的証拠を伴う、または伴わないアトピー犬、マラセチア皮膚炎、および/もしくは外耳炎の臨床的証拠を伴う非アトピー犬、そして健康な犬におけるマラセチアに対する血清IgG とIgE を比較することであった。細胞診を臨床的に意義のあるマラセチア皮膚炎と外耳炎を診断するために使用した。Contact plate培養で、この方法の有効性を確認した。イヌ血清におけるマラセチア特異性IgG とIgE の再現性のあるELISA法は確立された。アトピー犬は健康犬、もしくはマラセチア皮膚炎、および/もしくは外耳炎の臨床的証拠を伴う非アトピー犬よりも有意に高い血清IgG とIgE レベルを示した。
マラセチア皮膚炎、および/もしくは外耳炎の臨床的証拠を伴う、または伴わないアトピー犬の間では、IgG とIgE レベルにおいて有意差はなかった。その病原におけるこれらの発見の関わり合いとイヌアトピー性皮膚炎の管理を論議する。(Dr.Yoshi訳)

コメント:アトピー性皮膚炎のイヌでは、マラセチアがアレルゲンとなっていることが多いようです。マラセチア管理の重要性を改めて感じました。

■抗アレルギーペプチド(MS-antigen)による、アレルギー性皮膚炎を持つ2頭の犬の治療成功例
Park SJ; J Vet Med Sci 64[1]:63-5 2002 Jan; Successful treatment of two dogs with allergic dermatitis by anti-allergic peptides (MS-antigen).

ヒトのアレルギー患者の尿から抽出した、抗アレルギーペプチド(MS-antigen)を用い、非特異的免疫療法の効果を、アレルギー性皮膚炎(AD)を持つ2頭の犬で評価しました。臨床的に、全身的抗生物質を用いた通常の治療に反応しない、2次的な細菌性膿皮症により付随した、重度な掻痒を認めた犬に用いました。最初の臨床的変化は、両症例とも、約15回の注射期間中、3ヵ月以内に有意な掻痒減退として現れました。臨床状況は、5ヵ月後に安定化し、注射期間の延長と、併用治療の漸減ができました。治療前と治療後の皮内テストの結果と臨床徴候の改善との相関は不明です。(Dr.K訳)

コメント:MS-antigenは、日立化成(株)から市販されているヒトアレルギー治療用の注射剤で、特徴は痒みの減少であり、副作用は少ないとのことを、勉強会で聞きました。

■犬のアトピー性皮膚炎に対するジロートンの効力における二重盲検、プラシーボ対照交差予備研究
Dennis W. Crow et al; Vet Dermatol 12[4]:189-195 Aug’01 Pilot Study 41 Refs; Double-Blinded, Placebo-Controlled, Cross-Over Pilot Study on the Efficacy of Zileuton for Canine Atopic Dermatitis

犬のアトピー性皮膚炎に関する診断基準に合致した9頭の犬で、二重盲検法、プラシーボ対照交差臨床試験を行いました。この試験的な研究では、アトピー性皮膚炎の犬に対して、ジロートン(a5-リポキシゲナーゼ阻害剤)を4週間、2mg/kg TID で経口投与しました。紅斑を有意に減少させることはできましたが、痒みに対する効果はありませんでした。ジロートンは十分に耐用性を示し、副作用は記録されませんでした。しかしながら、1頭の犬において、アラニンアミノトランスアミナーゼ(ALT)の軽度上昇がありましたが、、投薬を中止することによって1週間以内で解決されました。ジロートンの投薬を受けている犬において、アラニンアミノトランスアミナーゼ(ALT)をモニタリングすることが必要かもしれません。犬のアトピー性皮膚炎に対する処置としてジロートンの効果を評価するために、さらに多くの犬について研究することが必要と判断しました。(Dr.Shingo訳)

■ハウスダストマイト(室内塵ダニ)に対する感受性とCheyletiella sp(ツメダニ)によって侵襲をうけた犬に対するミルベマイシンオキシム投与効果、臨床病理学的発見
Stephen D. White et al; Vet Dermatol 12[1]:13-18 Feb’01 Clinical Study 37 Refs; Clinicopathologic Findings, Sensitivity to House Dust Mites and Efficacy of Milbemycin Oxime Treatment of Dogs with Cheyletiella sp. Infestation

皮膚掻爬試験によってCheyletiella sp.(ツメダニ)陽性であることを確認した23頭の犬に対して、約2mg/kgのミルベマイシンオキシムを1週間に1回の間隔で、3週間経口投与しました。それらの犬のうち19頭が、41頭の同居犬の中の犬で、2頭が別のもう1頭の同居犬と暮らしていました。処置は接触のある全ての犬に行われました。処置前に皮内テストが実施され、13頭の犬で D. farinaeに対して、12頭の犬でD. pteronyssinusに対して陽性反応が見られました。処置後、13頭中4頭の犬が、12頭中7頭の犬が、それぞれ陰性になりました。全ての犬において、3回目の処置後1週間で臨床徴候は劇的に改善を示しました。18頭の犬では、皮膚掻爬試験おいてすでにダニは見つからず、3頭で死滅したダニ、 2頭で変形した卵が見つかりました。多くの同居犬と 、落葉状天疱瘡に対して免疫抑制剤の処置を受けた犬に見られた臨床症状の再発については、2回の一連の追加治療プロトコールが必要となりました。ミルベマイシン投薬によるものと思われる副作用(嘔吐、無関心)は、2頭の犬で1度だけありました。(Dr.Shingo訳)

■ギリシャにおける犬のアトピー性皮膚炎:91頭の自然発生例における皮内反応陽性罹患率と臨床所見
Saridomichelakis MN et al; Vet Immunol Immunopathol 69[1]:61-73 1999 Jul 1; Canine atopic dermatitis in Greece: clinical observations and the prevalence of positive intradermal test reactions in 91 spontaneous cases.

臨床徴候の季節性と、空気アレルゲンの暴露に関連を持ち、1つ以上の皮内反応陽性を示し、臨床徴候と互換性のある病歴根拠に基づき、91頭の犬を、アトピー性皮膚炎と診断しました。一般な来院集団と比較すると、ヨークシャー・テリア、チャイニーズ・シャーペイ、そしてコッカー・スパニエルが多いと思われました。このような好発性は、性別にはありませんでした。犬の臨床徴候初発年齢は、2ヵ月齢から8才(中央値:2.5才)の範囲でした。中程度から重度の掻痒は、91頭の犬全てに認められ、局所的(29/91)または全身的(64/91)、そして非季節性(43/91)、季節性(19/91)、または季節性の不明なもの(29/91)がありました。最も一般的な皮膚病変には、紅斑、色素沈着、乏毛症、そして痂皮で、病変分布は、全身性(64%)、局所性(36%)で、殆どが、足に影響が出ておりました。皮膚に傷害がない5頭の犬は、今回の研究犬の中で、有意に若齢で、より短期間で掻痒がありました。外耳炎(43/91)と細菌性膿皮症(30/91)が、最も一般的に、アトピー性皮膚炎と関連した症状で、マラセチア性皮膚炎の罹患率は、とても低いものでした(2/91)。他のアレルギー性皮膚疾患に関して、ノミアレルギー性皮膚炎(29/91)が、食物過敏症(検査した15頭中の2頭)に次いで、最も一般的に見られました。大多数の犬で、50種の空気アレルゲンテストに複数の感受性が証明され、ハウスダストマイト(77/91)、特にDermatophagoides farinae(64/91)が、最も一般的に関わり合いを持っておりました。皮内反応陽性の総数は、犬の年齢と共に増加していましたが、手根、足根関節部の皮膚病変の出現は、逆に低下していました。(Dr.K訳)

■アトピー犬におけるマラセチア性爪囲炎
Griffin, C.E.; J Vet Allergy Clin Immunol 5[2]:78-79 Summer’97 Clinical Study 4 Refs; Malassezia Paronychia in Atopic Dogs

マラセチア性爪囲炎は、足または指の掻痒の原因として、最近、報告されました。マラセチアは、正常な犬の皮膚に常在しますが、正常な皮膚から直接塗抹で検出するのは困難です。ある研究では、殆どの皮膚で、スライドガラスの1cm四方ごとに、1または2つ以下しか酵母菌が、検出されないことを明らかにしております。皮膚疾患を持つ犬の別の研究では、高倍率視野に1つ以下は、マラセチアが無いとしております。正常と異常な爪ひだの細胞学と、マラセチアの数に関する報告はありません。この研究は、正常な犬、皮膚疾患を持つ犬、および赤茶けた爪、および/または爪囲炎を持つアトピー犬における、爪ひだのマラセチア普及率を明らかにしました。

材料と方法:3つのグループを評価しました。グループ1は、5頭の正常犬、または皮膚病歴と身体検査で正常とされた、外科処置に来院した犬から成ります。グループ2は、しばしば、足の掻痒を伴う皮膚疾患を持つものの、グループ3に見られるような変化を持たない12頭の犬から成ります。症例11と12は、正常な爪ひだから1回と、異常な爪ひだから1回の、合計2回の採材をしました。正常と思われる爪ひだから、9サンプル、異常な爪ひだからが、5サンプルの合計14サンプルを採材しました。グループ3は、10頭のアトピー犬から成ります。標本は、壊れた綿棒の鋭利な縁で、やさしく爪ひだをスクレイピングすることにより、回収されたワックス状、または残骸でした。回収した材料は、スライドガラスに圧迫、回転で塗抹し、加熱固定の後、ルーチンにディフクイックで染色しました。視野は、最初に100倍で選択し、重要な、ケラチン生成細胞のある領域を見付けました。1,000倍にまで切り替え、10油浸視野(OIF)を、中央に1つ以上のケラチン生成細胞が存在する視野を連続して選択し、1視野あたりの酵母菌数をカウントしました。視野あたりの平均を、それぞれの標本で調査しました。
結果:グループ1は、油浸視野あたり、平均0.08のマラセチアでした。グループ2の総合平均は、視野あたり0.44のマラセチア検出でした。グループ3の視野あたりのマラセチア検出は7.91でした。グループ2と3における症例を、表1にまとめました。
結論:マラセチアは、爪囲炎と赤茶けた爪、または爪ひだにおけるワックス状の累積物を持つアトピー犬と、関連があります。治療に良く反応しない、いくつかのアトピー犬の症例では、マラセチア性爪囲炎が、持続性の足の掻痒を導いているかもしれず、アトピーに対する治療が無効、または部分的な効果しかないと、誤解を持たせるかも知れません。罹患した爪ひだにおける酵母菌の検出数は、たいてい2/OIFを超えるでしょう。(Dr.K訳)

■ミソプロストール
Albert Boeckh, DVM; Compend Contin Educ Pract Vet 21[1]:66-67 Jan’99 Pharm Profile 8 Refs; Misoprostol
– EDITOR’S NOTE: ‘Pharm Profile’ introduces drugs that are new to the veterinary market as well as new indications for existing drugs.

ミソプロストールは、人医で成功を収めてきている合成プロスタグランジンE1(PGE1)類似化合物で、犬において特に、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の使用に伴う胃潰瘍を防止します。ミソプロストールは動物薬の商標ではなく、全獣医学適応症の使用範囲外となります。一般では妊娠中後期における中絶のために、プロスタグランジンF2α(PGF2α)と合同で、膣内投与を含む使用例が報告されております。
そのため、人工中絶薬としての使用以外は、妊娠動物に対して使用禁忌です。ミソプロストールは、プロスタグランジンまたは、その類似化合物に対してアレルギーを持つ動物にも使用禁忌です。聞くところによると、犬のアトピー性皮膚炎に効果的であり、他の合併症を伴わない非季節性慢性アトピー性皮膚炎の患者における、ひどい皮膚病変とかゆみを減少させる効果があるとされます。
獣医医療でミソプロストールの、よく起こる副作用は下痢です。他の胃腸への影響として、腹部疼痛と吐き気があります。ミソプロストールの副作用は一般的に一過性であり、獣医師は薬を継続投与中止するかどうか、それぞれの患者で、個々に評価するべきです。

食事と共にミソプロストールを投与すると、割合は減少しますが、ある程度吸収されます。ミソプロストールはアスピリンを含めて、一般的に小動物で使用されるNSAIDsと、臨床上いかなる重要な相互作用も示しません。犬におけるミソプロストールは、1回1~5μg/kgを6~8時間毎に投与です。ミソプロストールは、NSAIDsの使用により、機能しなくなった胃保護機構を修復します。ミソプロストール(サイトテック、サール)は、100と200μgの錠剤で売られております。ミソプロストールは、酸素や水の存在下で安定でありませんので、水溶液などに調合するべきではありません。(Dr.K訳)

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